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『本好きの下剋上第四部(5)』貴族院の自称図書委員が2年生になった最新巻の感想(ネタバレ注意)

 

今年の後半は本当に本好きの下剋上づくしでした。

このライトノベルがすごい2019でも、単行本・ノベルス部門で2年連続の1位となり絶好調の本作ですが、その最後の締めくくりがの第四部・貴族院の自称図書委員の5巻となります。

第四部ももう5巻とは早いものですね。

今まで、本作品の主人公であるローゼマインは髪も服装も青色のイメージが強かったのですが、 今巻の表紙は赤色ベースでいつもと少々雰囲気が違います。

青いロングヘアーに赤いドレスが良く映えていて、とっても可愛らしいですね。

個人的には今までの表紙で一番好きかもしれません。

そして、その表紙にはローゼマインの姉のトゥーリと母親のエーファの姿が!

下町メンバーが表紙を飾るのは久しぶりな気がしますが、実際に今巻は下町の平民たちの活躍が目立つ巻となります。

どんどん下町の平民たちとは気軽に接することができない状況になってくるローゼマインですが、お互いに尊重し合っている姿がとっても尊いです 。

ローゼマインとは大きな壁を挟んでいて、だけど一番近しい人たちの活躍に注目ですね!

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本作の概要

前巻の領主会議からエーレンフェストに嫁ぐことになったアウレーリアと、ローゼマインの兄であるランプレヒトの結婚式。アウレーリアは謎めいた女性ですが、最後の短編を読んだら一気に親しみがわきました。

下町のイタリアンレストランに行ったり、染色コンペを開催したり、グレッシェルに印刷業を広めようとしたり、下町の平民たちとの関りも今巻では濃厚です。

特に染色コンペで、ローゼマインの専属を勝ち取らんとするエーファの奮闘は必見ですね。

また、図書委員の腕章も完成し、ローゼマインの本好きも今まで以上に発揮されています。

それに結婚できない男。焦るダームエルと、そのダームエルに密かに恋心を抱くフィリーネにも注目です!

盛沢山すぎて概要があまり纏まりませんが、それだけ濃厚な1冊だということです。

ぜひ、ご一読あれ!

本作の見所

下町の平民たちを尊重するローゼマイン

今巻では平民の出番が多かったからか、ローゼマインの他の貴族に対する牽制するような言動が目立ちました。

ローゼマインに直接的な要求を出すフリーダを注意しようとするハルトムートを諫めたり、ことあるごとに平民を尊重しなければ発展は望めないということを問い続けます。

特に、グレッシェルでのブリュンヒルデとのやり取りが印象的でした。

ローゼマインの側仕えとして比較的良い貴族のイメージがあるブリュンヒルデですが、生まれ育った環境なのでしょう。

「ローゼマイン様は何故それほど平民を庇うのでしょう? 平民であるグーテンベルクからの報告よりも、貴族である文官の報告が重用されるべきではありませんか」

平民を無能扱いする気配のあったギーベ・グレッシェルを牽制して平民を庇うローゼマインを不審に思ったブリュンヒルデのセリフです。

実際問題、貴族と平民では求められる役割が違うはずで、ローゼマインの理想通りに共に生きるということが適さない場面もあるはずなので、必ずしもブリュンヒルデの思想が間違っているとも言えないのかもしれませんが、少なくとも印刷業を広げることに関してはローゼマインの考えが正しそうです。

というか、そもそもローゼマインが印刷業を広げるにあたり平民の役割が重要になるように仕向けた説もありますしね。

そんなブリュンヒルデに、貴族の教示を傷付けてしまうことを警戒しつつも1つ1つ丁寧に説明するローゼマインと、最初は納得できない様子だったけど最後には納得してローゼマインに礼を言ったブリュンヒルデのやり取りが非常に興味深かったです。

相変わらず本好きなローゼマイン

接触を禁じられているはずのアウレーリアに地元のアーレンスバッハの図書室の蔵書数を聞き出そうとしたり、アンゲリカの真似で自分の行いを正当化してみたり、フェルディナンドを始めとした保護者達に内緒で夢のような図書館の建造を計画してみたり・・

その辺は全くブレません。

「そうですね。図書館へ攻撃を仕掛けた時点で、死を覚悟しておくべきですもの」

「君は図書館や本が関わると途端に凶悪になるな」

凶悪な魔法陣の検証をしているフェルディナンドにまで凶悪なヤツ扱いをされてしまっているローゼマイン。この2人のやり取りはいつも面白いですね。

それに、図書館の腕章や貴族院の本棚など、ローゼマインの望むものが次々と揃っていき、貴族院2年目は益々の暴走が期待されます。

ちなみに、今巻では本だけではなく魚料理に対しても暴走の機会を窺っていたローゼマイン。(笑)

