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『ヒカルの碁』の最強棋士・佐為に勝ったヤツがいるらしい

 

週刊少年ジャンプ系の作品。とりわけバトル系の作品には必ずと言って良いほど師匠ポジのキャラクターが登場しますよね。

代表的な所だと『ドラゴンボール』の亀仙人や『幽遊白書』の幻海。最近再アニメ化された『ダイの大冒険』のアバンや、映画化や続編の連載などで勢いが残っている『るろうに剣心』の比古清十郎。エトセトラエトセトラ・・

師匠ポジのキャラクターに限らず、目指すべき、あるいは超えるべき存在がいるということは物語に深みを与える役割があるのかもしれませんね。

そして、バトル漫画でこそありませんが同じく週刊少年ジャンプの連載作品である『ヒカルの碁』にも師匠ポジのキャラクターとして藤原佐為が登場します。

本記事では、絶対無敵の無敗の棋士として描かれた藤原佐為について、その魅力や主人公の片割れでありながら途中で消えた理由。そして実は最強棋士である佐為に勝ったことがあるヤツもいるのだということに触れていきたいと思います。

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藤原佐為とは?

ヒカルの碁』の主人公・進藤ヒカルの師匠ポジのキャラクターで、平安時代天皇囲碁指南役をしていた棋士の幽霊である。

実在の江戸時代の天才棋士本因坊秀策に取り付いていたこともあり、『ヒカルの碁』においては本因坊秀策の打った碁は佐為によるものということになっています。

そして本因坊秀策といえば当時の公式戦である御城碁における19戦無敗のエピソードが有名で、その影響もあるのか佐為は作中で絶対無敵・無敗の棋士として描かれています。

烏帽子を被ったイメージ通りの平安貴族といった風貌で、囲碁の対局シーンでは真剣でキリっとした格好良い表情を見せますが、直接コミュニケーションを取れるのが子供であるヒカルだけだからか、子供っぽい可愛らしい姿を見せることも多かったりします。いや、佐為の年齢は不詳なので実は本当にかなり若いのかもしれませんが。(笑)

それに容姿端麗なので女性と勘違いしている原作の読者がアニメを見て「えっ、佐為って男だったの!?」と驚くケースも多かったとか。(笑)

また、ヒカルにしか認識できない存在でありながら、謎の最強の打ち手がいると世界中に存在を認識させたという意味で興味深いキャラクターでもあります。『ヒカルの碁』の連載当時はインターネットが黎明期を終え、世間一般に普及し始めたような時代だったかと思いますが、そんな中でネット対局という形で存在を知らしめたのは新しかったのではないかと思います。

佐為は何故消えたのか?

さて、ほとんどダブル主人公の片割れくらいの扱いだった佐為というキャラクターですが、しかし物語の半ばで完全に成仏して退場してしまいます。

明らかな人気キャラクターだっただけに、あまりにも意外な展開というか、どうしてそんな展開にしてしまったんだという疑問があります。

これにはメタ的な視点と物語的な視点の両方から理由付けができると思います。これらが絶対に正解なのかは分かりませんが、いくつか佐為が消えた理由を考察してみましょう。

物語が延長されることになったから

かなりメタい理由ですが、もともとは佐為が消えてからそこまで長く物語を継続させる想定は無かったのではないかと推測されます。実際、北斗杯編以降は第二部として少しに休みを挟んでから連載を再開されていました。

第一部までであれば、佐為が消えて、ヒカルがその失意から立ち直り、ライバルであるアキラと本当の初対局を迎えるところまでで完結しています。つまり、佐為が消えてからもそこそこ長く続いているものの、物語としてはかなり綺麗なエンディングを迎えているのです。

しかし、人気があったらから第二部が継続したものの、さすがに成仏した佐為を復活させるわけにはいかないですよね?

そして恐らくですが、この辺りが佐為が消えた理由の本命なのではないかと思われます・・が、メタ的な視点だろうが物語的な視点だろうがもう少しちゃんとした理由付けをしてみたい所です。

佐為が現世に留まる理由がヒカルに引き継がれたから

物語の途中で佐為が消えたのは第一部で完結する想定だったからという予想ですが、しかしそれでも佐為が消えた物語的な理由付けにはなっていません。

本因坊秀策に憑いて、そして本因坊秀策が亡くなった後も長い間ヒカルのじいちゃんの碁盤に憑いていたにも関わらず、僅か数年のヒカルとの日々を経ただけで成仏した理由。

佐為自身は、塔矢行洋との対局をヒカルに見せるために神は自分に千年の時を与えたのだと納得していましたが、恐らくそれは微妙にズレた正解だったのではないかと僕は推測します。

話が少し逸れますが、そもそも幽霊が現世に留まる理由といえばこの世への未練のはずです。

そして、佐為の未練とは当初より語られていた通り「神の一手をまだ極めていない」という一点に尽きるのではないかと思います。いや、「もっと碁が打ちたい」とかそういう未練もあったとは思いますが。(笑)

そして、恐らく佐為が本因坊秀策に憑いた時は一心不乱にその未練を果たそうとしていたのではないでしょうか?

