今読んでも面白い!ゼロ年代のライトノベル10選 尖った時代の名作たちを紹介します!
2016年には『戯言シリーズ』がアニメ化され・・
2017年には『キノの旅』がアニメ化され・・
2018年には『とある魔術の禁書目録』がアニメ化され・・
2019年には『ブギーポップは笑わない』のアニメ化が発表されています。
これらは、いずれもゼロ年代に流行ったライトノベルとなります。
いやはや、ゼロ年代のライトノベルに限らず、昔の作品が近年になってアニメ化されることがかなり増えてきましたね。
ゼロ年代にライトノベルを好きになって、ライトノベルを読み漁るようになった僕としては嬉しい限りのことです。
今回は、そんなゼロ年代のライトノベルの中から、僕が自信を持ってオススメしたいと思う作品を紹介したいと思います!
※ゼロ年代のライトノベルを知らない人に向けて、新鮮に感じられる情報を発信したいという趣旨なので、『とある魔術の禁書目録』のように今でも完全に現役の作品は対象外にしたり、一応完結はしていないけどほとんど休眠状態にある作品は対象にしたりと、その辺は僕のさじ加減ですがご了承ください。
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- 1.戯言シリーズ(2002~2005)
- 2.半分の月がのぼる空(2003~2006)
- 3.文学少女シリーズ(2006~2011)
- 4.ゼロの使い魔(2004~2017)
- 5.学校の階段(2006~2009)
- 6.R.O.D(2000~)
- 7.ぷいぷい!(2006~2010)
- 8.とらドラ!(2006~2009)
- 9.GOSICK(2003~2011)
- 10.ねくろま。(2007~2009)
1.戯言シリーズ(2002~2005)
今でも八面六臂の活躍をしている西尾維新先生のデビュー作であるクビキリサイクルから始まるシリーズとなります。
デビュー直後のこの頃も、本シリーズ以外にも『世界シリーズ』『りすかシリーズ』『ダブルダウン勘繰郎』『ニンギョウがニンギョウ』、それに本作のスピンオフである『人間シリーズ』など、数々の作品を発表されていました。
そして今でも『物語シリーズ』『掟上今日子の備忘録シリーズ』『美少年シリーズ』『悲鳴伝シリーズ』など、様々なシリーズを書かれていますが、やはり『戯言シリーズ』こそが最も西尾維新先生の尖った部分の出ている代表作だと思います。
クビキリサイクルは主人公の「ぼく」こと「いーちゃん」が語り部のミステリー作品なのですが、徐々にミステリー要素は薄くなっていき、変わり種のバトル漫画的な作品になっていきますが、作者が書きたいこと自由に書いているからなのか、面白さは右肩上がりに上がっていきます。
作者も公言している通り『ジョジョの奇妙な冒険』の影響を受けているということがわかるような内容となっています。
面白いのは、主人公の「いーちゃん」はあくまでも語り部で戦闘力は皆無・・なのに誰よりも局面に影響を与えていて、しかし本人は意外と無自覚だということですね。
西尾維新先生の他の作品だと『めだかボックス』の球磨川禊や『悲鳴伝シリーズ』の空々空あたりに近い性質のキャラクターですが、たぶん「いーちゃん」が断トツで尖ったキャラクターになっています。
というか、西尾維新先生の作品のキャラクターの代表格と言えば『物語シリーズ』の阿良々木暦を思い浮かべる人が多いと思いますが、個人的には完全に「いーちゃん」の方が圧倒的に象徴的だと思っています。
また、「いーちゃん」は阿良々木暦なみに名言製造機でもありますね。
どちらかと言えば負の感情をまき散らすようなことを発言することが多いですが、意外とコミカルな発言もあって面白いです。
『物語シリーズ』とは随分と雰囲気の違う作品ではありますが、『物語シリーズ』の会話劇の原点的な要素がある作品でもあるので、『物語シリーズ』の会話劇が好きな人にもオススメできます!
「すいません、キムチ丼大盛り、ご飯抜きで」
これはGoogle検索で「キムチ丼大盛」と入力したら「ご飯抜き」が予測で出てくるくらいに有名なセリフですね。
2巻の『クビシメロマンチスト』で出てきたセリフですが、この『クビシメロマンチスト』は「いーちゃん」の主人公らしからぬ個性が確立される作品であり、シリーズ中でも屈指の名作なので特にオススメ度が高いです。
また、何がとは言いませんが1巻の『クビキリサイクル』は最初の1行目、それから2巻の『クビシメロマンチスト』の表紙には、とある仕掛けがあります。読んだ人だけが気付けるものなので、気になる人はぜひ読んでみてください。
ちなみに、当時映像化は無理だろうということが半ばネタのように語られていた作品なので、2016年にOVA化された時にはかなり驚きました。
・・そういえば本作ヒロインの玖渚友のCVは悠木碧さんですが、悠木碧さんは『キノの旅』『ブギーポップは笑わない』でもメインを張っています。ゼロ年代のライトノベルが原作のアニメと相性が良いのでしょうか?
