あるいは 迷った 困った

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『じけんじゃけん(5)』決め台詞を意識して言うのは恥ずかしい話の感想(ネタバレ注意)

 

フィクション作品には様々なジャンルがあります。

ファンタジーだったり、SFだったり、そしてミステリーだったり。

最近では、そんな様々なジャンルの作品のファンを描いたような作品も一つのフィクション作品の形になりつつあると思います。

特に、SFやミステリーはコアなファンが多いこともあり、そういった作品を描きやすいジャンルなのかもしれません。

じけんじゃけんもそういう特定のジャンルのファンを描いた日常系作品で、そのジャンルとはミステリーになります。

もう5冊目ですが、ミステリーファンのみならずとも共感できる部分もあって、相変わらず面白い漫画だと思います。

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本作の概要

相変わらずミステリーが絡むとダメっぽくなる百合子先輩。

ミステリー作品の決め台詞に憧れてみたり、ノックスの十戒の自分版を作ってみたりと相変わらずです。

ミステリー作品に少しでも触れたことがある人なら思わずクスリとしてしまいそうなエピソードに、ミステリーファンでも共感できるファン心理が盛りだくさんの内容になっています。

本作の見所

決め台詞

「謎はすべて解けた!!」

本記事は『金田一少年の事件簿』のレビュー記事ではありません。

「真実はいつもひとつ!」

本記事は『名探偵コナン』のレビュー記事でもありません。

いや、1ページ目からヒロインの百合子先輩が全身鏡を見ながら有名ミステリー作品の決め台詞を練習しているものだから。

傍目にメッチャ恥ずかしい行為ですが、満足げな表情がメッチャ可愛らしくもあります。

「・・ミステリにおいても決め台詞を持っとる名探偵は少なくないんよ」

確かに、キャッチーな決め台詞は探偵役の魅力の一つであり、百合子先輩の言う通りメディア化で原作にはないセリフを用意されることもしばしばありますよね。

コナン君の「真実はいつもひとつ!」だって、原作では言っていないセリフですし、というかミステリー作品に限らず有名なセリフが実は原作に無いって割とあるあるだと思います。

ドラえもんの「ぼく、ドラえもんです」は大山のぶ代さんのアドリブですし、幽遊白書の「伊達にあの世は見てねーぜ」も原作にはありませんよね。

「私にもあったほうがええんじゃないかね??」

そんなわけで自分にも決め台詞があった方が良いんじゃないかと言い出す百合子先輩。

いや、普通に罰ゲームだと思うのだけど、百合子先輩に至っては何だか披露したげな様子。

仕方なく戸入君が聞かせて欲しいと頼みます。(優しい後輩だな~)

しかし・・

「━━すっ、すべての謎を解き明かし! たったひとつの真実に光を当てて・・ごにょごにょ

メッチャ恥ずかしそう。(笑)

いや、こういう決め台詞って自然に出てくるから格好良いものであって、何か格好良さそうな台詞を考えてきて言うのって恥ずかしいに決まっていますよね?

絶対罰ゲームだし。

じゃあどういう決め台詞なら良いのかと戸入君と議論する百合子先輩。

そして、どうしてそこまでするのかという戸入君の問いかけには・・

「ミステリのためなら努力を惜しまん女じゃけね。私は!」

うん。やっぱり自然に出てくる堂々とした台詞こそが決め台詞足りえますよね。

ミステリーのセオリー

孤島にいるっぽい雰囲気を出すために水着で教室にいる百合子先輩たち。

いや、一部恥ずかしがっている人がいますが、そこは孤島ではなく純然とした教室なので当たり前ですよね。(笑)

「こっこんな殺人犯がおるかもしれん部屋で寝られるかッ!! 私は自室に鍵かけて救援が来るまで、ひとりでおらせてもらうけんねッッ!!! ━━って云わん事よ」

ともかく孤島シチュエーションのロールプレイを始めた百合子先輩たち。

ミステリーにおける「ひとりになりたがる人は死ぬ」というセオリーについて力説します。

確かに、これ以上の殺されフラグはなかなかありませんね。

そして、そのセオリーに則って殺されなさそうな立ち位置を確保しようとする面々がメッチャ面白い。

ちゃっかり警部役になったアイリスが、戸入君をこれまた死にやすそうな生意気な若者役に据えようとしたり、その意趣返しとばかりにアイリスを過去に後ろ暗い所のある悪徳刑事に仕立て上げたり。

