『水曜日のトリップランチ(1)』美味しい時間が素敵な漫画の感想(ネタバレ注意)
最近は本当にグルメ漫画が多いですよね~
とはいえ、『水曜日のトリップランチ』は他のグルメ漫画とはまた少し毛色が違っているのではないかと思います。
多くのグルメ漫画は単純に美味な食べ物や変わった食べ物、実在のものをモデルとした飲食店にスポットを当てた作品になっているような気がします。
最近は本来グルメとは縁が無さそうなジャンルとグルメ要素を絡めてくるような作品も多いですよね。
異世界ものとグルメとか、その辺はよく見かけるような気がします。
とはいえ、基本的には食べ物がテーマになっている点は共通していて、まあグルメ漫画なので当たり前といえば当たり前のことです。
しかし、『水曜日のトリップランチ』の一番のテーマは食べ物ではないような気がするのです。
では何が『水曜日のトリップランチ』のテーマなのか?
それは、食べるシチュエーションなのではないかと思うのです?
どこで誰と食べるのか?
『水曜日のトリップランチ』のテーマはそこにあると思うのです。
真面目なごはん係兼秘書の岸田君と、マイペースでズボラな十和博士の食事風景にほんわかしてしまう漫画です。
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本作の概要
次世代VRの研究をする十和博士の個人研究室に、秘書課の岸田君は毎週水曜日にごはん係として訪れます。
社長直々に任命されたマイペースでズボラな十和博士のランチ係という仕事。
職場の同僚という関係でありながらもどこか独特な関係性の2人の食事風景にほのぼのする漫画です。
本作の見所
十和博士のランチ係
職場もののグルメ漫画も今時珍しくないですが、個人研究室に引き籠って研究に没頭する博士のランチ係なんてところは珍しい設定ですよね。
十和博士のランチ係の岸田君。
「毎週水曜日、僕は「魔法使い」の部屋に行く。時間は決まって正午」
岸田君は非常に真面目な男ですが、次世代VRの研究者である十和博士を「魔法使い」と表現するあたり、意外とロマンチストな男かもしれません。
実際、真面目ではあってもお堅い感じのキャラクターではなく、時たま少年のように目を輝かせるような場面もあって、愛嬌のあるキャラクターだと思います。
そして、だからこそ社長は岸田君をランチ係に任命したのかもしれないと思いました。
食事はシチュエーションも大事です。
愛想のないお堅い真面目なだけの秘書を派遣しても、十和博士はあそこまで楽しそうに食事をすることは無かったかもしれません。
岸田君だからこそ、十和博士が打ち解けた感じになっているのだとすれば、ほとんど登場しませんが社長の見る目が流石だったのだと思われます。
次世代VRを研究する十和博士
亡くなった旅行好きの祖父の入院中、VRで旅行に匹敵する体験ができたらと考えた十和博士は現在次世代VRの研究者になっています。
非常にマイペースで、個人研究室の片づけができていなかったり、岸田君とのランチ中に仕事休憩中であるにも関わらずビールを飲もうとしたり、なんともフリーダムな印象の十和博士ですが、不真面目なわけではなく研究に没頭している時には呼ばれても返事が無いくらいの集中力を発揮しています。
「だってこんなに素敵なパンケーキなんだよ? あそこで食べようよ!」
そんな十和博士の研究成果はかなり凄くて、岸田君が「魔法使い」と呼ぶ気持ちも分かります。
岸田君が作ったパンケーキを食べるために部屋を変える提案をする十和博士に、岸田君は部屋を変えるだけで何があるのかと腑に落ちない表情でしたが・・
「もしかしてここは・・ハワイ?」
なんと、個人研究室の一室がVR空間になっていて、ハワイが完全に再現されていたのです。
次世代過ぎる・・
そして、お仕事として上半期の進捗報告も兼ねた十和博士の機転が素敵ですね。
VRで旅行に匹敵する体験ができたらという所は、かなり実現に近づいているようです。
行動を読まれている十和博士
1年間も十和博士のランチ係をしている岸田君は、かなり十和博士の行動パターンを熟知しだしているようです。
そのことが分かる、岸田君のいない個人研究室のあちこちに貼られた付箋のエピソードが個人的にはかなり好きです。
「岸田くんてエスパー?」
散らかった部屋でこけそうななったところに「足元に気をつけて」と付箋が貼られていたり、ビールを飲もうとしたら「厳禁!」と諭されたり・・
こういう理解が深い関係性って傍目に凄く微笑ましく見えますよね。
二日酔いの岸田君
十和博士はマイペースであっけらかんとした性格ですが、制作発表会のプレゼンではカチコチに固まるほど緊張していたようです。
思ったように発表できなかったのか落ち込んでいたので、岸田君が社長の許可をもらって十和博士を連れ出し、2人でラーメン屋で飲んでいたのですが・・
「女性の部屋に泊まってしまって・・申し訳ない!」
真面目な岸田君は記憶の無い内に十和博士の個人研究室に泊まっていたことに罪悪感を覚えているようです。
二日酔いでいつもに比べて情けない様子の岸田君を見てマウントを取った感じになって嬉しそうな十和博士が可愛らしいと思います。
その後、2人で銭湯に行くエピソードに出てくる風呂上がりで髪を下した十和博士もグッドですね。
十和博士の研究対象
自分の研究対象に対しては凄い集中力を発揮する十和博士ですが、その他のことには疎くて鈍感そうなところがあります。
普段は個人研究室に引き籠っていて会社にはあまり来ない十和博士ですが、祖母に促されて岸田君に差し入れを持ってきた十和博士ですが・・
「私、なーんも知らないんだ。岸田くんのこと」
そこで見かけたいつもと違う岸田君が、実は会社でのいつも通りなのだと知って、少し岸田君のことをもっと知りたいと気になり始めた様子です。
「私・・いま、研究中みたいにワクワクしてる」
これは、まあそういうことなのでしょうね。
研究中の十和博士の集中力から察するに、そういう意味で岸田君のことを意識しだした十和博士が次巻以降どんな表情を見せてくれるのかが楽しみだと思います。
「今日みたいに沢山しゃべって、岸田くんのこともっと知りたいんだけどなー」
本人を前に照れもなく、何もわかっていない感じでこんなことを言ってしまう天然の十和博士。
とっても魅力的なキャラクターだと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
最近グルメ漫画は本当に多すぎるので食傷気味ではあるのですが、それでもついつい手に取ってしまうのはなんでなんでしょうね。(笑)
人間やっぱり食事が好きなものだからなのだろうと思います。
ですが、『水曜日のトリップランチ』は前述したように普通のグルメ漫画とテーマが違っているように感じる部分もあって、だからこそ食傷気味だったグルメ漫画なのに新鮮に感じることができました。
あと単純に十和博士がめっちゃ可愛い・・というか好みのキャラクターなので次巻以降もかなり楽しみにしています!