2.半分の月がのぼる空(2003~2006)
ライトノベルとしては珍しい、純粋に人の死というものをテーマにしている作品です。
良くも悪くもライトノベルらしくないため、作者の橋本紡先生が周囲の反対を押し切って刊行したというエピソードがあるらしいのですが、それが結果的には大正解でかなりのヒット作となりました。
ストーリー的には、肝炎で入院することになった主人公の戎崎裕一が、不治の病で近い将来に死を待つヒロインの秋庭里香と出会い、次第に惹かれ合っていくという恋物語になります。
テーマ的にも内容的にも読む人を選ぶ作品ではあるのかもしれません。
僕が昔、本作品をオススメした友人は「何かツライ・・」と好きにはなれなかったようで、無条件で『半分の月がのぼる空』が名作だと思っていた僕はショックを受けたものです。
しかし、『半分の月がのぼる空』ほど心温まるライトノベルを僕は他に知りません。
人の死という重いテーマを聞いただけなら、読者を悲哀で泣かせようとする系の小説なのかと思う人が多いかもしれません。
いやいや、実はそうではありません。
人の死というテーマを通して、「幸せとは何なのか?」を考えさせる、元気を与えてくれる小説こそが『半分の月がのぼる空』なのだと思います。
だから、どうか食わず嫌いだけはせずに少しでも興味を持ったのなら、一度は読んでみて欲しいです。
ちなみに、少し話題が逸れますが、近年のヒット作『君の膵臓をたべたい』の原作者である住野よる先生が、最初は電撃小説大賞に応募していた作家なのだと知った時、ひょっとして『半分の月がのぼる空』の影響を受けているのかなぁと思いました。
テーマ的にも似ているので、少なくとも『君の膵臓をたべたい』が好きな人になら合っている作品だと思いますよ!
個人的には、ライトノベルを読み漁るようになったキッカケなので非常に思い入れの強い作品となります。
3.文学少女シリーズ(2006~2011)
物語を食べちゃうくらい深く愛している“文学少女”
あらすじに書いてたのか、帯に書いていたのか、その辺の記憶は曖昧ですが、本作が発売したばかりの頃にこの「物語を食べる」というフレーズが嫌に印象に残り、気になって購入したことを覚えています。
本好きキャラが好きだったことも理由かもしれません。(笑)
野村美月先生のことは本作で知ったのですが、本作に限らず「人間関係の書き方」「心理描写の書き方」「ツンデレ女子の書き方」が抜群に上手な作家さんだと思います。
主人公は繊細でデリケートな性格をした井上心葉。「井上ミウ」のペンネームで「14歳の謎の美少女覆面作家」として売り出されて経歴を持つ作家さんです。
野村美月先生の書く男性キャラには井上心葉のように繊細でわかりやすい「弱さ」を持っているキャラクターが多いからなのか、非常に好感を持てるキャラクターが多いように感じます。
本作の場合、メインヒロインの天野遠子よりも井上心葉の方が好きなくらいです。物語の中心にいるのがいつも井上心葉だったからなのかもしれませんが。
とにかく、可愛い女の子にスポットがあたりがちなライトノベルですが、みんなが面白いと思う名作って実は男キャラが魅力的なことが多い気がします。そして本作もその特徴に当てはまると僕は思っています。
そして、サブヒロインで至高のツンデレキャラである琴吹ななせ。
ツンデレのキャラクターってどこか記号的に見えてどこか不自然に感じてしまうことが多いのですが、琴吹ななせの場合はあくまでも恋愛下手な普通の女の子のような印象があり、記号的な不自然さはありません。
結果的に琴吹ななせのキャラクターが、ツンデレと言い表すことができるようなものになっていたという感じ。
僕の場合、ツンデレと呼ばれるキャラクターを好きになることは少ないのですが、琴吹ななせはマジで魅力的なキャラクターだと思っていて本当に大好きですね。
同作者の『ヒカルが地球にいたころシリーズ』を読んだことがある人なら、式部帆夏の原点的なキャラクターだと言うと、どんなキャラクターなのか伝わるでしょうか?