そして、ちゃっかり女子高生探偵役になった百合子先輩が、戸入君をこれまた死にやすい待ち合わせしている情報提供者役に仕立て上げたり、確かにミステリーでこういう奴って死ぬな~って思わずクスリとしてしまいました。

コレクターの本棚

既に持っている書籍が新たに再販された時、装丁が違っていたり、そもそも出版社が違っていたり、洋書であれば翻訳が違っていたり、はたまた文庫版だったり、様々なケースがありますがファンだったら読む読まないは別にして欲しくなってしまうことってありますよね。

「いらんもんは買うとらん!!」

別に悪いことはしてないのに、何だかバカなことをしている気分になって責められている気持ちになっている百合子先輩。

僕もめったにありませんが、単行本を持ってるのに文庫版も買ってしまい、結局置き場所に困って売ってしまったり、バカなことだと分かっているけど止められないファン心理が痛いほどわかります。

結局のところ百合子先輩は戸入君に背中を押して欲しいだけだと気付いた優しい戸入君は百合子先輩の背中を押してあげますが、翌日になって結局迷っている百合子先輩が可愛らしいですね。

ミッシングリング

ミッシングリングとは元々は生物学の用語ですが、ミステリーにおけるミッシングリングにも特別な意味がありますね。

要はミステリーの登場人物たちの間にある見えない共通点のことであり、それを探し出すことで真相に近付くような作品も数多存在します。

そして、百合子先輩は戸入君に双子の姉妹である野薔薇との違いを指摘され、ちょっと拗ねて二人の共通点は何かと問いかけます。

「いや・・共通点も何もおふたりは双子じゃないですか」

「双子なのに共通点がないって云うたの戸入君じゃろ」

双子じゃなくても兄弟ってあまり比較されたくないものですが、双子だとそういう気持ちも強くなったりするのでしょうか?

いやはや、しかし戸入君の前ではそうやって拗ねたりしつつも、どうやら彼氏にフラれたらしい野薔薇のことを心配してみせたり、意外と百合子先輩が可愛らしいエピソードだと思いました。

白銀百合子の十戒

ノックスの十戒』というミステリーを書くにあたってのルールがあります。

まあ、正直これを全て守っているようなミステリー作品の方が少ないような気もしますが、少しでもミステリー作品に触れたことがある人なら『ノックスの十戒』は聞いたことがあるでしょう。

何となく、『ノックスの十戒』にかなり反しているような作品で自虐的に名前が上がるようなイメージがあるのは、僕の気のせいでしょうか?

とにもかくにも、このルールがどうこうというよりも『ノックスの十戒』という響きが格好良くて何となく覚えたり使ったりしている人が多いような気がします。

百合子先輩もまさにそうで、『ノックスの十戒』になぞらえて『白銀百合子の十戒』なるものを作ってキャンプに出掛けるアイリスに渡しました。

「『ノックスの十戒』も結局守っタリ守られなかっタリするよ」

結局、アイリスは『白銀百合子の十戒』のかなりの部分を無視していて、百合子先輩に「ちゃんと守ったか」と問われてこう返していました。(笑)

いや、正直『ノックスの十戒』は本当に面白いフィクション作品を描くための足枷でしかないような気がしていて、超面白いミステリーが『ノックスの十戒』を守っていないこともザラにあるような気がします。

総括

いかがでしたでしょうか?

そういえば今巻は百合子先輩が戸入君に微妙なミステリーの謎かけを持ち掛けるいつものヤツの成分が少なめでしたね。

そういうエピソード以外も面白いけど、じけんじゃけんで面白いのは謎かけを持ち掛けたいけどちょっと空回り気味な百合子先輩だったりするので、次巻以降そういう部分がまたたくさん読めたらいいな~って思っています!

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