『弱キャラ友崎くん(2)』人生を上手に楽しむライトノベルの漫画版の感想
主人公で弱キャラの友崎文也が、パーフェクトヒロインで強キャラの日南葵から、人生というゲームを上手に楽しむための指南を受ける。
そんな高校生の日常を描くライトノベルのコミカライズ版です。
ジャンル的には『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』『僕は友達が少ない』のような、純粋な恋愛青春ものとラブコメの間くらいの作品といった感じです。
SF的な要素は何もない、いたって普通の高校生の恋愛青春物語なんだけど、ちょっと変化球気味なアプローチのライトノベルの系譜ですね。
『弱キャラ友崎くん』の場合は、少年漫画のような師弟関係の構図を恋愛青春ものに持ち込んでいるところに面白さがある作品となります。
二次元キャラとしての魅力は十分なのに、「中高校生の時こんな奴いたなぁ~」と思わせるほどリアリティがある登場人物たち。だからこそ友崎君の日南さんのちょっと変わった師弟関係が生える名作ですね。
個人的に2010年代で5本指には入ると思っているライトノベル。
そんな『弱キャラ友崎くん』はコミカライズ版でも面白いです!
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本作の概要
原作小説第1巻の後半部分のお話。
パーフェクトヒロイン日南さんの出す課題も徐々に難易度が上がっていきますが、やる時はやる弱キャラの友崎君は失敗しながらも挑戦していきます。
本好き少女の菊池風香とデートすること。
いけてる系女子の泉優鈴と会話すること。
どちらも失敗はしてしまいますが、幸いにも友崎君は意外と自分の考えをしっかりと持っているタイプの人間です。
日南さんの出す課題の意味を自分なりにかみ砕いて少しずつ成長していきます。
うろたえつつもトライ&エラーを繰り返すことをそれなりに楽しんでそうなあたり、この辺はさすがゲーマーっぽいですね。(笑)
本作の見所
話し方のトーン
友崎君の洋服を買いに行った帰り、日南さん押しのハンバーグ屋で友崎君の喋り方について議論します。
ICレコーダー越しに聞いた自分の声が思っていた以上にぼそぼそと喋りすぎだということに気付いた友崎君に、自分で気付けたのならそれは治ると日南さんは言います。
なぜ友崎君の喋り方がぼそぼそ聞こえるのか?
「「言葉に頼りすぎている」からよ」
表情、ジェスチャー、抑揚を会話の中で使えていないのだと日南さんは言います。
これは正直言って目から鱗ですね。
言葉には意味があるから、究極的には言葉を変えればトーンを意識する必要はないのかもしれませんが、それだけだとどうしても淡々とした感じになってしまうということでしょうか?
日南さんの「あいうえお」以外を使ってはいけないという課題も面白いですね。
表情、ジェスチャー、抑揚だけで、人間はどこまで相手に自分の意思を伝えることができるのか?
むしろ普段は伝わらないものまで伝わってしまうかもしれませんね。(笑)
脈ありの菊池さん
本好き少女の菊池風香。
ハンバーグ屋でアルバイトしていた菊池さんは友崎君と日南さんに気付きます。
そこで何かに気付いた日南さんの一言に友崎君は作画が壊れるほどに驚きます。
「あの子があなたの最初の攻略ヒロインよ」
菊池さんを高校二年の間に彼女を作るという目標の対象にするのだと日南さんは言います。
友崎君が関わった女子の中で一番脈ありだからというわかりやすい理由なのですが、その根拠が凄いですね。日南さんの観察眼が半端じゃないです。
友崎君が泉優鈴にティッシュを借りようとしていた時、横で聞いていただけなのにレスポンスが早かったことと、ハンバーグ屋で声を掛けた時に日南さんより先に友崎君の名前を呼んだことがその根拠なのですが、確かに女子なら女子の名前を呼ぶのが自然な場面で友崎君の名前を呼んだということの意味を考えると、脈ありなのかと思ってしまいますよね。
「図書室でずっと目にしていてなんとなく意識していた男の子がいた」
「意を決してその子に話しかけてみたら」
「思いのほか会話が弾んで楽しかった」
「しかも最後にはその作品に出てくる秘密の挨拶を交わすこともできた」
なぜ菊池さんが脈ありなのかに友崎君自身も気付いたようですが、一部誤解が混じっているので罪悪感を覚えているようです。
だからと言って逃げる方が卑怯だと日南さんは言いますが、僕は友崎君の誠実さには好感が持てるのですが、この辺の感じ方はひとそれぞれなんでしょうかね?
