劇場版『名探偵コナン 紺青の拳』古参キャラばかりなのに真新しい映画の感想(ネタバレ注意)
楽しみにしていた『名探偵コナン 紺青の拳』がついに公開されたので、さっそく観てきました!
そう考えると久しぶりではあるのですが、怪盗キッドの登場は劇場版『名探偵コナン』において定番になりすぎて、怪盗キッドというキャラクターの魅力を考慮しても少々食傷気味であるとは感じていたところがあります。
実際、『業火の向日葵』は名作揃いの劇場版『名探偵コナン』においても少しばかり新鮮味に欠ける作品だと感じてしまっていました。
しかし、それを差し引いても今回の『名探偵コナン 紺青の拳』には今までにない新鮮さがありそうな気がしていて、ずっと前から楽しみにしていたものです。
なんといっても、実は灰原哀と初登場時期はそんなに変わらない京極真が初めて劇場版『名探偵コナン』でメインを張るらしいということ。
それに加えて京極真とは鈴木園子に好かれているという共通点がある怪盗キッドという組み合わせ。
それに舞台が海外という真新しさや、劇場版『名探偵コナン』に皆勤賞でありながら『紺碧の棺』くらいしかメインに据えられたことのない鈴木園子がメインに据えられるであろうこと。
考えてみれば意外と古参のキャラクターばかりなのに、新鮮さを感じる組み合わせってのが面白くて、ずっと楽しみにしていたわけです。
いや、京極真と怪盗キッドの組み合わせは一度原作でも描かれていて、そのエピソードは凄く新鮮で面白かったですし、また読みたい組み合わせだとは思っていたのですが、まさかの劇場版ですよ!
これは観ないわけにはいかない。
というわけでさっそく観てきた感想を記していきたいと思います。
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本作の概要
シンガポールで行われる空手大会に出場する京極真を応援するために、鈴木園子はもちろん、友人の毛利蘭や保護者として毛利小五郎も付いていくことになりました。
それに同行したいコナン君ですが、彼の持っているパスポートは工藤新一のものなので、コナンのままではついて行くことはできません。
灰原哀に体を元に戻す薬をねだったものの断られたコナン君は悲しいお留守番になるはずでした。
しかし、そこで毛利蘭に変装した怪盗キッドに連れ去られたコナン君は、いつの間にかシンガポールに不法入国してしまうことになります。
日本に帰るためには怪盗キッドの協力が不可欠。
そこにいないはずのコナン君は現地の少年アーサー・ヒライを名乗り、工藤新一に変装した怪盗キッド、そして毛利蘭たちと行動をともにするようになります。
そして、そこでブルーサファイア『紺青の拳』をめぐる陰謀めいた事件に巻き込まれていくことになります。
本作の見所
初の海外が舞台の劇場版
前述したとおり『名探偵コナン』の主人公である江戸川コナンは海外には基本的に行けません。
体が小さくなったことを周囲に隠している身なので当然戸籍なんてものはなく、なぜか小学校には通えているものの(阿笠博士すげ~)、さすがにパスポートは取得できないようです。
だから原作も100巻近く続いて物語も壮大になっていっているものの、基本的に舞台は日本国内におさまっています。
一応海外が舞台になったこともありますが、過去のエピソードか、灰原哀の薬を利用した非常に無理をした海外遠征でした。
劇場版では『ベイカー街の亡霊』で過去のロンドンが舞台になったりもしましたが、それはいわゆる仮想現実の世界だったので、厳密には海外ではありません。
なので今作『名探偵コナン 紺青の拳』でシンガポールが舞台になったのが、初めて海外が舞台になった劇場版作品となります。
あのマリーナベイサンズが名探偵コナンの中に描かれる日がくるとは思いませんでしたね。
しかし、だからなのかオープニング段階から今までの劇場版『名探偵コナン』とは違った雰囲気を感じ取れたような気がします。
登場人物がみんな英語を喋っていて字幕が付いていたのもその一因かもしれません。
なんとなくですがルパン三世のTVスペシャル版っぽい気がするとも思いました。
今回の犯人役の一人でシンガポールの名探偵レオン・ローも、どことなくルパン三世に出てきそうなキャラクターですしね。
そういうわけで『名探偵コナン 紺青の拳』は、舞台一つとっても真新しさがある映画だったと思います。
劇場版初メインの京極真
京極真は原作22巻から登場する古参のキャラクターです。
まあ普通の漫画で22巻初登場と言えば古参でもなんでもない訳ですが、100巻近い歴史のある『名探偵コナン』においては古参といって差し支えないでしょう。
超メイン級の灰原哀ですら初登場は18巻ですしね。
そんな古参キャラクターである京極真ですが、劇場版でメインを張るのは初めてとなります。
魅力的なキャラクターだとは思っていたので意外でしたが、考えてみれば登場頻度も少なく、黒の組織と関係があるわけでもなく、怪盗キッドのような探偵の敵役としての特性もない、ヒロインの友人の彼氏でしかないわけですからね。