そして、作品の性質上ライトノベルとしてはかなり登場人物が多いですが、その誰もが個性的に書かれているのが凄いです。
ストーリー的にはライトノベルにしてはあまりライトではないので好き嫌いは分かれやすい作品かもしれませんが、キャラクター達が非常に魅力的なのであまり気にならないはずです。
個人的には、歴代のライトノベルの中でも屈指の名作の内の一つだと思っています。
4.ゼロの使い魔(2004~2017)
MF文庫Jを象徴する作品です。
完結目前で作者のヤマグチノボル先生がガンで亡くなられたこともあり未完の名作になるかと思いきや、生前に完成していたプロットをもとに続編が刊行されたことは記憶に新しいですよね。
ツンデレのルイズ、巨乳のシエスタ、無口なタバサなど、記号的なテンプレ萌えキャラが数多く登場する作品になっています。
そして、それだけならどちらかと言えば僕のあまり好きではないタイプの作品と言えるのですが、作り込まれた世界観の中で記号的な雰囲気のあったキャラクター達が個性的に成長していくような作品になっている所が魅力的で好きになりました。
ハリーポッターが世界的に流行した少し後に刊行された作品ということもあり、魔法学園が舞台だという所も惹かれた要素の一つです。
また、最近はやりの異世界転移して特殊な能力を身に付ける系の話の先駆け的な作品でもあり、主人公の平賀才人はヒロインのルイズに召喚されることで異世界であるハルケギニアに行くことになり、ガンダールヴという武器を自在に操る力を手に入れます。
今のよくある異世界転移ものと違うのは、平賀才人の力は絶対的なチート能力とは違うという点、異世界転移したことを完全には受け入れていなくて元の世界に帰ることを目的としている点でしょうか。
異世界に召喚されてしまった平賀才人の心理状態が、今の異世界転移ものの主人公よりも自然で共感しやすいものになっていると思います。
壮大に広がっていく物語の中で、人間的に個性を増して成長していくキャラクター達が、本当に魅力的な作品です。
5.学校の階段(2006~2009)
「怪談」じゃなくて「階段」ですよ?
階段レースという学校の校舎内を駆け回る競争をする部活動、「階段部」と主人公の神庭幸宏が出会うところから始まる青春ライトノベルです。
階段レースという創作スポーツを取り扱っていること以外は、スポ根漫画的な内容の作品となります。
階段レースに細かいルールが設定されていたり、ショットレース・スタンダード・ラリーのように複数の種類が存在したり、キャラクターごとに得意技や特性があったりなど、意外と奥が深く楽しめる内容となっています。
階段部のメンバーが「静かなる弾丸」「黒翼の天使」「天才ラインメーカー」といったその走り方の特性にあった二つ名を持っているのも面白いですね。
まあ、正直校舎内を走り回るなんて迷惑行為以外のなにものでもなく、実際作中でもそのことが問題になったり、階段部のメンバーたちも実は自覚しているのですが、階段レースの面白さに取り付かれてやめられない。
そういうある意味馬鹿らしい部分もある作品ではあるのですが、階段部の部員たちが馬鹿らしいことを馬鹿らしいということに気付きながらも真剣に取り組むところがこの作品の最大の魅力です。
しかし、テーマがテーマなだけに相当好き嫌いがわかれる作品であることは間違いありません。こういう馬鹿らしい部分を好意的に受け止めることができるかどうかが好き嫌いがわかれるポイントでしょうか?
いずれにしろ、僕は本作を隠れた名作だと思っています。
ハマる人にはとことんハマる系の作品だと思うので、興味があったら一度手に取ってみて下さい。
6.R.O.D(2000~)
『文学少女シリーズ』『半分の月がのぼる空』と、気付いたら本好きヒロインの登場する作品を多く紹介していますが、本好きヒロインの元祖。代名詞といえば本作の主人公である読子・リードマンではないでしょうか?
自宅の雑居ビルは本だらけで、「神保町のヌシ」と呼ばれるほどのビブリオマニアです。
本作のタイトルのR.O.Dは「Read Or Die(読むか死ぬか)」という意味で、死ぬほど本が好きだということがここに表れています。
闘う手段も「紙使い」の能力で紙で使うというもの。徹底的に本好きな個性が現れていますね。
本作における読子の年齢は25歳(ちなみにTVシリーズ版では30歳)と、他のライトノベルの主人公・ヒロインと比べるとかなり大人ですが、2005年度の「このライトノベルがすごい」の人気ヒロインランキングでは、他の若いキャラクターを押しのけて2位にランクインしているほどの人気キャラクターです。
ちなみに、大人な読子とバランスを取っているのか、もう一人のヒロイン。菫川ねねねは女子高生作家です。
最初は小説家とそのファンの在り方をテーマにしたような小説だったのですが、読子は実のところ米国のエージェントです。そういう立場にある人が主人公だからなのか、物語はどんどん壮大になっていき・・今に至ります。
はい。本作はまだ完結しておらず、ほとんど休眠状態にあります。
しかし、コミック版、アニメ版、OVA版とそれぞれ違った物語が展開されており、広く壮大な世界観が作られているゼロ年代を代表する作品であることは間違いないので、ここで紹介することにしました。
7.ぷいぷい!(2006~2010)
ここまで紹介した作品に比べると知名度は落ちるかもしれませんが個人的にはかなり好きな作品です。
主人公の新木陣が、考古学者の両親から送られてきたランプを磨いたら、学園の人気者であるお嬢様。座堂シエラがメイド服姿で現れたという変わった始まり方をする小説ですね。
ヒロインがランプの魔神(末裔)だというライトノベルは他には無いのではないでしょうか?