問題の魚料理にはまだありつけていないので、その辺に対する暴走も近いうちに見られるかもしれませんね。

ダームエルとフィリーネの恋模様

「ダームエルには可愛い恋人がみつからなかったとかその程度である」

本編を読んでいる時にはスルッと読み流してしまっていましたが、何気に酷いモノローグですね。(笑)

巻末漫画でネタにされているのを見るまで気付きませんでしたけど。

貴族的な様々な事情が絡み合ってブリギッテとは結婚できなかったダームエルですが、その恋人探しはどうやらエルヴィーラにも難しいようです。

しかし、どうやらそんなダームエルに恋心を抱く少女が存在したようです。

今巻の最後のフィリーネが主人公の短編でそれが明らかになりました。

ついでに本編でダームエルがリーゼレータになじられたとボヤいていたことの背景も明らかになります。(笑)

「ダームエルは、わたくしが成人するまで、恋人も、結婚も、できなければ良いのです!」

確かに年齢差的にダームエルがフィリーネの恋心に気付くのは難しい所もあるのですが、さすがに鈍すぎますね。

それにしても、いつも恋人ができないと悩んでいるダームエルの周りにこそ、実は恋愛的なエピソードが発生しがちなのが面白いです。(笑)

染色コンペの裏側

ローゼマインの・・というよりマインの家族としてはトゥーリやギュンターに比べてマインに接する機会が極端に少なくなってしまったエーファが、染色コンペでローゼマインの専属を目指して奮闘します。

マインの家族が主人公になった短編はかなり久しぶりな気がしますが、とても面白かったです。

エーファの奮闘は周りの仕事仲間からしたら意外すぎるものだったようですが、娘のために頑張る母は強しといったところでしょうか?

結局、ローゼマインはエーファの作った布を最後の最後では判別することはできなかったのですが、エーファが本当に専属になる日は近いのかもしれません。

ちなみに、このエピソードが描かれた短編に挿入されたイラストのカミルの顔立ちがマインそっくりなのが興味深いですね。

ヒルデブラントの勘違い

今巻で初登場した王族の子供・ヒルデブラント

本編で各領の領主候補生が挨拶していくエピソード中には特に何も思わなかったのですが、どうやらヒルデブラントは自分と同じくらい小さいローゼマインに興味を持ちつつも、ローゼマインのことを妹のシャルロッテであると勘違いしてしまったようです。

これが物語にどう影響するのか、そもそもヒルデブラントの役割がイマイチまだわからないので推測もできませんが、ローゼマイン・・というより、ローゼマインだと認識されてしまったシャルロッテの方が何だか大変な目に合うようなエピソードが推測されますね。

総括

いかがでしたでしょうか?

本好きの下剋上は1巻で1つのエピソードをキリ良く完結させているような小説ではなく、ただただずっと長い物語を本にするために区切っているような印象の小説です。

何というか、ローゼマインというキャラクターの人生を、劇的な部分もそうでない部分も順番に辿っているような感じですね。

悪く言えば淡々としすぎていて単調に感じられる部分もあるのですが、それよりもジワジワと常に先が気になるような魅力の方が大きいのが本好きの下剋上の特徴です。

だからこそ、最新巻を読み終えた後はすぐに続きが読みたくて仕方がなくなるのですが、今巻の終わりはまた一段と続きが気になる終わり方だったと思います。

ヒルデブラントの勘違いが今後どう作用するのかという部分を筆頭に、エーファはローゼマインの専属になれるのかとか、フィリーネとダームエルの恋模様とか、気になる所が盛りだくさんですね!

連続刊行はストップで、続きは来年3月発売予定とのこと。

十分に早い刊行ペースですが、今から待ち遠しいです!

ちなみに、本記事のような書評レビューって、好きな作品とレビューしやすい作品って必ずしも一致しないのですが、本好きの下剋上は大好きであるにも関わらずレビュー記事を書くのは滅茶苦茶大変だったりします。

実は、本作品が今までレビュー記事を書いたことのある作品の中で一番大変でした。

前述したように淡々としたところのある物語だからというのもありますが、本編でローゼマインが、あれをやったりこれをやったり、気が付いたらぶっ倒れたりと、あまりにも目まぐるしく活動してくるので、なかなか見所が捉えきれないのがその原因だったりします。

作中でもローゼマインの周囲の人達は振り回されていますが、こうやってレビューを書きたい僕もそこそこ振り回されてしまっていました。(笑)

その証拠に、ローゼマインが登場しない前巻(短編集)のレビュー記事は非常に書きやすかったですしね。(笑)

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