『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには(1)』何故強いのか分からない男の強さに迫る漫画の感想(ネタバレ注意)
『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』は、コンビニバイトでフリーターをしながら美大を目指す浪人生である川端強が、その凡庸で弱そうな外見とは裏腹に、どんな達人が挑んでも勝つことができない強さを誇っているけど、なんでそんなに強いのかは分からない。
川端強はなぜ強いのか?
そんな謎に迫っていくというちょっと変わった漫画作品となります。
タイトルとあらすじから、いわゆる俺TUEEE系の作品なのかと思いましたが、どうやらそういうわけでもないようです。
俺TUEEE系の作品であれば物語は川端強の視点で語られるのだと思いますが、どちらかといえば川端強に挑んでいく達人側が語り部になっていて、川端強とはいったい何なのだということを探っていくところが面白い漫画だと思いました。
俺TUEEE系の作品って陳腐な感じがするから否定派の人も多いジャンルであるということを差し引いても個人的には嫌いではありません。
とはいえ最近はさすがに食傷気味ではあったのですが、『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』は俺TUEEE系作品の系譜ではありつつもちょっと毛色の違った個性があってとても興味深かったです。
ちなみに、僕はこの作品をAmazoneでKindle版のみ販売しているのを見かけて、ちょっと気になって購入してみたのですが・・
書店でも見かけませんし、ひょっとして電子書籍でしか売っていないのでしょうか?
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本作の概要
星崎愛之助は空手の大学日本一の達人です。
しかし、日本一になってもライバルである夢丘照が出場していなかったこともあってどこか不満そうな様子。
どういうことなのかと訪ねた夢丘照は、格闘家としての体形は見る影もないアイドルオタクになってしまっていました。
いったい夢丘照に何があったのか?
出てきた名前は川端強。
夢丘照ほどのかつての達人をしてバケモノと言わしめる川端強とはいったいどのような男なのか?
これは星崎愛之助がその秘密に迫っていく物語となります。
本作の見所
川端強への挑戦
川端強は一見すると凡庸で格闘技が強い人間には見えませんが、その実どんな強者が挑んでも攻撃を当てることすらできない強者です。
星崎愛之助は、ライバルである夢丘照から空手を辞めさせてしまうほど強いバケモノだと聞いて川端強の元を訪れますが、最初はたばかられたとでも思ったのかあっさりと引き下がります。
まあ、仮にも全日本チャンプが相手をするような相手には見えませんからね。
しかし、万引きしたチンピラ相手を圧倒する姿を目撃してその評価を改めます。
「俺と、立ち合ってくれないか?」
自身のライバルである夢丘照を圧倒したらしいことがどうやら本当らしいと見て取って、川端強との手合わせを願う星崎愛之助。
そして、それに対して川端強はいくつかの条件を提示します。
手合わせは一度きりとし、一目のつかない場所で行うこと。
そして、たとえ川端強に負けたとしてもその結果を口外しないこと。
どうやら星崎愛之助に限らず挑戦してきた者には同じことを言っているようですが、あまり目立ちたくなさそうな様子が見て取れますね。
ともあれ、どうやら中国拳法と思わしき独特の動き。
そして躊躇の無い効率的な急所攻撃を駆使する川端強に星崎愛之助は敗れ去ってしまいました。
川端強への接近
川端強が、一度は立ち合いにそこまで難色を示さずに応じるのは、その後自分に使づきづらくなるように条件を突きつける目的があったのだと思われますが、星崎愛之助はむしろ川端強の強さの秘密を知りたい好奇心で、より近付こうという気持ちが強くなったようです。
インターネットで調べようとしますが、ありきたりな名前過ぎて何も情報が出てきません。
だからといって川端強のバイト先のコンビニで土下座までするとは・・
強くはあってもどうやら常識人っぽい感じの川端強は根負けして、自身が講師をしている太極拳の教室にであれば来ても良いとパンフレットを星崎愛之助に渡します。
そこはお年寄りが健康のために集う教室なのですが、それでも川端強の強さの秘密が知りたい星崎愛之助はそれに1ヵ月も付き合います。
その辺、彼のライバルであった夢丘照とは違って根気強いというか、あきらめが悪い感じですね。
こういう、基本的にはその他大勢と同じなのに執着心の違うキャラクターが徐々に距離を詰めていく感じは嫌いではありません。
まさかの美大生
川端強はその強さと裏腹に美大を目指す浪人生ですが、実は星崎愛之助も現役の美大生だったようで高いデッサン能力を誇っています。
一方の川端強は美大を目指している割には・・ってお察しの画力。
「あの・・もし僕でよろしければお力になりましょうか?」
興味がある相手だからということもあるのでしょうけど、そんな川端強にデッサンを教える約束をすることで距離を詰める星崎愛之助。
今巻での星崎愛之助と川端強の絡みはここまでですが、今後のこの2人の関係というか、どのように川端強の強さに星崎愛之助が迫っていくのか。
そして川端強の絵はうまくなるのか。
その辺が気になるところですね。
川端強の強さの秘密
さて、そんな風にかなり川端強に近づいてきた星崎愛之助ですが、そんな星崎愛之助の前に川端強のバイト仲間である陳神美が立ちはだかります。
「私は、中国武術省の諜報員ネ」
空手大学日本一の星崎愛之助には及ばないようですが、彼女もまた相当強い上に訳ありっぽい感じです。
川端強の良きバイト仲間という風でしたが、どうやら謎めいた川端強の強さを探るために派遣された諜報員らしいですね。
馬鹿らしい設定ですけど、そういうのを真面目にやっている感じも僕は好きです。
「ツヨシはたった一人で大国を動かすほどの強さを持っているってことネ」
言い方は大げさですが、実際に中国の国の組織を動かしているのは事実です。
しかし、陳神美から語られる今までの調査結果からは川端強の強さの秘密が分かるどころかむしろ深まった感じです。
星崎愛之助も通っている太極拳教室・・というなの健康体操だけで、川端強が強くなったらしいことが判明して、星崎愛之助からしたら「なんであれだけで?」となっても仕方の無いところですね。
そんな川端強の強さの底を知るために中国でも指折りの達人が、川端強の元に派遣されてくる・・というところで今巻は終わったのですが、この達人たち相手に川端強がどう立ち回るのか。そして陳神美がどのような立ち位置のキャラクターになっていくのかが気になります。
陳神美(チンシェンメイ)が可愛い
本筋とは関係ありませんが、陳神美って何とも可愛らしいキャラクターだと思います。
今巻ラストの諜報員だと明らかになった時は驚きましたが、モブキャラではなくメインキャラクターになりそうな感じになってきたので嬉しい限りですね。
『盛り盛りチンさん』と称したオマケで陳神美のカラーイラスト3枚が付いていますが、本当に可愛いと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
物語構成は独特だけど特にややこしい感じがするわけではなく、深く考えずに単純に楽しめる良作だったと思います。
格闘シーンの絵も格好良いし、基本的には男臭い感じの漫画だけどヒロインの陳神美は可愛いし・・
そこまで続きが気になる系の物語ではないと思うんですけど、それなのに無性に続きを読みたくなる感じがする漫画でした。
早く2巻出ないかな~