ちなみに、菊池さんは本作品に登場するヒロインの中で現時点では一番好きだったりします。
友崎君が秘密の挨拶を返した時の表情とか素晴らしいですね!
話しかけるということ
菊池さんが攻略対象だと言ったのに今度は泉さんに「1日2回以上話しかけること」を日南さんは課題として提示します。
友崎君はまた不誠実なのではないかと心配になっていますが、いやいや流石に話しかけるだけで不誠実はないですよね?
まあ、日南さんが仲の良い女の子が多い方が余裕ができるという考え方を先に示しているので不誠実に感じても仕方ない部分もありますが。
「『ある女の子の好感度が上がると別の女の子の好感度も上がる』のよ」
恋愛ゲームとは違うのだと日南さんは言いますが、本当のところはどうなんでしょうね?
個人的には、攻略対象の女の子と別の女の子の上下に相関関係があるのはむしろゲーム的だと思うのですが。
確か『ときめきメモリアル』なんかだと、ある女の子の好感度が下がると別の女の子の好感度も下がるので、少なくとも下がる方に関しては相関関係があります。
アタファミの特訓
なかなか泉さんに話しかける課題がうまくいかない友崎君ですが、人生は戦闘に勝った時ではなく負けた時にこそ経験値が入るという日南さんの言葉を胸に挑戦を続けます。
しかし、何度も繰り返していたら失敗とは別の結果が得られることもあります。
ひょんなことから中村の気を引きたい泉さんの家でアタファミ(友崎君が得意なゲーム)を泉さんに教えることになりました。
その中で友崎君は自分の考え方を泉さんに話すことができ、成功なのかは微妙なものの失敗以外の結果を得ることができました。
課題としては失敗だけど
日南さんから菊池さんを誘うように映画の試写会のチケットを渡された友崎君。
しかし、菊池さんには好きな作者の本を実は読んだことが無いということを告白し、デートに誘うにしても菊池さんがまだ引きずっているかもしれない「好きな作家を共有している」という気持ちが無くなってフラットな状態になってからだと断念します。
課題としては失敗だけど、僕も日南さんの指示より友崎君の選択の方が良いと思います。
といっても、人生をゲームに例えるなら楽しみ方も人それぞれということなので、日南さんの考え方も友崎君の選択もどっちも間違いではないのかもしれませんね。
中村の再戦
泉さんとのアタファミの特訓がキッカケで、クラスのボスの中村修二が友崎君にアタファミ対戦の再戦を申し込んできました。
全国1位の友崎君に、何度負けても止めない中村にクラスメイト達も辟易としだし、クラスの女王の紺野エリカも文句を言いますが・・
かなり酷い暴言に友崎君がキレます。
「てめえで努力もしねえで人の努力を笑う人間がッ!」
「いっっっちばん!嫌いなんだよ!」
友崎君にとっては中村も苦手な相手のはずですが、結果的にその中村を庇う形になっていますね。
こういう所、友崎君の長所の一つですね。
僕は苦手な人間や嫌いな人間に対しては、悪い所ばかり目について良い所を見ないようにしてしまう悪癖があるので、こういうちゃんと人の良い所を客観的に見れる人は尊敬に値します。
とはいえ、クラスの弱キャラ友崎君がそんなことを言った所で、それだけでは場は収まりません。
ここは日南さんの出番・・
かと思いきや、泉さんが震えながらも友崎君のフォローをしてくれました。
いけてる系女子だけど強キャラでは無さそうな泉さんが、友崎君とのアタファミ特訓中にした話から成長しようとしているということでしょうか?
他人の成長にも関わることができた友崎君は、少しずつ弱キャラから脱却しつつあるようですね。
総括
同時発売の原作『弱キャラ友崎くん Lv.6.5』も、もちろん読む予定。
シリーズ初の短編集。
短編集はそればかり出版されていると辟易してしまうこともありますが、僕は基本的には短編やサイドストーリーが好きなので今から楽しみです!
(2018/10/25追記)
同時発売の『弱キャラ友崎くん Lv.6.5』はこちらです。