『ダイの大冒険(15)』原作ゲームにまで影響を及ぼす名作の感想(ネタバレ注意)
バトル成分少な目な15巻です。(前巻のレビューはこちら )
14巻では大魔王バーンの圧倒的な力量を見せつけられるバトル盛り沢山な内容でしたが、15巻は大きなバトルを終えて閑話休題というか、次に向けての決意が描かれるような内容になっています。
最も勇敢な者が勇者なのだと思いますが、そんな勇者であるはずのダイが珍しく戦いから逃げ出してしまいたいと思っているような様子が描かれています。
最初敵対していたのに分かり合えそうになった父親バランを亡くし、その亡骸は大魔王バーンに燃やされ、その大魔王バーンにはダイの力が通用しない。
そんな大敗北に、さすがの勇者も心を折られかけてしまいます。
そんなところから立ち直るダイに、自分だけ特別ではないことに悩むポップ、5人目のアバンの使途として破邪の洞窟に挑むレオナ。
いよいよ終盤の始まりであることを意識させられる内容になってきています。
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本作の概要
聖母竜に死んだと告げられたダイは、しかしバランの進言もあって一命をとりとめました。
しかし、傷心のダイはさすがに心を折られかけ、珍しく戦いから逃げ出そうとしてしまいます。
心機一転した次の戦いへ向けての閑話休題的な物語展開になっていますが、一方で五人目のアバンの使途となるべく試練に挑むレオナの姿も描かれています。
本作の見所
逃げ出すダイ
勇者とは、どんな恐れにも立ち向かう勇敢な者を指す言葉だと思います。
しかし、次の16巻のネタバレになってしまいますが、勇気の魂の力を持つのはダイではなくポップだったりします。
確かに、ダイは今までも勇敢に敵に立ち向かったり、他の者を奮い立たせる言動を見せてきました。
しかし、一方で怖いと逃げ出すような素振りを見せることはほとんど無かったと思います。
恐れのない言動が果たして勇敢だと言えるのか?
そう考えると、確かにダイではなくポップこそが勇気の魂の力を持っているというのは納得の結果だと思います。
そして、ダイにあるのは勇気ではなく、これもネタバレになりますが純粋の魂の力だったりします。
純粋だからこそ、誰かを助けたいという気持ちや怒りという感情に素直に従い、それが誰よりも勇敢に敵に立ち向かう姿に繋がっていたのだと思われます。
純粋な勇気は、何らかの意図の含まれる勇気よりずっと強いということなのだと、だからこそダイは主人公で勇者なのかもしれませんね。
しかし、純粋であるが故にその方向性がズレた時というのがダイの弱点なのかもしれません。
作中でそういうダイが描かれることはありませんでしたが、例えば純粋に悪の方向へ向かうような可能性も秘めているわけですからね。
そして、前置きが長くなりましたが、この15巻では初めて戦いへの重圧と恐怖を感じて逃げ出してしまうダイが描かれています。
「・・ど・・どうしてみんなおれに無理なことをさせようとするんだ・・!!? 父さんも・・レオナたちも・・!!! もうおれの力なんかじゃどうしようもないのにっ・・!! ・・おれはみんなが思っているほど強くも偉くもないんだっ・・!!!」
味方の中では最も強いからこそ挫折を知らないダイは、しかし大魔王バーンの力に触れて心が折られてしまいました。
ポップの場合、こうやって逃げ出すようなことがあった昔でも、最後には自分の意思で戦いの場に戻ってくる勇気がありました。
しかし、ダイの場合は純粋に恐怖の感情に従っていて、戦いの場に戻る葛藤すらほとんどありません。
それもダイの魂の力が勇気ではなく純粋であることを示していますね。
「・・だがな! おれはおまえがいなくてももう一度・・大魔王と戦うぜっ・・!!」
目の前で父親であるバランを燃やされ、その姿に未来の自分を重ねていたダイに向けたポップの言葉。ダイはバランの死で心を折られたが、自分はダイが不在でも心が折られることは無いという宣言に聞こえます。
ポップは真っ先に逃げ出したダイを見つけ、しかし他の味方と違ってダイに戦いを強要するような発言を実はしていません。
それはある意味では勇者ダイの力と心を盲信してしまっている他の味方キャラとは違って、ただただ自分自身の決意をダイに語って見せただけです。
そして、その勇気がダイに伝わったのか、ダイは再び戦う勇気を取り戻します。
勇者に勇気を与えたポップは、ある意味では本当の勇者なのかもしれませんね。
5人目のアバンの使途
「・・あとひとり・・ミナカトールを使える五人目のアバンの使途が必要なのです・・!!!」
大魔宮に乗り込むために必要なミナカトールを使うためには、五人のアバンの使途が必要らしいですが・・
ダイ、ポップ、マァム、ヒュンケル。
アバンの使途は四人しかいません。
・・足りないじゃん!
と、思うかもしれませんが、フローラはちゃんと五人目にあたりを付けていました。
まあ、その人選に意外な部分は実のところなく、パプニカの王女レオナが選ばれました。アバンの使途でこそありませんでしたが、アバンの使途たちと一緒に戦ってきた仲間というイメージが強いキャラクターで、何より一応は本作品のメインヒロインですからね。
そして、そんなレオナがミナカトールを身に付けるために破邪の洞窟に挑む。女性4人だけの冒険という『ダイの大冒険』においては珍しいエピソードも15巻の見所のひとつになっています。
ポップの悩み
レオナがミナカトールを発動するためには、5人のアバンの使途がそれぞれの魂の力をもってアバンのしるしを光らせる必要があるようです。
それをふとした拍子に盗み聞きしたポップは自分のアバンのしるしを光らせようとしますが、それがなかなか光らせることができません。
「・・おれだけがっ・・。・・おれだけがみんなと違うっ・・!!」
ダイは竜の騎士。
マァムはアバンの戦友の娘。
ヒュンケルは幼い頃からアバンの訓練を受けており、レオナは王女様。
しかし、ポップは武器屋の息子でしかなく、他の4人に比べて特別な何かがあるかといえば確かにそんなことはありません。
・・なんてことを改めて意識させられると、そりゃあへこみますよね。
それでアバンのしるしがちゃんと光るのなら良いですが、自分だけ光らないとなれば、たとえそれが必ずしも必要なことでなかったとしても自分の存在価値に悩みそうなものです。
しかも、それは今回の場合絶対に必要なことなのですから尚更ですね。
結局、アバンのしるしは光らせることはできないままにヒュンケルとクロコダインの救出作戦が始まってしまうのですが、さてポップはぶっつけ本番でアバンのしるしを光らせミナカトールを発動させることはできるのか。それが今後の気になる部分ですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
さて、自力でピンチを切り抜けたヒュンケルの元に、ついにダイが登場したところで15巻は終わりです。
15巻は少々バトル成分少な目だったので、この後また迫力ある戦闘シーンに突入しそうで本当に楽しみですね。(次巻のレビューはこちら)