『赫のグリモア(2)』機構の登場で一気に世界観が広がる2巻の感想です。(ネタバレ注意)
『赫のグリモア』は、巻き込まれがた主人公と相棒の人外の組み合わせのバディものの現代ファンタジーとなります。
どことなく『金色のガッシュ!!』を思い出させるところがあって、実は最近『金色のガッシュ!!』のレビュー記事を全巻書いていっていたのですが、それを書こうと思うキッカケが本作品の一巻を読んだことだったりします。
とはいえ、ある意味では似た作品があることは誉め言葉にはなりませんし、こんな風に紹介すると「なんだ二番煎じか~」なんて思ってしまう人もいるかもしれません。
しかし、『赫のグリモア』に関してはそんなことはありません。
現代ファンタジーの人間と人外のバディものという点、それに魔導書という『本』がキーになっている点が共通点ですが、その設定が意外と珍しいだけでその内容と雰囲気はかなり異なっています。
大きくは『金色のガッシュ!!』が超王道的な少年漫画で、とても可愛らしい魔物が登場したりする子供向けな一面もあるのに対して、『赫のグリモア』のターゲットの年齢層はもっと高くて、ちょっとしたスパイスというか、えぐみのようなものがある印象です。
ともあれ、最近は現代ファンタジーだろうが中世ファンタジーだろうが、ちょっとどころではないチートな主人公が登場したりする作品が多くて、それはそれで面白いんですが、『赫のグリモア』の場合はもっと昔懐かしい現代ファンタジーの様相を呈していて、最近では新鮮に感じられる作品なのではないかと思います。
?
本作の概要
若葉とあかずきんを拘束しようとする『機構(ゲゼルシャフト』の魔導士が現れ、あかずきんは若葉の制止も聞かずに暴走してしまいます。
あかずきんを制御するには管理能力不足だと、若葉とあかずきんは引き離されそうになります。
このまま引けば若葉は罪に問われることは無い。しかし、若葉は既に友達であると認定しているあかずきんとともに書の魔導士であることを選択します。
その後、紆余曲折あって若葉は『機構(ゲゼルシャフト』の仲間になることになるのですが、徐々に若葉が魔導士の世界の深みに嵌っていくような展開になっています。
本作の見所
若葉の選択
巻き込まれ系の主人公のいる作品ではある意味定番のお約束のひとつですが、自らを巻き込もうとする世界にこのまま嵌っていくのか、それとも引き返すのか、そんな選択を若葉も迫られることになります。
「残念だけど我々はあなたを、あかずきんを管理するには能力不足だと判断しました」
暴走するあかずきんを制止できない若葉は、『機構(ゲゼルシャフト』の魔導士である星河美冬から、あかずきんを拘束する・・というにはかなり過激な攻撃を加えられている状況を尻目に引くように進言されます。
別に、若葉は選択を迫られているわけではありません。
しかし、少しは友好的になり始めていたあかずきんを見捨てて自分だけ安全圏にいることは若葉にはできませんでした。
「私の友達に!! 手を出すなッ!!」
あかずきんを追いつめる竜胆雫の前に立ちはだかる若葉がちょっと格好良かったです。
最近では、こういう時にただただ格好良い主人公が流行りって気もしますが、個人的にはこういう『強い』のではなく『強くなれる』タイプの主人公の方が格好良いって思います。
若葉の怒り
ちょっとほっこりするのが若葉と曾祖母の茜のやり取り。
茜の自宅に訪れた怪しい老人。彼は『機構(ゲゼルシャフト』の総帥であるミヒャエル・石破といい、茜の後輩の魔導士にあたるようです。
そして、魔導士の落伍者が組織化して魔導士狩りを行う『兄弟団』という組織という脅威から世界の歴史を守るためにと若葉をスカウトします。
『兄弟団』は非常に残虐な組織で、その目的を探るために内偵を試みた女の子は・・
「ある真夏の午後、彼女は帰ってきた。秘密のはずの『機構』各支部に一つずつ・・36箱の宅配便でね・・。生きたまま解体された彼女からは、血が一滴残らず抜かれていた」
例えばこんな目にあってしまったようです。
しかし、確かにそれは『機構』にとっては脅威なのでしょうけど、あかずきんがその後指摘しているのですが若葉には関係の無い話です。それに、総帥が茜の後輩ということは『機構』は若葉の味方ではあるのでしょうけど、若葉を管理能力不足と判断してあかずきんと引き離そうとしたり、今のところあまり印象は良くなさそうなのもありますね。
ですが・・
「関係は・・ある・・。なぜなら大麦茜は、奴らに殺害されたからだ」
なるほど。それなら若葉にも『機構』の仲間になる理由があるのかもしれません。
そして、それを聞いた若葉は茜に対して怒りを見せます。
「どうして・・どうして一言・・殺されたって・・教えてくれなかったの・・私ね・・魔導士になって・・昨日一日はしゃいじゃったんだ。大変だけど楽しかった。でも・・こんな話聞かされてたら・・少しでも笑ってた自分が許せないよ・・」
しかし、この怒りの理由にはちょっとほっこりしてしまいますね。
確かに、どうやら若葉が書の魔導士になったのは茜が死んだからで、しかもどうやら茜が天寿をまっとうしていたなら若葉が書の魔導士になることは無かったらしく、つまり・・
茜が殺されたことが、若葉が書の魔導士になったことのそもそもの理由になっているわけです。
それを知らずに書の魔導士になって少しはしゃいでしまったところのある若葉からしてみれば、自分が許せなくなってしまっても仕方がありませんよね?
とはいえ、遠因ではあっても原因そのものではないはずなので多少はしゃいでしまっても良いのではないかとも僕は思うのですが、そうならないところに若葉のキャラクター性が表れているのではないかと思います。
機構(ゲゼルシャフト)
1巻ではまだまだ舞台が狭い印象がありましたが、『機構』の登場で一気に世界観が広がったような気がしますね。
羽生乃恵瑠などは、傍目には茜の七光りに見える若葉に対して少なからず敵愾心を抱いている様子で、ものを知らなさそうな若葉に対して意地悪を仕掛けたりしていますが、なんとなくこういうキャラクターこそ後々若葉と親友的なポジションになってくるのではないかと思ったりもしています。
総括
いかがでしたでしょうか?
基本的に若葉はまだまだ書の魔導士としては新米もいいところですが、徐々に才能を開花させ始めている様子もあって、どちらかと言えばお人好しなところがある若葉がどのように成長していくのかに注目したいと思います。
そして、今巻ラストの実力不明だった星河美冬の攻撃シーンがなかなか衝撃的で、これからはもう少し若葉やあかずきん以外のキャラクターについても深堀されていく展開になるかもしれませんね。