あるいは 迷った 困った

漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

『水溜まりに浮かぶ島(1)』衝撃の展開の連続にドキドキが止まらない漫画の感想(ネタバレ注意)

 

見慣れた絵柄に三部けい先生の名前を見かけて『夢で見たあの子のために』の新刊かなぁと手に取ってみたら、まさかの新作でビックリしました。(笑)

水溜まりに浮かぶ島というこの作品の、背表紙に記されたあらすじを読んでみただけでは一体どのような物語なのかが正直ピンと来ないところがありました。

母を残して乗り込んだ観覧車に突然雷が落ち戸惑う湊。目の前には妹の姿はなく、知らない女性の死体が。そして、窓に映る自分も知らない「誰か」であった。

これは背表紙に記されたあらすじの抜粋ですが、読後に改めて見てみたらなるほどといったところですけど、読む前だと少しツライものがありますね。

しかし、なぜだか惹きつけられるものがあります。

それは今まで相当に個性的な作品を書いてきた三部けい先生への信頼なのかもしれませんし、それだけではないのかもしれませんが、いずれにしても水溜まりに浮かぶ島とはいったいどのような漫画なのかがとても気になってしまいました。

そして、その期待にどうやら間違いはありませんでした。

前提として、背表紙に記されたあらすじには何一つ嘘は無く(当たり前ですが)、ただただ言葉通りの展開が待っています。しかし、これは恐らく意図的なものなのだと思いますが、肝心なところがかなり曖昧に記されていたのであろうことが分かります。

実際、本編でも主人公たちに何が起きたのかが読み進めるまで分からないような構成になっていて、そんな導入部が非常に面白い作品になっていたのではないかと思います。

なので、そういうドキドキ感を味わってみたい人は盛大にネタバレが含まれる本記事を読むのはいったんやめておいた方が良いかもしれません。(笑)

まっさらな状態で読んでこそ面白さが際立つ作品だと感じるからです。

?

本作の概要

明神湊と渚の母親は、久しぶりに帰ってきたと思ったら遊園地に行こうと切り出します。湊は不審な様子の母親に不安を覚えながらも遊園地で遊び、最後に母親だけ残して妹の渚と一緒に観覧車へと乗り込みます。

しかし、突然観覧車に落ちた落雷の衝撃に耐えた後、目の前には更なる衝撃が待ち受けています。

渚がいたはずの場所には素人目にも殺害されたのであろうことが分かる女性の遺体があり、窓に映る自分の姿は大人の男の姿になってしまっていました。

本作の見所

目の前の妹が大人の女性の遺体に?

本作品の主人公は小学五年生の明神湊という少年で、妹の渚と一緒に母親の帰りを健気に待っている兄妹といった感じです。育児放棄のネグレクトを受けているのだと推察されますが、周囲にそれがバレたら母親と引き離される可能性もあるためそれを悟られないように生活しているようですね。

そんな母親が久しぶりに帰ってきて、何故か遊園地に連れていかれ湊と渚の二人だけで観覧車に乗せられるところから物語は始まります。

湊は、突然遊園地に連れてきたりしたところから様子のおかしい母親を不審に思っていて、ただし普通の子供でもあるのでただただ不安に感じているような様子でしたが、そんなものが些細な不安に感じられるほどの衝撃が降りかかります。

観覧車に突然の落雷。それだけでも衝撃ですが、妹の渚がいたはずの目の前には見知らぬ女性の遺体が転がっていました。

恐らく、このシーンで何が起きたのかという答えに初見でたどり着く人はあまりいないと思います。

実のところ、その設定が何なのかは後述するとして、ここで使われている設定自体は相当に使い古されたものではあるのですが、その使われ方が本当に上手いというか、新しいというか、そんな感じで非常に驚かされます。

なるほど、水溜まりに浮かぶ島という漫画はそういう驚きを与えてくれる作品なのだというのが一番の感想ですね。

ちなみに、この母親が物語にどう影響しているのかはよく分かりません。

最初はネグレクトがテーマで、それに耐えつつも母親のことは慕っている兄妹を描いた漫画作品なのかと思いましたが、どうやら違っているようですね。

あえてなのだと思いますが母親の表情が描かれていませんし、観覧車の下の母親の「サヨナラ」というセリフは子供二人に対してのものであるのと同時に、ひょっとしたら物語の本筋とはあまり関係が無いので早々に退場することを示したメタい意味もあったのではないかと勘繰っています。

ダークな入れ替わりの物語

さて、落雷とともに目の前の妹が女性の死体に変わるというとんでも現象の答えですが、実は水溜まりに浮かぶ島は入れ替わりをテーマにした作品のようです。

入れ替わりをテーマにした作品といえば、どちらかといえばコメディタッチの作品の方が多いようなイメージが強いような気がします。

そうでなくても、入れ替わった状況そのものに対する問題解決が主なテーマになる感じでしょうか?

しかし、水溜まりに浮かぶ島の場合は入れ替わったことによってもたらされた状況があまりにも特殊なのです。

湊が入れ替わったのは、なんと強盗殺人者の男でどうやら頭もキレる有能そうなヤツです。しかも、観覧車の中で元仲間の女性を殺害し、その後始末の準備もしっかりと整えた状態だったのですが、さすがに落雷での入れ替わりまでは予見していなかったというような状況のようですね。

女性を殺害した直後の指名手配犯と入れ替わってしまった湊に、着々と状況把握をしながら渚と行動を共にする指名手配犯の黒松。

これではコメディになりようがないですね。(笑)

それに、現時点では黒松の方に余裕がありそうな感じではありますが、もし元に戻った後のことを考えると湊にも捕まって欲しくないはずですし、いやそれとも真っ白(犯罪歴的な意味で)な湊の身体から元に戻るつもりがないのか、その辺も気になりますし、いずれにしても相当に複雑な状況です。

湊にしても、指名手配犯という状況の都合上誰にも頼ることができずに、これから先どうなっていくのかが非常に気になるところですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

とりあえず1巻は水溜まりに浮かぶ島という物語における構図を示したといった感じの内容でしたね。複雑な設定を分かりやすく、しかも面白く、続きが気になるように演出されていて、相当ハイレベルな漫画作品になっていくであろうことが今から予感されます。

しかも、示されたのは構図だけで今後の展開の予想はかなり難しそうです。そしてそれは即ち水溜まりに浮かぶ島が先の見えないドキドキ感がずっと続いていくような作品であることを意味します。

『夢で見たあの子のために』の続きも気になるところですが、個人的には水溜まりに浮かぶ島の続きを早く読んでみたいような気がします。