あるいは 迷った 困った

漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

『魔女に捧げるトリック』マジックで魔法を演出する異世界転生の感想(ネタバレ注意)

 

子供の頃マジックが好きでした。目の前にある不思議な現象にワクワクしたもので、マジックを見た時の感想を一言でいえば「まるで魔法のようだ」というものに集約されるのではないかと思います。

そんな魔法のようなマジックを、多くの場合は魔法が存在する世界へ異世界転生・転移する類の物語に、魔法の代わりに導入する発想はとても面白いと思います。

そして、そんな発想が根幹にはあるのが魔女に捧げるトリックという漫画です。

改めて言いますが、僕は子供の頃マジックが好きでした。しかし、まるで魔法のような現象の裏側に必ずトリックがあることも当然の常識のように知っていました。何ならトリックは知っているマジックすら、それを演じるマジシャンの技量にほれぼれするといった楽しみ方をするまであります。(笑)

つまり、まるで魔法のようだと感じつつもそれが魔法でないことを僕たち現代人は知っています。

そもそもマジシャンがマジックを演じる時、演出の都合で魔法使いや超能力者を演じることはあっても、それはあくまでもマジックショーという中でのこと。だから僕たちは魔法使いのようだけどこの人は人間だと安心してマジシャンを見ることができます。

しかし、こうしたマジシャンが演出ではなく本当に自分は魔法使いや超能力者など名乗ったら?

そしてもし自分がマジックというものを知らなかったら?

僕たちはマジシャンのことを本当に魔法使いや超能力者だと思ってしまうかもしれません。

とはいえ、トリックがある以上は魔法のようにいかない部分も絶対にあるはずです。

トリックのあるマジックで中世時代のような異世界を主人公がどう乗り切っていくのか。そんなところが楽しみな漫画です。

?

ところで異世界転生・転移ものの作品には多くの場合、いわゆる昔ながらのファンタジー的な魔法の存在する世界が登場します。

火を熾せたり、怪我や病気を回復させてしまったり、空を飛べるなんてのもありますよね。

しかし、実際の歴史上に存在する魔法はそのようなものではありません。キセキを演出するトリックだったり、人々の不満を解消するためにでっち上げられた魔女だったり、そのようなものです。

後者は中世の時代に行われたいわゆる魔女裁判の犠牲者たちを指すわけですが、魔女に捧げるトリックでいう魔女とはこの魔女裁判の犠牲者たちのことを指すようです。

魔女裁判の時代(本来の歴史上のタイプスリップなのかは不明ですが)に転移した主人公の針井マキトは子供の頃から天才マジック少年と言われたマジシャンで、脱出マジックの失敗をキッカケに転移することになったようですが、彼が魔女裁判の被害者である魔女たちに、教会と戦うためのトリックを捧げるというのが物語の骨子のようです。

魔女に捧げるトリックの面白いところは、天才マジック少年という役どころを主人公に据えているものの、だからといって何でもマジックであることを理由にチートな活躍ができるようにはしていないところなのではないかと思います。

こうしたフィクション作品に登場するマジシャンの中には、例えそれが現実世界を舞台にした作品であったとしても、不思議な現象を起こすことに対して何の説明も無く単に「マジックだから」と片付けてしまっていることが少なくありません。創意工夫を凝らしたトリックのあるマジックには無限の可能性があるのであろうことは分かりますが、だからといって全てを「マジックだから」と一括りにしてしまうのは些か言い訳じみていると感じなくもありませんよね。

しかし、魔女に捧げるトリックにおいて針井マキトが実演するマジックについては基本的にトリックが明示されているようです。不思議な現象を起こすためには相応の下準備が必要で、だからこそピンチな状況であっても「天才的なマジックで一気に解決!」みたいにチートな展開にはなりません。

僕はマジックに詳しくないので、提示されているトリックがツッコミどころのあるものなのか否かは分かりませんが、例えツッコミどころのあるものだったとしてもマジックに対してマジックであることの説明を付けようとしている所に好感が持てますね。

そういえば、タイトルも魔女に捧げるトリックであって『魔女に捧げるマジック』ではありません。そういう所からも、本作品が何でも「マジックだから」で言い訳のように不思議な現象を説明する作品ではなく、トリックありきで主人公や魔女たちを活躍させようとしている作品であることが窺えます。

僕自身、どちらかと言えばフィクション作品の不思議な現象に対して、どんなに破綻していても良いから何かしらの説明が欲しいと思うタイプなので、こういう作品は本当に面白いと感じます。