『ホウキにまたがる就活戦争(1)』何とも世知辛い就活ファンタジーの感想!(ネタバレ注意)
2019年現在は就職氷河期と言われていた時代ほど就職が難しい時代ではなく、もはや企業が学生を選ぶ時代から、学生が企業を選ぶ時代に移り変わってきてすらいます。
とはいえ、多くの学生にとって就職が一大イベントであることには変わりなく、就活を困難に感じている学生も多いのではないでしょうか?
特に、僕も学生時代にそうだったのですが基本人見知りの人間にとって就活を乗り切るのはかなり大変だったりするものです。
ぶっちゃけ特殊な職業でもない限り、学歴や他の能力よりもコミュニケーション能力、人見知りしないことの方が大事とまで言えますからね。
なぜなら、どんなに高い能力も人にアピールすることができなければ持ち腐れにしかならないのですから。
そして、何とも世知辛いことにそれはファンタジーの世界でも同じようです。
『ホウキにまたがる就活戦争』は、実は天才的な魔法使いである主人公のニコが、人前では実力を発揮できない極度の人見知りのせいで、なかなかお城のお抱え魔法使いとして就職できずにいるけど、何とか克服しようと頑張るという物語です。
色物っぽいタイトルだけど、意外とちゃんと正当な感じのファンタジーでとても面白かったです。
人見知りで就活を困難に感じているような人にはかなり共感できるのではないでしょうか?
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本作の概要
剣と魔法の正統ファンタジーの世界観の中、魔法使いたちの目指すお城のお抱え魔法使いを目指す少女ニコ。
とても競争率が高く魔法使いの就職が困難な大就職氷河期の中、極度の人見知りで人前だとなかなか実力を発揮できないニコは、それでも自分を魔法使いにするために協力してくれる家族のために頑張ります。
実は世界に5人しかいないと言われるドラゴンを召喚できる魔法使いの6人目という実力者であるニコですが、人前で実力が発揮できないのではいつまでも就職できません。
憧れの魔法使いであるタンゴに弟子入りし、健気に頑張るニコを応援したくなるような漫画です。
本作の見所
魅力的な主人公
いわゆるコミュ障系の主人公であるニコ。
現実には人見知りが過ぎる人は少々苦手ですが、漫画やラノベのキャラクターとしては結構好きです。
貧しい実家の家族が魔法の才能のあるニコのために苦労してくれている。それに報いるために頑張るニコですが、人前で実力を発揮することができません。
「私・・緊張しちゃうといつもの実力が全然だせないんだよなぁ・・」
共感する人が多そうなセリフですね。僕も痛いほどニコの気持ちがわかります。
明らかに最初から不合格と決めつけていただろうに慎重に選考を重ねた結果云々と書かれている不採用通知が何とも世知辛いですよね。
しかし、ニコは発揮できないだけで実はとても才能のある魔法使いです。
「人見知りさえ直せれば、もしかしたら・・あのエイシャ城だって狙えるんじゃないかって・・思ったりもしなくもないかなーなんて・・」
一応は1万倍の倍率を誇るエイシャ城のお抱え魔法使いに採用されるだけの実力はあるのだと、ある程度自覚的に思ってはいるようです。
そして実家のある町ごと魔法で水没させようとする魔法使いを相手に、最初はやはり実力を発揮できなかったものの、結果的には怒りでその魔法使いを撃退してしまいました。
人前でも魔法を使うことができたニコは、それでも克服できたわけでは無いようですが、彼女が今後どのように成長していくのかが楽しみな漫画です。
師匠になるニコ
一話は世界観の説明とニコのキャラクター紹介を兼ねたようなストーリーで、その後どうなるのかと思いきやいきなりニコが師匠キャラになっています。(笑)
「オレ、リク。アンタの弟子になってやるよ!!」
主人公が成長する系の物語だと思うのですが、まさかいきなり師匠になるなんて驚きですね。
「師匠も人見知り直せるようにがんばろーぜ!」
実は隠しているだけで王子様であるリクですが、かなりニコに懐いている様子でした。
そして、ニコもリクに魔法を教えることで自身の成長を少し実感しています。
ただただコミュ障やってたら人にものを教えることなんてできませんからね。
しかし、人前では実力が出せない所は変わっていません。
一話目で町を水没させようとしていた魔法使いがリクを狙っていても、魔法は使えません。
「師匠が弟子を守らないでどうするの・・? そうだよ・・師匠(わたし)が守る・・!!!」
自分の服を早着替えで脱いでリクを目隠しし、その上でドラゴン召喚の魔法を発動させました。
いや、胸をはだけさせることの方が恥ずかしいんじゃ・・とか思いましたが、ニコにとってはそっちの方がマシなのでしょうか?
「いやっ、その・・エ~ト。私ってその・・実は変態で・・」
戦闘後、リクに咎められた後の言い訳がまた恥ずかしい。
何というか、ちょっとエッチなシーンなのにそう感じさせないような雰囲気です。
個人的にはそういう雰囲気の女の子は嫌いではありません。(笑)
ニコの師匠
現時点でどんなキャラクターなのかまだ掴めきれていませんが、ニコの憧れの魔法使いであるタンゴは人間だったようです。
しかし、ニコが給仕を務める店に現れた猫っぽい獣人の酔っ払いがタンゴを名乗っています。
かつて自分の才能の無さに自殺すら考えていたニコの前に現れた魔法使いタンゴ。
最初は悪徳勧誘扱いしていたのに、ニコとタンゴしか知らないはずのことを知っていたので最終的にはニコはタンゴを信用します。
まあ、晴れてタンゴの弟子になったニコでしたが、月謝は取られるようですけど。(笑)
人見知り克服の特訓
タンゴの弟子になってどんな修行をするのかと思えば、人見知り克服の特訓が始まりました。
まあ、どんなに実力を向上させても使えなければ意味が無いですからね。(笑)
町中で一曲歌い上げること。
それがタンゴから出された課題ですが、確かにこれは人見知りの克服にはもってこいですね。ただし、普通の人にもハードルが高そうですけど。
しかし、極度の人見知りのニコがこれを最初からうまくこなせるわけもなく、最初は立ったまま気絶するという曲芸を見せてくれました。
何とか頑張ろうとするニコですが、あまりの不出来っぷりにタンゴも呆れてしまったような様子です。修行の場にも来てくれないようになってしまいました。
とはいえ、突如現れた吟遊詩人のおじいさんに励まされながら、ニコは長い時間をかけてついに一曲を歌い上げることに成功します。
「そうか~まあお師匠も本当はきっと君のことを心配しているハズさ」
実は、この吟遊詩人のおじいさんはタンゴの変装だったのですが、呆れたフリをして一応はニコのことを心配していたようですね。
何だか良い師弟関係だと思います。
それに、ひとまず人前で歌を歌うことに成功したニコは、もしかしたら魔法も人前で使えるようになっているかもしれません。
成長したニコがどう活躍するのか、次巻が楽しみです。
総括
いかがでしたでしょうか?
色物っぽいタイトルに惹かれて読んでみたら、意外と正統派なファンタジー作品でしたが、最近はファンタジーと言えばいわゆる「なろう系」の異世界転生ものや主人公がチートで無双するものばかりでちょっとばかり食傷気味なところもあったので、意外と新鮮な気持ちで読めて面白かったです。
本作品の主人公ニコも実はかなりチートな能力の実力者で、最近の流行に則っている部分もありますが、それでいて昔ながらの努力で成長していくタイプの主人公の側面も持っていてとても魅力的なキャラクターでした。
これは続刊にも期待したいですね!