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ヒカルの碁 鑑賞会 漫画編! 懐かしの漫画、書評シリーズ【その2】22巻

 

ついに北斗杯が開幕する22巻です!(前巻の書評はこちら

高永夏への敵愾心を燃やすヒカルが、ちょっと空回りしつつも頑張る姿が魅力的ですね。

個人的に、この22巻から23巻にかけてのヒカルが、作中でも一番熱いと思います。

序盤は無邪気な子供っぽい印象が強かったヒカルも、碁打ちとして大きく成長しているというところが伺えます。

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本作の概要

洪秀英とも再会し、北斗杯ではオーダー的に対局できないので碁会所での再戦を約束します。

しかし、それを快く承諾しつつも洪秀英に高永夏への敵愾心をぶつけます。

それによって不幸な誤解を韓国勢も知るところとなるのですが・・

それを高永夏自身が面白がって火に油を注ぐような言動をしてしまいます。

そういうわけで、ヒカルの高永夏への敵愾心がMAXの状態で、いよいよ北斗杯が開幕しました。

 

本作の見所

前哨戦

高永夏が本因坊秀策を軽視した発言をしていることをヒカルから聞いた洪秀英は、高永夏がそんなことを言うわけが無いと、直接高永夏に確認して誤解を解こうとします。

洪秀英も、自分が認めた日本の棋士に尊敬する棋士が誤解されたままというのは面白くないですよね。

しかし、そんな洪秀英に高永夏は「ほっとけ」と一言。

「”秀策をバカにした高慢な棋士”、そう思われるのならそれはそれで面白い」

いや、悪役レスラーじゃないんだからそんな誤解さっさと解いとけよとツッコミたくなりますが、その辺は高永夏も子供っぽいですね。

しかも、ほっとくだけならまだしも前夜祭でさらにヒカルを煽りにかかります。

本因坊秀策をずいぶん評価しているようだが、ハッキリここで言ってやる。彼などもし今現れてもオレの敵じゃない」

古瀬村の言ったことは誤解でもなんでもないと、壇上から降りて、わざわざヒカルの前までやってきて宣言してしまった高永夏。

これから開幕する北斗杯にドカンと爆弾を投入していきましたね。

もし佐為がいたら?

それにしても、この高永夏の煽りのシーンのタイミングで、もしまだ佐為が現世に残っていたらどんな反応をしたのだろうと考えると興味深いですよね?

気になるのは僕だけでしょうか?

ヒカルは今はもういない佐為のために怒っているという部分も大なり小なりあるのだと思いますが、もし佐為がいて佐為が怒っていたら、ヒカルはそれを諫めるような反応をしていたのではないかと推測します。

そして、そもそも佐為はそこまで憤慨しなかったのではないかという気もします。

本因坊秀策の人柄をバカにされたのならまだしも、碁打ちとしての本因坊秀策は佐為自身なワケですから、「なにを生意気な!」くらいの反応はしたとしても、今回のヒカルほど怒らなかったのではないでしょうか?

人がバカにされた時、バカにされた本人よりも、親しかったり尊敬していたりする人の方が怒るってことは往々にしてあるものです。

そういうわけで、もしかしたら佐為は草葉の陰で、今回のヒカルを苦笑しながら見ているかもしれませんね?

経験不足とヒカルの不調

日本チームの中では明らかに経験不足をあらわにしているヒカルと社。

対局場に入っているTVカメラにビビったり、落ち着いて見える中国の対局者に経験不足を実感したり、そういえばヒカルはホテルに入る前から緊張していましたね。

社の方は越智を見かけたことにより、本当なら日本メンバーになっていた越智の前で格好悪い所は見せられないと思ったのでしょう。

対局前にある程度落ち着きは取り戻した様子です。

しかし、ヒカルの方は緊張を隠せないまま対局に臨むことになります。

緊張と高永夏への敵愾心が混じり合って精神的に不安定な状態で、最近ずっと好調な感じだったヒカルは久々に悪い碁を打ってしまうことになりました。

対戦相手は中国若手のナンバー2の王世振。

そんな精神状態で敵うわけもなく、ヒカルは苦戦を強いられることになります。

ヒカルのお母さんの観戦

前巻ラストでヒカルのおじいちゃんと一緒に観戦しに行こうとしていたヒカルのお母さん。

碁がわからないのに来なくて良いとヒカルは最初言っていましたが、親に碁打ちになることを反対されている社のことを思い出して自分は恵まれてると思ったのか、来るなら日程が分かってからにするようにと助言していましたね。

