『CANDY&CIGARETTES(4)』美晴の壮絶な過去が明らかになる最新刊の感想です。
『COPPELION』の井上智徳先生の新作として去年から刊行されている『CANDY&CIGARETTES』の4巻です。
井上智徳先生の作品は、『COPPELION』の時もそうでしたが昔の映画のような独特の勢い・・というか疾走感がありますよね。
なかなかハードボイルドな世界観の中にあって、マッチして見える平賀雷蔵とアンマッチに見える涼風美晴という2人の主人公が魅力的な作品です。
いや、涼風美晴は主人公ではなくヒロインなのかもしれませんが、何となく平賀雷蔵とのダブル主人公の漫画のように見てしまっています。
タイトルからして『飴(涼風美晴)と紙巻きタバコ(平賀雷蔵)』なので、実際にそうなのかもしれませんね。
定年退職した老人と女児の暗殺稼業で相棒になる。
細かいことは気にせずにハードな世界観に触れてみたい人にはおすすめの作品ですよ!
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本作の概要
美晴を救出するために遥々イタリアはナポリの無双三郎の別荘までやってきた平賀雷蔵。無双三郎は逃がしてしまったものの何とか美晴の救出には成功しました。
しかし、美晴は意識が混濁して呼びかけに応じなくなってしまいました。
そんな中、雷蔵は単独で臓器密売組織に潜入し、臓器移植の取引記録を入手する任務にあたります。無双三郎が4度目の心臓移植を行う場所を突き止めることにも繋がるかもしれない任務ということで、雷蔵はやる気ですね。
そして、任務中の雷蔵を襲ったピンチに復活した美晴が駆けつけます。
「潜入した場所、そんなに近所だったの?」とか、ツッコミどころはありますが、相棒って感じがして熱い展開ですね。
ともあれ、臓器移植の取引記録の入手には成功し、無双三郎が心臓移植を依頼している闇医者を探しにアメリカまでやってきました。
イタリア、日本、アメリカと息つく暇もないほど忙しい展開ですが、こういうスピード感が本作品最大の魅力だと思います。
本作の見所
孤島の戦い
拳銃を調達する予定だった銃器店から警察のガサ入れによって全ての武器が押収されてしまい、丸腰で敵のアジトに突入することになった雷蔵。
しかし、美晴が捕まっているので引き返すわけにはいきません。
何とも昔の映画のようにハードボイルドで熱い展開ですよね。
そして窓から美晴の居場所を確認した雷蔵は、森で火事を起こして注意を引き、その隙にアジトに突入します。
結果、無双三郎には逃げられてしまいましたが美晴の救出には成功しました。
睡蓮の花
「やめて・・レム・・」
救出には成功したものの、美晴の様子がおかしい。
意識が混濁して呼びかけに反応しない。その代わり、時たま「レム」という人の名前らしき単語を呟きます。
絹目によるとレムとは美晴を殺し屋に仕立て上げた師匠で、最後に美晴と殺し合いを演じることで美晴を殺し屋として完成させた人でもあります。
そして、自分が殺したはずの恩師にナポリで会ったことで、美晴はおかしくなってしまったのですね。
小学校の友達の呼びかけにも応じない美晴は果たして復活できるのでしょうか?
隠された農場
生への異常な執着心があり、今までに何度も臓器移植を繰り返し、心臓も3度入れ替えたほどの無双三郎。
そんな無双三郎は臓器密売にも手を出していて、今回雷蔵は密売組織に潜入して臓器移植の取引記録を入手することで、四度目の心臓移植を行う場所を突き止めるという任務にあたります。
孫ほどの年齢とは言え殺し屋としては先輩の美晴が不在の中、雷蔵が一人でどこまでやれるのか?
