あるいは 迷った 困った

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『8畳カーニバル(3)』人が変わる瞬間って心に刺さりますね(ネタバレ含む感想)

 

長く愛される作品というのも良いですが、8畳カーニバルのように短いものの綺麗にまとまっている作品も素敵ですよね。

お腹いっぱいで感無量な完結も悪くありませんが、少し食べ足りないくらいの八分目くらいの完結も、もっと読みたいと思わされるくらいでちょうど良いと感じることがあります。

8畳カーニバルは動画投稿における「踊ってみた」のジャンルをテーマにした作品ですが、それを骨子として主人公でぼっちだった花澤緑多の世界に色が付いて行く物語にもなっていて、そこが一貫している上に結末までキッチリ描かれきっているところが良い漫画だと思わされる理由なのではないかと思います。

動画投稿から派生した「踊ってみた」の踊り手になった主人公が、考えてみれば最初の1本の動画を投稿するところをクライマックスに据えているのはある意味矛盾しているようなのですが、そこが面白さでもあると感じました。

最初の1本の動画は、本来的には文字通り「始まり」であるわけです。

踊り手の最初の一歩ですよね。

しかし、8畳カーニバルを花澤緑多の世界に色が付いて行く物語と捉えた場合にこの最初の1本の動画が、花澤緑多の世界が色付いていく結末と言えるわけです。

この始まりがクライマックスで、クライマックスが最初の一歩という終わり方が、僕はとても良かったと思いました。

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本作の概要

動画投稿を一切しないまま踊り手として有名になっていく空気圧ヒナタこと花澤緑多ですが、いよいよ最初の動画投稿に挑んでいきます。

しかし、最初から中々に風変わりな道をよちよち歩き始めた空気圧ヒナタの初動画が普通なわけもなく、いきなり引退を賭けた勝負が初動画になることになります。

色付いたり再び無色になりそうになったりを繰り返す空気圧ヒナタですが、はたしてその初動画がどのようなものになるのかに注目です。

本作の見所

初投稿動画で勝負

初めての動画投稿が、トップクラスの踊り手の弟子と引退を賭けて再生数を競う勝負になるとは空気圧ヒナタの動画投稿者人生は波乱に満ちすぎですよね。(笑)

なので一本の動画も投稿していないのに知名度だけ上がっていくんだかって感じですけど、こういうちょっとした個性的な行動がキッカケになって成り上がっていくのは近代的な感じがして個人的には嫌いではありません。

勝手なイメージですけど、今では超有名人になっているような配信者でも普通最初はひっそりと動画投稿を開始していくような気がするので・・いや、774のように最初から野心を持って始めるような人もいるかもしれませんけど、少なくとも花澤緑多はそのようなタイプではありませんし、そんなキャラクターである花澤緑田が空気圧ヒナタとして変わっていく姿は見ていて面白いものがあります。

隣のクラスの有名人

インターネット上の有名人は、人にもよるでしょうけど普段は普通の一般人だったりするものです。なので知らないだけで身近な誰かがひょっとしたらどこかの界隈では有名人だったりすることも珍しくなくなってきているのではないでしょうか?

しかし、これも人にもよるでしょうけどインターネット上の活動はあまり公にはしたくないと考える人も多いものです。前述した通り、普段は普通の一般人なわけですし公にしすぎて何かしらのトラブルがないとも言い切れませんしね。

かく言う僕も、本ブログの活動を知らせているのは相当親しいことに加えて趣味が近いところのある人くらいだったりします。

中には瑞野しおのように、立場的に公にできない理由があるケースもあるでしょうけど、それ以上にあまり公にするものではないという空気があるというのも的を得た事実だと思います。

「あのさ! 私隣のクラスの佐倉って者だけど。やっぱアンタたち2人だよね!? 「空気圧ヒナタ」と「すまいる☆」って!!」

だから、もしかしたらと思ってもこんな風に突然声を掛けるのは避けた方が無難かもしれませんね。(笑)

少なくとも隣のクラスの教室に乗り込んできて大声で問いかけるものではありません。

とはいえ、ずっとぼっちで存在感の無い空気だった花澤緑多にとっては、空気圧ヒナタとしての活動で自身に色が付いていくことを実感できる体験だったのではないでしょうか?

最初で最後の1本

6時間踊り続ける生放送で有名になったとはいえ、肝心の踊りは素人のド初心者であることは事実。プロ並みのクオリティの踊りに動画を準備してくる774の動画のチラ見せバージョンを見て自身の動画のしょぼさに落ち込む花澤緑多ですが、生放送でどうしたら良いかと視聴者に問いかけるという面白い行動に出ます。

ぼっちで悩みを打ち明ける人がいないと悩んでからの行動ですが、こういう繋がりを作ったのはニコニコ動画の最大の功績ですよね。

ともあれ、ここで花澤緑多は「最初で最後の1本のつもりで動画を撮り直す」という結論にたどり着きます。

まあ、展開としてはとても良い動画をとって僅差で勝利するという分かりやすいものではありますが、単に良い動画を撮ったというわけではなく、無色だった少年が色付いていくという結果が刺さるような内容になっているのが素敵ですね。

8畳カーニバルのタイトル通りに8畳一間でしょぼく踊り始めるオープニング。そして、そこから学校の生徒たちを巻き込んだ壮大な動画へと変わっていくわけなのですが、これが人を纏めるのが得意な人が先陣を切って作り上げた動画だというのであればまだしも、ぼっちで誰からも相手にされなかった少年が頑張った結果だと聞けばそりゃあ感動しますよね。

総括

いかがでしたでしょうか?

「踊ってみた」に限らず動画投稿者や配信者にとって最初の一歩目は、言わずもがな最初の動画を投稿することだと思います。

1本の動画も投稿しないままに有名になった空気圧ヒナタは相当なレアケースだと思いますが、そんな空気圧ヒナタによる1本目の動画投稿を以って8畳カーニバルという作品は完結となります。

正直もっと長く楽しみたいと感じる作品ではあったので僅か3巻での完結は寂しくもあったのですけど、最初の一歩が集大成、無色だった主人公が色を得た瞬間という感じで綺麗な終わりではあったと思います。

作中にも表れた表現ですが、最初で最後の1本の動画のつもりで空気圧ヒナタが撮った動画は文字通り8畳カーニバルという作品においては最初で最後の1本になったわけですが、空気圧ヒナタにとっては恐らく最後のつもりの最初になったのではいでしょうか?

短いながら見所も多いとても素敵な作品で、こんな作品をまた読んでみたいというのが8畳カーニバルを読んだ率直な感想です。