「来ちゃった。ヒカルに怒られるかしら」

そういうわけで、息子の晴れ舞台にやってきて、観戦するだけなのに息子のヒカルばりに緊張しているお母さんが可愛らしいですね。

しかし、当のヒカルは全不調。

碁はわからなくても、解説を聞けば形勢が絶望的なのはわかります。

客席からはヒカルに対するヤジも飛んでいて、母親としては流石にいづらかったようで・・

「子供の運動会を見るような気持ちで来た私がバカでした」

プロの勝負の世界の厳しさに場違い感を覚えたのか、ヒカルのお母さんは帰ってしまいます。

まあ、あくまでも職業棋士、仕事の出来不出来なんて親に知られたいようなものではないという配慮もあったのでしょうね。

ヒカルの猛追

しかし、今のヒカルは不調なままでは終わりません。

「この碁を投了するのも立て直すのも、ここにいるオレしかいない!」

起死回生の一手でヒカルは猛追を図ります。

現実のプロ棋士も、本当に強いトップ棋士はみんな必敗の碁でもひっくり返しかねない粘り強さ、油断ならなさを持っているものです。

近年の日本なら井山先生がまさにそうですよね。

そして、ヒカルにもそういう部分があるという所がこの対局で表現されています。

韓国戦のオーダー

凄い猛追で王世振を追い詰めたものの、一歩及ばなかったヒカル。

実は逆転の手はあった所をヒカルは見逃していて、観戦していた高永夏は気付いていました。

それだけで高永夏の方が上だと言うのはあまりにも短絡的かもしれませんが、一応この段階では高永夏の方が上だということを、この出来事は示していたのだと思います。

ともあれ、高永夏との対局がヒカルの成長のキッカケになる対局だと見て取った倉田さんは韓国戦のオーダーで、ヒカルを大将に据えることを決定します。

これは熱い展開!

予定調和なんてつまらないですもんね!

本作の棋譜 教えてLeelaZero先生!

今回は北斗杯の日本と中国の団体戦の副将戦。

ヒカルと王世振の対局で、元ネタは王立誠九段(黒)と劉昌赫九段(白)の、第3回春蘭杯3番勝負の2局目となります。

作中にも描かれている通り、劣勢になってからの粘りが見所の対局ですね!

(図1)

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作中で「左辺白にツケた手が問題で黒の形がくずれました」と解説されていたツケが恐らくこのツケだと思われます。

この手自体の良し悪しは僕にはわかりませんが、少なくともこの後の展開を見ると左辺黒が攻められて、効率の悪そうな形を強いられているような感じがしますね。

作中で林日煥も「足取りが重い」と言っていましたが、まさにそんな印象です。

(図2)

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そして、これが実際に形がくずれたと解説されていた時の盤面ですね。

左上寄りの空間の大きな地の付かない部分に黒石が集中していて、ここまでの流れだけを見ても黒が押され気味だと感じ取れますね。

プロの対局の特に序盤は、ハッキリどっち持ちと言えないくらいの微妙な差しかないことが多いですが、この対局に関して言えば流れからして白を持ちたいと思います。

しかもこの盤面、次は白番ですからね。

(図3)

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そして、作中でもピックアップされていた反撃の一手。

左上の白地の中にツケていきました。

作中で王世振は「隅から押さえて小さく生かしても問題ないさ」と思っています。実際、LeelaZero先生の評価も黒の勝率が9割以下にまで落ち込んでいますが、個人的には図2から受ける印象ほど大差には見えないのですが、そこのところはどうなのでしょうか?

僕が弱いだけと言ってしまえばそれまでですが、左上の白地が消えるとかなり細かくなりそうな気がするのですが・・

少なくとも、アマチュア低段者レベルだとすぐに逆転が起こり得る形勢ですね。

この左上のツケも割と多くの人が思いつきそうで、実際に打ちそうな手ではありますからね。悪あがき的な意味でですけど。(笑)

(図4) 

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そして、反撃のツケの狙いは小さく生きることではなく、上辺白を取ってしまうコウを仕掛けることでした。

これが上手くいけば、盤上の景色は随分と様変わりしますからね。

しかし、白のダメは4か所も空いているので、黒がこの白を取るのは相当大変だと思います。

こういうコウ、有利な方も含めて精神的に緊張が走りますよね。

結果的にこのコウは黒が制しますが、まさに見所のある粘りだったと思います。

しかし、上辺で上手くやった黒ですが、その時点で終盤も終盤。LeelaZero先生の勝率は絶望的なままです。

まあ、LeelaZero先生は終盤になるほどちょっとの差でも勝率が9割とかになるので実際はかなり僅差なのですが、粘りに粘ってあと一歩届かないというのも名局であることは間違いないと思いました。

総括

いかがでしたでしょうか?

いよいよ、次巻が最終巻となります。

さ、さっびしぃ~!

残すは北斗杯の韓国チームとの団体戦を残すのみとなりました。

クライマックス、高永夏との大将戦に注目ですね。

また、最終巻の短編には久々に佐為も登場しますよ!(次巻の書評はこちら