『味噌汁でカンパイ!(9)』母親ごっこが夫婦ごっこにエスカレート(ネタバレ含む感想)
相変わらず微笑ましい味噌汁ラブコメ。
『味噌汁でカンパイ!』の最新9巻の感想です。味噌汁に特化したグルメ漫画であり、中学生らしい恋愛なのか一歩手前なのかの境界が曖昧な微笑ましいラブコメ漫画でもある本作品ですが、まさか後一冊で二桁巻に届くまで続くとは思いませんでしたね。
これはテーマにしている味噌汁にネタの尽きない奥深さがあるということの証拠なのかもしれませんが、単純にキャラクターとストーリーが素晴らしいというのもあると思います。
長く続くとマンネリ化しやすい日常系漫画の一面もあるにも関わらず、読んでいて飽きることはありません。
大抵の場合、ラブコメしているキャラクターに対してはどこかツッコミどころがあったり、時にはイラっとするような描写があったり、安易なサービスシーンや極端な恥じらいがあったり、良作と思えるような作品であっても何かしら引っかかりを覚える部分の一か所や二か所はあるものです。
これは恐らく僕だけが感じていることではなく、「このラブコメ凄く面白いけど、これだけは余計な気がする」みたいなことは誰しも感じがことがあるのではないでしょうか?
まあ、あれだけ非日常的な要素を詰め込むのが常である一方でファンタジーなどに比べて現実に近いというのが特徴のラブコメ作品において、誰もが全てに納得する作品というのは相当難しいものなのかもしれませんね。
しかし、この『味噌汁でカンパイ!』という作品において少なくとも僕は、他の作品には感じられるそういったマイナスファクターが一切ないように思えるのです。
特筆した面白さを感じられる作品でこそありませんが、読んでいてホッとする何かが『味噌汁でカンパイ!』という作品にはあるような気がするのです。
考えてみれば、ストーリーも人間関係もそれほど進展していないにもかかわらずストーリーもキャラクターも素晴らしいと感じることのできる作品は本当に稀有なのではないでしょうか?
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本作の概要
八重と善一郎の二人は中学三年生になりましたが、それでなのか二人の関係性も進展させようという意思の感じられるエピソードが増えてきたような気がします。
恋愛の終わりを経験した大人なクラスメイトに当たり前が当たり前ではなくなることを実感させられたり、夫婦ごっこを通じて母親と夫婦の境界の曖昧さを意識させられたり、そして八重の姉の結婚。その相手が善一郎と同じく母親を早くに亡くした男性というのも、二人に自分自身を重ねる要素になっていきそうな気がします。
本作の見所
夫婦ごっこ
「・・ようやく気づいたか・・。「母親ごっこ」と「夫婦ごっこ」の、境目のあいまいさを・・!!」
両親が忙しくて運動会に来れない 八重の従兄弟である葵のために、八重と善一郎の二人が葵の両親がわりに応援に行くというエピソードですね。
いつもは母親ごっこに忙しい八重は、今回は夫婦ごっこに勤しむというわけです。
「夫婦ってどーすればそれっぽくなるのかな?」
相変わらず随分な天然で男をドキッとさせることを言う八重ですが、基本真面目なだけで、しかし自分の言動の恥ずかしさに気付いた時の恥じらいが可愛らしすぎます。
手づくり弁当。
朝、起こしてもらう。
朝ごはんを一緒に。
ネクタイをしめてあげる。
ひざまくら。
雑誌で調べた新婚夫婦がやりたいことの全てが既に善一郎と経験済であることに気付いた瞬間の八重が、とても八重らしい感じがして良かったと思います。
寝込んでる八重が可愛い
体調が悪くて八重が来なかった朝、来なかったことではなく体調不良に気付けなかった自分に苛立っている善一郎が可愛らしいです。実のところ鈍そうな八重は気付いたのに自分は気付けないというのは複雑でしょうし、善一郎にしてみれば自分の方が八重のことを見ている意識がありそうですからね。
それにしても、体調不良で寝込んでいる姿を指して可愛いと評するのは些か不謹慎であることは否めませんが、いつもとは違う姿かつ弱っている姿、そして無防備でもある姿の異性を見て何も感じない人は正直いないのではないかと思います。
また、元気な女の子という属性のキャラクターである八重には普段、可愛らしさはあっても色っぽさには欠けるところがあると思いますが、このエピソードでの八重は相当色っぽく見えますね。
いつもはツインテールにしている髪をおろしているので子供っぽさが控えめになっているからかもしれませんけど。
「熱いからふーふーしてっ」
善一郎に甘える八重がまた色っぽく見えました。
「ね、熱でぼーっとしてたからね、あたし! いろいろ忘れてっ!」
体調が悪いと精神状態も変わりがちですけど、別に自覚が無くなるわけではないので後から照れる八重も可愛らしいですね。
しかし・・
「いつもより子供っぽかったもんな~」
興味深いのは善一郎のモノローグ。どうやら寝込んでいる八重を見ていつもより子供っぽいと感じていたようです。
色っぽいとか大人っぽいと感じた僕の感想とは逆なんですが、もしかすると母親と夫婦の境目と同じく、子供っぽさと大人っぽさの境目も実は凄く曖昧なものなのかもしれませんね。
二見涼子先生再び
主人公である善一郎とヒロインの八重がとても可愛らしいこともあって全体的に可愛らしい雰囲気を纏っている『味噌汁でカンパイ!』の中にあって少々珍しいクール系キャラクターの二見涼子先生が再登場します。
「私は電柱・・。電柱を支えるただの電柱・・!!」
相変わらずクールに見えて中身は少女漫画脳のオタクで、初々しすぎる善一郎と八重に当てられて尊くなってしまっているのが面白いです。(笑)
以前は自家製味噌づくりのエピソードに登場しましたが、その自家製味噌が完成する前にカビが生えそうになって八重が慌て落ち込むエピソードでの再登場となりましたが、この分だと自家製味噌が絡むエピソードには今後も登場してきそうですね。
個人的な予想ですが、自家製味噌って味噌をテーマにした作品においてもある意味特別な感じがしますし、もしかしたらこの自家製味噌の完成あたりが作品の完成(つまり完結)に繋がっていくのではないかと思っています。
最近は善一郎と八重の関係に変化を与えようという動きが強くなってきているような気もしますし、そこまで的外れではないのではないでしょうか?
母親がいない
八重の姉・七緒の住む北海道に遊びに来た善一郎と八重ですが、そこで善一郎と同じく幼い頃に母親を亡くした男性・九馬に出会います。
母親を幼い頃に亡くしたと九馬と、八重の姉の七緒。
そして善一郎と八重。
何となく符号的に感じさせられる関係性を近くに見た善一郎と八重がどのような反応をしていくのか、どのような影響を受けてくるのかが楽しみなところですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
確か二度目の登場となる二見涼子先生でしたが、このキャラクターの視点って何だか読者視点に近いような気がします。
初々しい八重と善一郎を微笑ましい目で見ている視点が完全に読者目線と一致していますよね?
あまり意識したことはありませんけど、こういう読者の視点を代弁するようなキャラクターってラブコメ作品においては結構重要な役割を占めているのかもしれませんね。
八重の姉が結婚することを知ることになった北海道旅行編では、もしかしたら少し八重と善一郎の関係性に進展がありそうな気がして、凄く続きが気になります。