『フルーツバスケット(12)』全編アニメ化記念に全巻レビューします
新学期が始まる12巻の感想です。(前巻のレビューはこちら)
前巻で十二支が全員出揃い、巻数的にも物語的にも転換点となるタイミングという感じがします。
新学期、そして新生徒会の始まり。
十二支の呪いを解きたいと秘密の行動を取りだす本田透。
夾と楽羅の関係性。
そんなところに変化が見られました。
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本作の概要
長かった夏休みの草摩の別荘での出来事が終わりました。
新学期で新生徒会も始動し、由紀は大変そうです。
そして本田透はみんなに内緒で草摩籍真に会いに行き、十二支の呪いを解きたい旨を打ち明けます。
表には出さないもののいずれ幽閉されることになることを憂いている夾と、そんな夾との辻褄合わせの恋を終わらせる楽羅にも注目ですね。
本作の見所
始まる新学期と新生徒会
学校が舞台になっている漫画は数多いですが、新学期の始まりは物語的にも転換点という感じがしてしまいますよね。
『フルーツバスケット』においては、この夏休みの終わりがまさに転換点だという気がします。
学校生活という意味では、ついに新生徒会が始動する由紀の変化が大きいですね。
生徒会関係者は以前から登場していましたが、いよいよという感じです。
「久しぶりィ、ゆんゆん!! 夏休みどうだった!? 満喫しちゃった!? オレなんかもう満喫しまくり!! デートしまくり!! 夏万歳!! 一生夏でもいいし!! ってーかなんで学校始まっちゃうかね!!」
明らかに由紀の苦手な綾女と近いテンションのキャラクターである副会長の真鍋翔を始め、一癖も二癖もありそうな上に由紀と相性の悪そうなキャラクターたちと、由紀の掛け合いが面白いです。
さすがに知り合ったばかりの他人ということもあり、綾女に対するほど容赦のないツッコミを入れることもありませんが、そのもどかしさが良い味を出してます。
それに、実は何だかんだ言いつつも綾女に対しては兄弟として遠慮ないやり取りができる関係だったんだなぁとも思わされますね。
「俺は・・会長として至らない処もたくさんあると思うけど、努力は怠りません。・・だから皆の、皆の力を貸して下さい・・」
しかし、由紀の宣言に対して屈託なく了承する真鍋翔にハッとした表情を見せる由紀。
前途多難っぽいですが、何とかうまくやっていきそうな雰囲気は感じられますね。
本田透の秘密の行動
前巻ですべての十二支に出会い、慊人とも会話をし、十二支の呪いに触れた本田透。
特に高校卒業したら夾が幽閉されてしまうことを知ったことが原因でしょうか?
本田透は、十二支の呪いを解きたいと思うようになりました。
十二支の呪いというのは、もちろん動物に変身することもあるでしょうけど、草摩家の独特な人間関係のことも指しているのだと思います。
だからなのか、そういう人間関係の機微に対してどうやら一番一般的な感覚を持っていそうな夾の義父である草摩籍真に相談に行きます。
赤の他人。居候の身である本田透にしては、なかなかに踏み込んだ行動ですが、それを自覚しているからか、これは内緒の行動となります。
実際、本田透の行動を知った依鈴には「余計なこと」と言われてしまっていますね。
「諦めめあせん・・。何か・・何かできることがあると・・思いたいです」
十二支の絆という呪いを知った本田透の思い。
それにしても、本田透というキャラクター性を考えたら思い切った大胆な行動だと思いつつも、「思いたい」というのが奥ゆかしい本田透っぽいセリフだとも感じられますね。
夾と楽羅
楽羅といえば夾が大好きで、つれなくされたら狂暴化するようなキャラクターとなりますが、何で楽羅が夾に対してあんなにも強い執着を示していたのかが明らかになります。
そして、その理由は夾と楽羅の子供時代にあります。
実はあんなに夾が大好きな楽羅ですが、夾に対して大きな負い目がありました。
それは十二支である自分よりも憐れで疎まれている夾(猫)を見て、安心して見下してしまっていたこと。無理やり猫の本当の姿を見てしまったこと。
そんな自分を楽羅は汚いと思ってしまったようです。
そして・・
「「化け物の夾君」を受け入れられる「キレイな自分」を夢見た」
なるほどと思う行動理由ですね。
そして、この夾が本田透に対して好意を抱いていることを察したのであろうタイミングでそのことをカミングアウトしたのも頷けます。
楽羅は、キレイな自分を夢見て夾に近づいた行動自体が汚いってことに既に気付いているようです。
そう考えれば、6巻で夾の本当の姿を見た本田透と自分との対比だったしたに違いありません。
本田透は汚い考えなんて無しに、ただ怖いと思いつつも夾を受け入れました。
まさに楽羅が夢見た姿そのものなのですね。
だからこそ最後に夾に懺悔して、本田透に夾を譲ったということなのかもしれませんね。
紫呉の三者面談
高校生でも三者面談ってあるんですね。
僕は中学生の頃はあったけど、高校生の時は無かったような気がします。
なんというか、中高校生くらいの時期って親が学校にいるのってフワフワした気持ちになって落ち着かないから、ぶっちゃけ進路相談どころじゃないっていうね。(笑)
ともあれ、両親ともに亡くした本田透の三者面談には紫呉が赴くことになりました。
本田透は確か知らないはずですが、まさか担任の白木繭子先生が紫呉の元カノだなんて思わないですよね。
それにワザワザはとりのスーツを着ていくあたり、完全に嫌がらせも入っていますね。
こういう別に実害があるわけではないんだけど、何か嫌な気分になる嫌がらせが紫呉っぽいですよね。
「それ!! それだよ繭ちゃん!! ナイス嫌な顔!!」
もしくは、紫呉はSっ気があるように見えて、実は嫌がらせして蔑ろにされて喜ぶドMなのかもしれません。
というか行動原理が小学生男子のソレですね。(笑)
本田透も2人から漂ってくる普通ではない空気を感じ取って居心地が悪そうです。
普通の三者面談の居心地の悪さとは違った居心地の悪さを感じているってのが面白いと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
今後は、今なおその行動理由が掴み切れない依鈴や、物語の根幹となる慊人が最も気になるところだと思いますが、個人的にはかなり好きなキャラクターである倉伎真知が所属する新生徒会のメンバーの動向にも注目したいと思います。
倉伎真知、今巻ではまだ目立ったところはないですからね。(次巻のレビューはこちら)