また、新木陣は当時のライトノベルの主人公にしては珍しく、非常に頭が良いキャラクターになっています。楔形文字が好きで、食事が大好きという極端なキャラ付けがされていますが、何故かそれが無性に好きでした。
このように一応ストーリーものの作品ですが、ライトノベルらしくキャラクターの個性が魅力的な作品になっています。僕は普段どちらかと言えばキャラクターよりストーリーを重視したい派なのですが、この作品の場合はストーリーは二の次にキャラクターの魅力にやられました。
『ぷいぷい!』のキャラクターは本当に個性的で、ハマる人はとことんハマるのではないでしょうか?
ちなみに、本作のイラストを描かれているイラストレーターさんは今では『ゆるゆり』で有名になったなもり先生です。
駆け出しの頃のなもり先生の絵にも注目です!
8.とらドラ!(2006~2009)
今のライトノベルにおけるラブコメ作品の元祖的な位置付けの作品だと思います。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』や『弱キャラ友崎くん』『俺を好きなのはお前だけかよ』あたりは『とらドラ!』の影響を少なからず受けているのではないかと推測します。
まあ、個人の勝手な推測ではありますが、これらの作品が好きな人に合っている作品であることは間違いありません。
内容的には身体的な特徴にコンプレックスを持った主人公の高須竜児とヒロインの逢坂大河が、互いの恋愛のために協力し合うという話です。
高須竜児と逢坂大河は両方とも身体的な特徴のせいで周囲から誤解されてしまっているキャラクターであるという点で共通点があります。そして、このような特性のキャラクターがある時期から増え始めたような感じるのですが、恐らくそれも『とらドラ!』の影響なのではないかと推測しています。
現代ラノベのラブコメが好きな人でチェックしていない人は少ないとは思いますが、もしまだ未読なら原点はこの作品です。是非読んでおきましょう!
9.GOSICK(2003~2011)
富士見ミステリー文庫という今はもう無いレーベルから出ていたミステリー作品です。
作者はライトノベル作家の出世頭。直木賞作家の桜庭一樹先生ですね。男性のような名前ですが女性の方です。
一応ライトノベル作品ではありますが、ミステリー作品らしい雰囲気が濃厚で好きな人にはたまらないと思いますよ。
ヒロインのヴィクトリカは、いわゆる安楽椅子タイプの探偵役で、ワトソン役で主人公の久城一弥がヴィクトリカのために走り回るというのが基本的な話の流れですね。ここで言うヴィクトリカのためにとは、何も事件を解決するためのことだけではなく、文字通りの意味もあるという点がライトノベル的ですね。
あと、挿絵のヴィクトリカも最高に可愛いのでそちらにも注目です。挿絵担当は『異国迷路のクロワーゼ』の武田日向先生となります。
ちなみに、本作のコミカライズ版はかなりの高クオリティです。
ライトノベルのコミカライズ版としてはトップクラスの出来の漫画だと思うので、興味があればそちらもチェックしてみて下さい。
10.ねくろま。(2007~2009)
『僕は友達がすくない』『妹さいればいい。』で有名な平坂読先生の作品ですね。
平坂読先生は『僕は友達がすくない』で一気に知名度を上げましたが、それ以前の作品も面白いんだということを言いたくて取り上げました。(他の作品も面白いですが、一番きれいに終わっているのがこの『ねくろま。』となります)
『ねくろま。』に限らず、平坂読先生の作品はいずれもエログロ方面で表現が過剰な部分があります。
僕は本来、そういう必要もなく過剰に表現がエロいライトノベルは好きではないのですが、本作の場合はそういう苦手な部分を補って余りあるほど面白かったです。
完璧超人として書かれている主人公ソリスが女の子に囲まれてウハウハしているハーレムものなら、本作のことを好きにならなかったかもしれません。
しかし、実は主人公のソリスはヒロインのマシロに対して一途で、しかも完璧超人かと思いきや実は努力家で、自分の無力に焦燥感を覚えたりしている。
そういう主人公ソリスの性格が、一応ハーレムものであるにも関わらず作品全体をシリアスなものにしていて、そのバランス感覚が優れているからこそ本作を面白いと感じるのだと思います。
ちなみに、平作読先生の独特なフォントの使い方やルビの振り方はこの頃から健在なので、ファンの方は安心してください。