ともあれ、その潜入先は児童養護施設でした。
何かもう、雷蔵は「なんで福祉施設が臓器密売してんだ!」と疑問顔ですが、臓器密売と児童養護施設と聞いただけで嫌な予感はプンプンしますね。
そして予感的中。施設の子供たちは臓器を売るために育てられていたのですね。
二人は相棒
データを盗み出すことに成功した雷蔵ですが、余計な秘密まで知ってしまいこのままでは口を封じられてしまいそうです。
絹目に増援を要請しますが、それは難しいとのこと。絹目は自分が向かうと言っていますが、絹目が来たところでどうにもなりません。
「頼む美晴・・お前の手で奴の息の根を止めてくれ!!」
絹目に頼んで反応の無い美晴に電話で現状を伝える雷蔵。そして、最後はまるで遺言のような形になってしまっているのですが・・
それを聴いて美晴は復活し、雷蔵のピンチに駆けつけます。
「このスカタン!一人で死んだらブッ殺すかんね!」
いや~相棒って感じで格好良い登場、そして全てが片付いてからの涙。こういう展開めっちゃ好きです。
特に、美晴はどちらかと言えば小生意気な女の子という感じのキャラクターで、こういう泣きの表情は珍しいので、より一層良いシーンだと感じました。
ラスベガスをブッ飛ばせ!
臓器密売の取引記録から無双三郎の4度目の心臓移植を依頼している闇医者の拠点であるラスベガスに雷蔵と美晴がやってくるというエピソードですね。
重要なエピソードですが、復活した美晴と雷蔵の2人が相棒らしく一緒に行動しているだけで嬉しくなるようなエピソードですね。
ルート66で果てなき荒野を進むことにちょっとナルシスティックに浸る雷蔵が渋いですが、同じ景色ばかりでツマラナイと文句を言っている美晴が対象的で面白いです。
ホテルじゃなくてわざわざモーテルに泊まろうとするあたり、雷蔵は完全に状況に酔っていますね。(笑)
ちなみに、僕なら最初はちょっと浸りつつもスグに飽きるような気がします。どちらかと言えば美晴よりですね。
そしてラスベガスに到着。美晴もカジノに行きたがりますが、ラスベガスでも子供は入れないようです。というわけで雷蔵も「遊びにいくんじゃねぇからな?」と言いながら、美晴を待たせて情報収集にカジノに向かいますが・・
うん、完全にお楽しみになられていますね。(笑)
「ヒャッホ~!! さぁタバコ代稼ぐぞー!」
雷蔵は普通に面倒見が良いジジイなのですけど、こういう欲望に忠実な所もあって、何というかただ良い人ってよりも人間味があって好きになれますね。
そして、表情だけでどうやらスッたらしいことが分かる表現になっているのも面白いと思います。しかも、その背後に探している闇医者のモルグが描かれているという・・
こういう表現が作品にスピード感を与えている要因の一つなのかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
実のところ、僕は本作品のストーリーはあんまり理解せずに読んでいます。割と、井上智徳先生の作品は勢いで押し切る所がありますからね。細かい設定や何かはあまり気にならない・・というか気にする必要もなく楽しめるんですよね。
ただただ単純に平賀雷蔵と涼風美晴の2人が勢いに任せてハードボイルドに活躍する姿を楽しむような漫画だと捉えています。
言い方が難しくて、ある意味批判的に聞こえてしまっているかもしれませんが、あくまでも称賛しているつもりです。普通の漫画だったら細かい設定や状況を説明するために下手したら漫画何冊かかけたりする所をサラッと済ませて、どんどん勢いよく先に進めていこうというスタイルになっている所が、この漫画・・というより井上智徳先生の作品の良い所だと思うのです。
お行儀の良い繊細な味付けの料理も良いけど、たまにはガツンとジャンクな味わいを楽しみたい。そして、『CANDY&CIGARETTES』はそんなジャンクな味わいを楽しめる漫画だと思います。
そういう意味では、ハードな漫画でありながらライトに楽しめる漫画であるとも言えるかもしれませんね。
無双三郎を追いかけてラスベガスにやってきた平賀雷蔵と涼風美晴。
しばらく息も付かせぬハードな展開が続きそうで楽しみですね!