その上、頭脳派ミステリーである『名探偵コナン』では探偵役にもなり得ませんし、武闘派なところはヒロイン(蘭)とキャラ被りしてしまっていますし・・
扱い的には割と不遇だったような気がします。
しかし、近年では「世界最強の防犯システム」として怪盗キッドと対峙したり、活躍が目立つようになってきました。
頭脳派な探偵や怪盗が、純粋な武力にたじたじしているのを見ることの面白さに多くの人が気付いてきたのかもしれませんね。(笑)
そして、『名探偵コナン 紺青の拳』ではかつてないほどの活躍を見せてくれます。
京極真どちらかといえば控えめに見えて実は自信に満ちたキャラクターだと思っているのですが、園子を守るために暴漢と戦っている間に、園子がひき逃げの被害に遭ってしまい自分を責めたり、レオン・ローの策略で拳を封印することになったり、珍しくナイーブな一面を見せてくれます。
それをそこまで周囲には見せていないのはさすがですが。
そして、その京極真の封印された拳を怪盗キッドが解き放つって構図が良かったですね。
こういういざって時には助け合うこともあるのってが好敵手って感じがしますね。
京極真側は別に怪盗キッドを助けたりはしていませんけど、その辺の役割は今回はコナン君にありましたからね。
そして、京極真が活躍するシーンでは「これ名探偵コナンだよね?」って思っちゃうくらい別作品化するのがまた面白い。(笑)
怪盗キッドの手によって拳を解放された京極真は、邪王炎殺拳でも繰り出そうかってくらいオーラを放っていて、まるでジャンプの格闘アニメのキャラクターのようでした。
それでいて、園子と撮ったプリクラを絆創膏の裏側に隠していたり、らしいようならしくないような初々しい一面も見せてくれていて、女性ファンあたりの受けが良さそうだと思いました。
というか、京極真は男が格好良いと思う男というか、そういうキャラクターなので僕も普通に好きなんですよね。
過去最大級の大活躍の怪盗キッド
怪盗キッドが登場する劇場版『名探偵コナン』は多数存在しますが、初登場が話題となった『世紀末の魔術師』、原作の『まじっく快斗』的なコミカルな怪盗キッドの一面が見られる『天空の難破船』あたりは名作だと思っていますが、正直なところ怪盗キッドのネームバリューに頼っている印象の作品も多いです。
もちろん、それらの作品も面白いのですが、怪盗キッドである必要が本当にあったのかという風にも思ってしまうんですよね。
怪盗キッドは好きなキャラクターではあるので、やっぱり怪盗キッドが登場すると聞くとワクワクはするのですが、食傷気味になっていたというのが正直なところです。
しかし、この今作『名探偵コナン 紺青の拳』はかつてないほどに怪盗キッドに寄り添った作品になっていると感じました。
例えば、コナンと服部のように常に2人で行動して謎解きするようなパターンを、コナンと怪盗キッドでやっているわけです。
さすがにこんな作品は今までになかった。
京極真に相対されて絶体絶命の怪盗キッドをコナンが助けるという珍しいシーンも見られますが、コナンが怪盗キッドに協力せざるを得ない状況をうまく自然に作り出せていることが今作の最大のポイントであることは間違いありませんね。
しかも、要は怪盗キッドがコナン側にいるわけです。
今までも成り行きで協力関係になることはありましたが、ここまで明確な協力関係にあることは初めてのはず。
だから怪盗キッド視点の動きがいつも以上に表現されていて、そういう部分も面白かったですね。
また、『天空の難破船』で見られたコミカルな部分も見せてくれます。
「もぉ、照れないでよ。私たち、付き合ってるんでしょ?」
プールで蘭に大胆な行動を取られてドギマギしつつも「そうなのか」と驚いて見せたり・・
「ここでトレーニングをしないかと誘われたんですが、まさかあなたとお手合わせできるとは」
「いやいやいや、こっちはしたくないんだが・・」
京極真を相手にしている時は少々ビビり気味だったりと、こういう気障になり切れないところがあるから怪盗キッドって好きなんですよね。
アーサー・ヒライ
京極真や怪盗キッドがあまりにも大活躍していて、『名探偵コナン 紺青の拳』ではいつもより控えめなコナン君。
留守番しているはずのコナン君は蘭に名前を聞かれて咄嗟に・・
「アーサー! 僕の名前はアーサー・ヒライだ!」
うわ~デジャブ~
アーサーは当然アーサー・コナン・ドイル、ヒライは江戸川乱歩の本名である平井太郎からきているわけで、まさに江戸川コナンの分身って感じの名前ですね。
それでいてシンガポールの現地人っぽさがあるのが面白いですね。
今回どちらかといえば怪盗キッドの協力者として活動していて、謎解きも怪盗キッドと協力してって感じでしたが、こういう感じもまた新鮮で良かったと思います。
それにしても、一応怪盗キッドは犯罪者でありコナン君の敵なわけですが、好敵手でありながら協力関係にあって、怪盗キッドに対する態度が例えば服部に対するソレと同じような感じなのが熱いですね。
ちなみに、レイチェル殺しの罪を着せられ逃げてる途中に手負いになってしまった怪盗キッド、あれって変装完全に解いて黒羽快斗に戻ってましたよね?
