『FIRE RABBIT!!(1)』プロゲーマー志望の少年が消防士になる漫画の感想(ネタバレ注意)
2018年末に始まったひらかわあや先生の新作漫画。
『FIRE RABBIT!!』の1巻がついに発売しました!
第1話が掲載された時にはテンションが上がって、初めて漫画の連載1話分だけのレビュー記事を書いたりしてしまいました。(笑)
『天使とアクト』の大団円からもう随分と経ったような気がしますが、まさかひらかわあや先生の新作が消防士ものだとは思いませんでしたね。
『國崎出雲の事情』も『天使とアクト』も芸能系の世界を描いた作品だったので、そういう意味では新境地といったところでしょうか?
歌舞伎や声優といった芸能の世界はまだ距離が近いですが、消防士の世界なんてかなり離れたところです。
それに、そんな世界に飛び込んでいくのがプロゲーマーを目指していた主人公だというのが独特ですよね。
1巻の内容はまだまだプロローグといった感じですが、ひらかわあや先生のこれまでの漫画の面白さから察する限り、かなり今後が楽しみな漫画のひとつであることは間違いないと思います。
ちなみに、ひらかわあや先生のこれまでの漫画がどんなものなのかは、以下の『天使とアクト』の最終巻のレビュー記事を読んでみてください。
?
本作の概要
成績優秀な優等生だがプロゲーマーを目指している主人公の兎高まひろは、ゲームの全国大会の前日に泊まったボロいホテルで火事の被害に遭います。
そこで、七雲市兎原署の第1小隊。通称ファイヤーラビットの消防士である天道樹に助けられることになるのですが・・
天道樹はまさかの殉職。
その後、兎高まひろはゲームの全国大会に優勝してプロゲーマーになったものの、自分を助けて殉職した天道樹。消防士という職業が気になってしまっています。
そして、そんな兎高まひろの目前に現れたのは・・
まさかの天道樹の幽霊でした。
本作の見所
ファイヤーラビットの消防士たち
連載で読んだ時にも思いましたが、第1話からそうそう個性的な消防士たちが登場するスピーディーな展開から始まります。
それぞれのキャラクターが登場人物紹介的な感じで次々と決め台詞を放っていく展開は、どこか演劇じみても見えますが僕は嫌いではありません。
たった一言ずつで、どんな性格のキャラクターなのかが現れているのが面白いですね。
「どんな障害もブチ壊す!! それで突き進むのが、消防士だ!!」
機材の扱いに長けた消防士である金森郁。
熱血漢な性格がよく分かりますね。
「どんな炎が相手でも冷静に・・。それが、消防士だ!」
放水担当でファイヤーラビットの紅一点である水島暁。
言葉通り冷静な性格が伝わっていきます。
「全部救うぞ! それが、しょーぼーしだ!!」
主人公の1人である天道樹。
シンプルなある意味綺麗ごとなセリフから子供っぽい性格が感じられます。
「しょーぼーし」ってひらがなで表現されているところにもキャラクター性が現れていますね。
「小隊長の命令は絶対・・。それが、消防士だ!」
ファイヤーラビットの小隊長である月ヶ瀬涼。
厳格で融通が利かなそうなリーダー気質っぽいですね。
「信じて待つのも、消防士よ」
おかま担当・・じゃなかった機関員の木咲シナ。
キャラデザも中性的な感じなので最初女性なのかと勘違いしていましたが、どうやら男性みたいですね。
ちなみに、機関員というのは運転など、消防車の操作を担当する消防士のことらしいです。
立て続けにこれだけのキャラクターを登場させているのに、ちゃんとどんなキャラクターなのかが分かるようになっている所に、ひらかわあや先生の表現力の高さが現れていますね。
プロゲーマーを目指す少年
プロゲーマーを目指す優等生の兎高まひろ。
何というか現代的な夢を持った主人公だと感じたのが第一印象でしたが、『FIRE RABBIT!!』は兎高まひろがプロゲーマーとして活躍するという漫画ではないようです。
プロゲーマーの漫画だったとしても面白そうですけどね。
何で兎高まひろは目指していたプロゲーマーにならなかったのか?
それは兎高まひろと、ファイヤーラビットの天道樹との出会いが関係しています。
兎高まひろがゲームの全国大会に泊まっていたボロいホテルが火事になり、取り残された兎高まひろを助けたのが、たまたま居合わせた天道樹でした。
しかし、兎高まひろを助けることはできたものの自分自身を助けることはできなかった天道樹。
「見ず知らずの僕を助けて、あの火の中でもヘラヘラ笑って、何なの・・? 消防士って・・」
天道樹の殉職のニュースを見た兎高まひろは、消防士という職業に興味を持ち始めます。
その後、ゲームの全国大会には普通に優勝するもののどこか上の空な様子。
「消防士とは・・国や組織のために動くのではなく、一番身近にいる人を救うために、常に危険な現場に立ち続ける人達である」
消防士という職業に対する理解。
そこへの興味が上の空にさせていたようですね。
兎高まひろと天道樹
兎高まひろと天道樹のダブル主人公っぽい感じで始まったのに、その片方がいきなり死んでしまった!?
・・って、連載時にもそんな風に驚いたものです。
だったら天道樹が兎高まひろにとっての憧れというか、目標のような存在になるのかと思っていたら・・
「よかったー元気そうで!」
まさか、天道樹が幽霊になって現れるとは思いませんでしたね。(笑)
天道樹が兎高まひろにとっての憧れや目標になるってのは必ずしも的を外していないのではないかと思うのですが、まさか幽霊として登場するとは思いませんでした。
幽霊のキャラクターって、うまく使えば作品を面白くするけど、下手すれば陳腐な印象になってしまったり、幽霊である必要性が実はあまり無かったりと、扱いが難しそうなイメージがあるのですが、『FIRE RABBIT!!』でどんな感じになっていくのかは楽しみなところですよね。
師匠というか、目指すべき存在のダブル主人公で片方が幽霊の作品といえば、個人的には『ヒカルの碁』が真っ先に思い浮かぶところです。
『ヒカルの碁』の佐為は幽霊キャラとしては正直レジェンドだと思いますが、天道樹はどうなっていくでしょうか?
消防士になる兎高まひろ
消防士に興味を持っていたとはいえ、恐らく積極的に消防士になろうとはしていなかった兎高まひろ。
「しょーぼーしになりたいな? オレに憧れて!!」
天道樹にそう言われても最初は否定していましたしね。
単純に消防士という人種について知りたいと思っているだけなのだとも。
しかし、天道樹のような強さを欲しいと思った兎高まひろは半年後・・
ちゃっかり消防学校を卒業して消防士になっていました。
もともとプロゲーマーを目指していた兎高まひろが、そのプロゲーマーとして必要な能力を消防士として活用するような個性を発揮していくんだろうなぁという展開が予想されますが、その辺どうなっていくのかが当面の楽しみのひとつですね。
それに、今のところ天道樹が幽霊として登場している必然性が薄いので、そこら辺の意味付けがどうなされるのかも興味深いところです。
総括
いかがでしたでしょうか?
消防士を描いた漫画作品って実はそれなりにあるような気がしますが、僕は読んだことが無くて『FIRE RABBIT!!』で初めて読んだことになります。
それでも消防士の漫画としてはきっとかなり独特なんだろうなぁと察するに余りある内容だったと思います。
連載でも追っている漫画ですが、単行本も購読していきたい漫画ですね。