『さよならミニスカート(1)』が想像以上に凄い漫画だった!感想と考察(ネタバレ注意)
最近話題の『さよならミニスカート』。
話題だからという理由だけで読んでみたのですが・・
これは面白い!
内容的にはそこまで衝撃的というほどでもないのですが、見せ方がとても上手いという印象の作品で、あっという間に惹き込まれてしまいました。
絵もかなり細かく描き込まれていて綺麗です。
そしてこれが『りぼんマスコットコミックス』の漫画だというのが意外ですよね。
『りぼんマスコットコミックス』というと、少女漫画の中でも低年齢層向けのイメージがあったからです。
僕の知っている『りぼんマスコットコミックス』の漫画は大体90~ゼロ年代の作品ですけど、少女漫画らしい恋愛描写はありつつもファンタジーやギャグ成分が多めの、子供受けしそうな作品が多い印象を持っていました。
『りぼんマスコットコミックス』は集英社だけど、少年漫画でいうところのサンデー系の作品のイメージでしょうか?
しかし、『さよならミニスカート』から受ける印象はもうちょっと大人向け・・というか普段漫画を読まない大人でも面白いと思えるくらいなのではないかと思われます。
そういうわけで普段漫画を読まない人でも楽しめると思うので、興味がある人は是非ともご一読を!
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本作の概要
主人公・神山仁那は、女子であるにもかかわらず唯一男子用のスラックスで通学する変わった少女です。
実は、神山仁那は元々人気アイドルグループであるPURE CLUBのセンターを務める雨宮花恋なのですが・・
そんな雨宮花恋がなぜ引退したのか?
なぜその後男子のような格好で生活しているのか?
最も女の子らしかった女の子が女の子をやめる物語となります。
本作の見所
女の子をやめた神山仁那
人気アイドルグループ・PURE CLUBのセンター雨宮花恋が、握手会の折に不審者に手首を切りつけられ、病院に搬送される事件が起きます。
「アイドルファンの男なんてナニしでかすか分からないんですから」
「とにかく今後は全てのファンを疑うつもりで」
その時、取り調べの際に刑事からは危機感の無さを指摘され、それにうんざりしたのか、何か思う所があったのか雨宮花恋は言います。
「私アイドルやめます」
そしてその後、 「私は女なんかじゃない━━」と長かった髪を自ら切り落とし、男の子の格好をした神山仁那が誕生します。
この時の神山仁那が何を思っているのかは描写されれいません。
しかし、推察することはできます。
恐らく神山仁那の持つアイドル観が影響しているのだと思われますが・・
それについては『アイドルとは?』の項で後述します。
堀内光への興味
嫌悪感なのか不信感なのか、それとも警戒心なのか、神山仁那の男に向けている感情は複雑でわかりづらいものです。
僕にはイマイチよくわかりませんが、女性にならわかるものなのでしょうか?
そして、そんな神山仁那の前に現れた少年・堀内光に、神山仁那は普通の男に対してとは違った印象を抱くことになります。
「アイドルになってくれてありがとう」
神山仁那が西宮花恋だと気付いた堀内光がかけた言葉。
堀内光の妹が勇気づけられたことに対するお礼の言葉なのですが、これを聞いた神山仁那はどう感じたのでしょうか?
アイドルを辞めることで西宮花恋を否定した形になる神山仁那に対して、西宮花恋を肯定する堀内光。
間違いなく何かしらの形で神山仁那には響いたことだと思われます。
連絡を取り合っているPURE CLUBのメンバ・サラには「ちょっとマシな人がいる」と話しているようなので、少なくとも悪感情は無いようですね。
握手会の傷害事件の犯人
さて、他の男に比べて神山仁那が好印象を抱くことになった堀内光ですが、何と早々に彼が握手会の傷害事件の犯人である可能性が出てきます。
そのことを最初に指摘したのはサラですが、そう思わせる伏線はそういえばもっと序盤から出てきていました。
曲がり角で神山仁那が堀内光にぶつかりそうになった時、一瞬堀内光が握手会の傷害事件の犯人と重なって見えていたこと。
神山仁那の腕の傷を見た時の、何かに気付いた様子。
そしてサラの言う堀内光が犯人かもしれな根拠はどれも、状況証拠としても薄弱なものではありますが、そうかもしれないと警戒するのには十分なものです。
しかし、疑問点もあります。
堀内光の言動を見ていても、雨宮花恋を切り付けるような理由がそもそもないような気がするんですよね。
確かに、状況証拠から堀内光は相当に怪しく、何かを隠しているような雰囲気も感じられるのですが、妹のこともあって雨宮花恋には感謝すら覚えているような様子。
もちろん、その話すら嘘だったという可能性や、他に何かしらの思惑が隠れている可能性も否めませんが、今のところ堀内光が雨宮花恋を切り付ける理由が浮かばないんですよね。
ちなみに、個人的には握手会の傷害事件の犯人に関する今後の展開については、3通り考えられると思っています。
堀内光はそもそも犯人ではないというものが一つ。この場合の犯人は現時点では推察できませんが、あまりにも堀内光が露骨に犯人っぽすぎるのであり得る展開の一つではあると思います。
次に、堀内光が西宮花恋に感謝しているのは本当なのに傷つけようとするサイコ野郎である可能性が二つ目。僕が勝手に持っている勝手なイメージですが、アイドルの執拗なファンが起こす事件ってサイコな雰囲気が漂っている気がするので、あり得ない話ではないかと思われます。
そして三つ目は、今は明らかになっていない動機が堀内光にはあるというもの。これには西宮花恋に対する感謝が嘘である可能性と、嘘ではないけど別に動機がある可能性の二通りが考えられますね。
1巻ではその答えが出ていないという所で、続きが非常に気になる所です。
アイドルとは?
「だってアイドルの雨宮花恋は・・人間じゃなかったから」
サラの語る雨宮花恋は良くも悪くも強烈な在り方をしていたようです。
アイドルであろうとして、人間・・女の子としての自分を閉じ込めた上で、周囲の人間のことも人間として見ていないような、西宮花恋はそんなアイドルだったようです。
プライドを持ってアイドル・西宮花恋を演じていたのかと思われます。
そう考えると、「全てのファンを疑うつもりで」と言われた西宮花恋こと神山仁那がアイドルを辞めようと決意した思いもある程度推測できますね。
つまり、神山仁那の演じていたアイドル・西宮花恋は、全てのファンを疑ってまで自分の安全を確保するようなものではなかったからなのだと推察されます。
アイドルの恋愛が御法度であることと同じで、既にファンを疑いだしている自分はアイドルではないと思ったのかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
実は、本作品を購入した段階でこうして書評レビューの記事を書くつもりはありませんでした。
今は書きたいネタがありすぎて困り始めている状況なので、ただ話題になっているからという理由で購入した書籍のレビューを書いている余裕はないと、そのように思っていたのですが・・
読後、気付けば他の書きたいネタを押しのけて最優先に本作品のレビュー記事を書いていました。
それくらいに衝撃的な作品だと感じたからです。
良くも悪くも雑多に様々な作品が量産される時代ですが、そんな中に時たま光って見える作品が出てきます。
しかし、小学生女子向けである『りぼんマスコットコミックス』からこのような光る作品が出てくるとは思ってもみませんでした。
1巻が非常に続きの気になる所で終わっていたこともあって、めちゃくちゃ続きが楽しみです!