工藤新一に似てるから一瞬「アレ?」ってなったけど。
コナン君相手に黒羽快斗の顔を見せちゃって良かったんでしょうか?
荒事担当親子
『名探偵コナン 紺青の拳』は本当に京極真と怪盗キッドのための映画って感じなので、他のキャラクターの活躍の場は控えめです。コナン君ですら控えめでしたからね。
毛利小五郎も例外ではありません。
「おっ、眠りの小五郎発動か!?」ってシーンもありましたが、ただ眠っているだけの小五郎でした。(笑)
今回の犯人であり、シンガポールの名探偵であるレオン・ローをして「わからん。この男のことだけは・・」と苦笑いです。
それに、毛利小五郎が酔っ払っていなくてレイチェルの話を早々に聞いていたら、レイチェルは殺されなかった説もあるような気がしますし・・
「あひゃひゃ~、あ~、嫌ん! やめて! エッチ!」
これまた酔っ払っている時に、証拠品を探しているコナン君と怪盗キッドに体中をまさぐられて半裸に。
いや、毛利小五郎もだけどコナン君も怪盗キッドも何やってんだか。(笑)
毛利蘭も今回はヒロインの座を園子に取られちゃっている上に、普段は荒事で一番頼りになるキャラクターであるものの今回その辺は京極真の役割なので影が薄め。
そんな訳で『名探偵コナン 紺青の拳』において毛利親子の扱いは若干不遇ですが、最後にはシンガポールの現代の海賊たちとの乱闘では大活躍していました。
鈴木園子のメインヒロイン感
京極真と怪盗キッドといえば、鈴木園子が熱をあげている相手という点で共通していますが、大方の予想通り今作『名探偵コナン 紺青の拳』では鈴木園子も普段以上に出番が多いです。
というか、今回だけは間違いなく鈴木園子こそがメインヒロインでした。
『名探偵コナン』の三大ヒロインと言えば、やっぱり毛利蘭、灰原哀、遠山和葉の三人で、悲しいことに鈴木園子がヒロインとして名前が挙がることは通常ありません。
ですが『名探偵コナン 紺青の拳』では、遠山和葉は登場なし、灰原哀は顔見せ程度。
そして毛利蘭すら一歩引いた位置にいました。
いつもの「ら~ん!」って感じの映画じゃないんですよ。
明らかに鈴木園子を可愛らしく、そして京極真を格好良く演出しようというのが分かるんですよね。
そして、クライマックスすらヒロイン役は園子にありました。
園子は怖くて泣いていましたが(笑)、園子を背負って戦う京極真は格好良かったですし、マリーナベイサンズの船のとこが落っこちて水しぶきの雨に濡れた園子は、正直めっちゃ可愛かったです。
というかいつものカチューシャで前髪をあげた髪型より、あんな感じに髪をおろした方が断然・・いや十倍くらい可愛いんじゃ・・
毛利蘭の役割は、ちょっと喧嘩してたけどどうやら仲直りしたらしい園子たちを「ラブラブね~」と微笑ましく見守っているポジションになっていました。
いつもメインヒロインやってるんだから、たまにはこういうのもアリですよね。
それにしても、まさかマリーナベイサンズの船のとこを『名探偵コナン』で落っことしにかかるとは思いませんでした。(笑)
バレていた怪盗キッド
蘭ちゃん、実は一緒にいる工藤新一が本物ではないと最初から疑っていました。
プールで大胆に恋人的なことをしたりもしていたので、最初から確信していたわけではないと思いますが、一番最初の工藤新一の毛利小五郎に対する呼びかけの時から疑っていたようです。
「アンタが新一じゃないことくらい、最初からわかってたんだから! 新一は、お父さんのことを”おっちゃん”なんて呼んだりしないのよ!」
「えっ!? だっていつもあいつ・・」
はい。コナン君は確かに毛利小五郎のことをいつも”おっちゃん”と呼んでいます。
しかし・・
「そういや蘭の前では”おっちゃん”って言ったことねーな・・」
怪盗キッドの変装は完璧でした。もともと顔立ちも似ているので、工藤新一に変装するのは慣れたものという感じです。
