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『亜夜子(1)』日本漫画界における古典の名作のリメイク版の感想(ネタバレ注意)

 

実は手塚治虫の漫画でまともに全巻読んだことがあるのは『ブラック・ジャック』だけなのですが、テヅコミの単行本には興味津々だったりします。

亜夜子手塚治虫先生の奇子を原作とし、現代的なアレンジを加えられた作品となります。

前述した通り、『ブラック・ジャック』しか読んでいない僕は原作の奇子を知りませんが、舞台や登場人物の名前、そして役割にアレンジが加えられているようです。

1巻では現在からみて14年前の話になっているようで、だから作中の登場人物がガラケーを使っています。

つまり、作中の時間経過とともに現在に向かってくるということなのだと思いますが、そういう細かい配慮が良いと思います。

ちなみに、原作となる奇子についてはタイトルこそ知っていたものの、何となくダークでエロいイメージであまり好きではないジャンルっぽい上に古い作品なので読もうと思ったことはありませんでした。

しかし、テヅコミは現代的にアレンジされた漫画作品になっていますし、今回この亜夜子の1巻の表紙もなかなか素敵な感じがしたので読んでみようと思った次第です。

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本作の概要

淀山市の大地主である天外家。次男である仁は数年ぶりに故郷に帰るが、その異常な光景に唖然とする。天外家の当主である剛毅は、長男・一馬の嫁と身体の関係をもち、亜夜子を産ませていた。一馬はこれを黙認するが亜夜子を虐待し、彼女を庇う居候の涼子にまで暴力を振るう。一方で淀山市周辺の土地をめぐって金、政治と黒い影が暗躍する。閉鎖的な土地に潜む闇。そして無垢な少女・亜夜子もその闇に巻き込まれてゆく・・。

※単行本裏表紙より引用

あまり触れたことのないタイプの作品で、面白いとは思うものの端的にどのような作品なのか、雰囲気を伝えることが難しいと思ったので裏表紙からの引用をお借りしました。

登場するキャラクターのひとりひとりに何かしらの思惑というか、場合によっては陰謀めいた何かが控えていそうな人間ミステリーといった作品という印象を受けました。

本作の見所

ドロドロの人間関係

大地主だが代を重ねるごとに土地が小さくなってきている天外家。

主人公で天外家次男の仁は、家を出てカメラマンをしているが何やら裏のある仕事もしている様子。

天外家当主の剛毅は、遺産相続をチラつかせて息子の嫁と寝て、子供まで作ってしまうお盛んな男。仁とは腹違いの妹・涼子、つまりは娘に見張りをさせて不義をはたらくヤベェ奴です。

天外家長男の一馬は、遺産のためなら自分の嫁と父親の不義を許容する外道で、嫁と父親の間に生まれた妹である幼い亜夜子を目の敵にしている残念な男。

その嫁の鈴枝もまた何を考えているのか分かりませんね。

亜夜子の母親のはずですが、亜夜子は鈴枝のことを「オバさん」と呼んでいたのでその辺もまた複雑そうです。

長女で仁の妹の菜々子は比較的マトモそうですが、他人の土地を言葉巧みに高く売る仲介をして、差額分を自分の報酬にする。そんなボロい商売を崇高な使命と言いながらやっている江野正という図々しい男が恋人という残念なところもあります。

「この家は・・みんな狂っていやがる・・」

そして、仁が言っているようにどこか狂っている。

そういう意味では、亜夜子と同じ仁とは腹違いの剛毅の娘でありながら全くそのように扱われている様子の無い涼子は、今のところかなりマトモに見えてきます。

タイトルにもなっている亜夜子については別途後述しますが、登場人物ひとりひとりのキャラクターが本当に濃いですね。

とはいえ、奇抜というほどではない。

みんなどこかで見たことのあるようなキャラクター性の人物なのですが、それなのに今後の展開が読めない。

なんというか、複雑な物語が展開されそうな予感があります。

まさか殺人が絡む話だったとは・・

非常にドロドロとした人間関係の天外家が描かれる中、1巻のラストで線路に突き落とされて殺されたのは比較的天外家の人間関係の中から外れたところにいる江野正でした。

しかし、江野正は淀山市の。つまりは天外家が大地主である土地の売買価格を不当に釣り上げようとしていた男であり、しかも天外家の長女である菜々子の恋人です。

また、殺される直前に電話をしていたのがその菜々子であり、亜夜子が無邪気にも仁が江野正に黒い招待状を渡していた時のことを警察に話してしまいます。

子供の発言で具体性に欠ける感じでしたが、警察にとっては大きな手掛かりであったことは間違いありません。

そんな風に、この殺人事件は天外家にとっても関りが深いことになりそうな様相を呈してきます。

とはいえ、今のところ仁が一体何をしているのかはよく分かりませんし、この殺人事件をキッカケにどのように物語が展開するのかは正直予想が付きません。

いるだけで何かの原因になりそうな子供

作品のタイトルにもなっている亜夜子も、複雑な立場にいるものの幼い子供でしかありませんし、この亜夜子という作品の中でどのように立ち回るのかが気になるところです。

現状、登場人物の平均年齢がかなり高めの作品に登場する数少ない子供で、年相応の可愛らしさのある普通の子供ですが・・

前述した通りその出自は複雑怪奇です。

兄の嫁と兄の父親の娘。

その上、遺産相続にもめるドロドロとした親戚関係の大地主の生まれ。

なんというか、いるだけで何かの原因になりそうな子供という気がします。

タイトルに冠されているだけあってかなり重要な立ち位置のキャラクターなのだとは思いますが、1巻の時点ではその辺ベールに包まれているような感じです。

1巻ラストに起きた江野正の殺人事件の重要な証言者になったりもしていますが、どのように物語に関わってくるのかが興味深いところです。

総括

いかがでしたでしょうか?

テヅコミの単行本は大型書店でも意外と入荷してなかったり、電子書籍版も無かったりするので存在を認知していない人も多いかもしれませんが、非常に面白い作品が多いのでこの記事を読んで興味を持った人は是非読んでみてほしいです。

個人的には、最近始まった『異世界ブラック・ジャック』に興味津々なので早く単行本が出て欲しいところですがさすがにまだ先ですね。

亜夜子も2巻の発売が楽しみです。