だからこそ本因坊秀策が亡くなった後にも、その未練は果たされていないから現世まで再び永らえたのだと思います。

しかし、現世でヒカルに憑いた佐為は自分自身が囲碁を打つことは少なくなり、前述した通りヒカルの師匠のポジションに付きます。

囲碁への未練はあり、自由に囲碁を打てるヒカルを羨ましく感じつつも、ヒカルの成長のために動いています。

そして、「神の一手」なんていう遠い未来に行き着くかどうかも分からないようなものなんて、師匠から弟子へ、そしてまたその弟子へと、長く長く引き継がれていった経験があって初めて到達できるかもしれないもののはずです。

ひょっとしたら佐為は、ヒカルの師匠として振舞う内に無意識の内に「神の一手を極める」という悲願を無意識の内にヒカルに託す気になっていて、それを塔矢行洋との対局で無意識に自覚したのではないでしょうか?

つまり、佐為が消えたのは神の意志などではなく、佐為自身が無意識の内に自身の役割をヒカルに引き継ごうとしていたからなのではないかと思うわけです。

終盤の、未来のあるヒカルへの嫉妬心が抑えられない佐為を見ているととても自分の意思で成仏しそうな感じではありませんが、先達が自分よりも先の長い若者を羨ましく思うのはある意味当然のことで、そのこと自体は成仏しない理由にはならなかったのかもしれませんね。

佐為は絶対無敵・無敗の棋士だから消えた

こちらもメタい理由ですが、佐為は絶対無敵・無敗の棋士だから消えたのではないかという推測です。

前提として、佐為は絶対無敵・無敗といっても佐為の棋力は一体どの程度なのかについて考察しておく必要があります。それは、作中でも語られている通り本因坊秀策が現代の定石を覚えたくらいの強さなのだと思いますが、それは恐らく現代のトップ棋士に通用こそすれさすがに絶対無敵・無敗とはいかないのではないかと思います。

つまり、ヒカルのいるステージがプロの世界に上がったことで、相対する相手も佐為ですら絶対に勝てるとは限らない相手になってきたわけですね。

なんなら、何度も練習対極をしているであろうヒカルが相手でも描かれていないだけで必勝とまではいかなくなっている可能性すらあったと思われます。ヒカルも中学生でプロ棋士になるくらいの才能がある棋士なわけで、それくらいのレベルの棋士であればトップ棋士に一発入れてもそこまで不思議なことはありませんしね。

とはいえ、佐為はそのキャラクター性からして絶対無敵・無敗の棋士という立ち位置なわけで、負けてもおかしくないくらい周囲のレベルが上がった段階でいつまでも登場させるわけにはいかなくなったというのも考えられない話ではありません。

しかし、実はそんな佐為に本編で勝ったことのある棋士が、それぞれ何かしらの特別な事情があったとはいえ3名だけいたりします。

佐為に勝ったヤツって誰?

平安の都の囲碁指南役

一人は佐為が入水自殺する原因を作った平安の都の囲碁指南役ですね。アゲハマを誤魔化すというズルを巡るいざこざに動揺して佐為は敗れてしまうのですが、ズルしたアゲハマは1目だけのようですし、負けたということは本来の対局結果も少なくとも持碁か負けていたということになります。

佐為が動揺していたとはいえ、持碁以上の結果を得るとはこの平安の都の囲碁指南役は相当な実力者だったに違いありません。

ズルなんてしなきゃ凄いヤツだっただろうに、それだけちょっとした勝敗が人生を分けかねない時代だったのかもしれませんね。

加賀鉄男

将棋部の加賀も実は佐為に勝ったことのある数少ない一人です。

と言っても、完全な勝利というよりはヒカルが一手だけ間違えて佐為の指示通りの手を打てなかったからなのですが、そんなミスがあったとはいえ佐為ほどの実力者の猛追から最後まで逃げ切った加賀の実力は相当なものなのではないかと思われます。

ちなみに、たった一手のミスで結構な実力者とはいえ一般の中学生でしかない加賀に負けてしまう佐為の実力を囲碁を知らない読者がどう感じたのかが気になる所です。

ちなみに、連載当時囲碁のことをあまり知らなかった僕は、「えっ、たった一手だけで負けるとか弱くね?」って感じました。

まあ、一手といってもその価値は様々なので一概には言えませんが、加賀と佐為の対局でのミスはかなり大きいものの、まだ逆転の余地がありそうなタイミングでした。実際は、佐為は半目差まで迫っていますし、それだけに加賀の勝利は貴重なものだったのではないかと思います。

塔矢行洋

最後は佐為に勝ったと聞いて最も違和感のない塔矢行洋ですね。

こちらはヒカルの新初段戦で、佐為が我儘で15目のハンデがあるつもりで打った一局です。もともとパワーで相手の石を取って勝つような棋風の打ち手であれば、15目のハンデがあるつもりでもそこまで普段と違った打ち方にはならないかもしれませんが、佐為は明らかにそういう棋風ではないので15目差のハンデがあるつもりで塔矢行洋と打つのはかなりの負担だったのではないかと思われます。

これが、佐為がズルもミスも無く負けた唯一の対局となります。ズルもミスも無い代わりに自らにハンデをも課していましたが、ルール上はハンデどころか自分の方が有利(逆コミ)なハンデがある状況。かつ佐為自身が納得して臨んだ対局なのでこの敗北には文句の付けようがありません。

それだけに、塔矢行洋が佐為が最後にヒカルに見せた対局の相手として相応しいことが強調されたような気もします。