ですがさすがに工藤新一が毛利蘭に対して話す時に毛利小五郎をなんて呼んでいたのかまでは知らなかったようです。
というか、僕も観ていて蘭が指摘するまで気づきませんでしたが、確かに工藤新一は「おめーの父さん」とか「毛利探偵」とか、そんな風に毛利小五郎のことを呼んでいましたね。
そういう失敗も愛嬌があって面白いです。(笑)
実はメイン級の登場人物が少ない
さて、見所満載の『名探偵コナン 紺青の拳』ですが、これだけ面白いにも関わらず実はメイン級の登場人物。いわゆるいつものメンバーの極端に少ない作品だと思います。
阿笠博士はコナン君が日本にいる内ということでオープニング前にダジャレクイズを出題していただけですし、少年探偵団に至ってはコナンが灰原哀と電話している隣で騒いでいただけです。
シンガポールが舞台ということもあるのでしょうが、目暮警部を始めとした刑事たちは誰一人登場しませんし、怪盗キッドが登場するのに中森警部も登場しない。
江戸川コナン、毛利蘭、毛利小五郎、鈴木園子、京極真、怪盗キッド。
考えてみればメイン級はこの6人だけなんですよね。
劇場版作品だと、オールスターとまではいかなくても色々なキャラクターに活躍してほしいという思いはあるものの、『名探偵コナン 紺青の拳』を観て思ったことは一つ。
登場人物を絞っているからこそ掘り下げられるものもあるのだということ。
本作品では、京極真と怪盗キッドについてはかつてなく掘り下げられていたと思いますが、登場人物の少なさがそれを可能にしていたのかもしれませんね。
それに登場人物が少ないといっても、それで迫力やお得感に欠けているかといえば全くそんなことも無かったわけで・・
正直、今まで劇場版『名探偵コナン』で屈指の名作は個人的に『ベイカー街の亡霊』、次いで『から紅の恋歌』だと思っていましたが、『名探偵コナン 紺青の拳』でハッキリ一番が更新されました。
ちないに、登場人物といえばタンカーが突っ込むかどうかって場面の時に一瞬だけ寺井黄之助は映っていましたよね?
一瞬だったので見間違いかとも思ったのですが、どうなんでしょうか?
小説版について
『名探偵コナン』に限らず、例えば『ドラえもん』やオリジナルアニメなんかでも近年はアニメ映画が公開されると同時、場合によっては公開前に小説版が発売していることが珍しくありませんね。
『名探偵コナン 紺青の拳』においても、子供向けレーベルのみですが小説版が公開と同時発売しています。
僕はもともとエンタメ作品の媒体としては小説が一番好きだったこともあって、こういったケースで映画版を観た後に小説版を読むのは定番になっています。
映画版では表現されていない行間が表現されていたりするのが常なので、違った味わいがあって面白いと思いますよ!
総括
いかがでしたでしょうか?
今作は色々な意味で新鮮に感じられる作品で、平成最後に相応しい劇場版『名探偵コナン』だったと思います。
20年以上の歴史のある『名探偵コナン』という作品には、数多くのキーパーソンとなるキャラクターが登場します。
そういうキャラクターをメインに据えることで得られる真新しさは、考えてみればある意味当然のことなのかもしれません。
『名探偵コナン 紺青の拳』の凄いところは、そういう新しいキャラクターを一切登場させずに、古参メンバーだけでここまで新鮮で真新しい作品になっている所だと思います。
また、演出的なところでも真新しさがありました。
定番のダジャレクイズがオープニングの前に行われたり(笑)、コナンと怪盗キッドが互いの情報を持ち寄って推理するシーンの演出も素晴らしかったと思います。
そして、エンディング後に来年の劇場版『名探偵コナン』を仄めかす定番のアレ。
「届け、遥か彼方」という赤井秀一の声が聴けましたが、来年の劇場版『名探偵コナン』は赤井秀一メインのエピソードって感じなのでしょうか?
それはまた楽しみなものですね!