あるいは 迷った 困った

漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

魔法陣グルグル。懐かしの漫画、書評シリーズ【その1】13巻

 

ちょっと不思議な雰囲気の13巻です!(前巻の書評はこちら

前巻の書評の最後に「13巻はゼロ年代ライトノベルのようなちょっと不思議な箱庭型の物語」だと書きましたが、よくよく考えればこの13巻に掲載されている内容からゼロ年代の連載になるのですね。

1巻の発売時期である90年代の初期からは随分と時代が移り変わっていますが、魔法陣グルグルという作品も時代に合わせて変化していっているということなのかもしれませんね。

魔法陣グルグルの中では10巻と並んで異質な雰囲気の巻となります。

10巻は物語のターニングポイント的な意味での異質さでしたが、13巻は実のところあっても無くても良いサイドストーリー的な側面があります。

しかし、理由は最後に語りますが、個人的には13巻というタイミングでこの話が挿入されているのが何だか意味深な気がしています。

時間が止まった不思議な島の物語。

いつもとは違った面白さがあり、色々と考察し甲斐のある巻ですよ!

?

本作の概要

「かわいいポーズ」で戦いを封印し、バトーハの塔での戦いを終わらせたククリ。

久々の新しい土地、予言者ガルニエの待つコパ大陸から少し離れたレフ島を目指します。

しかし、レフ島では何をしようとしても前に進まない。それなのに敵らしき魔物がいるわけでもない。

時間が停滞しているかのような島からの脱出という不思議な冒険。

それが今巻の物語となります。

あと、サイドストーリー的なエピソードだからか、他には登場しない新キャラも登場します。

本作の見所

かわいいポーズ

バトーハの塔の戦いは、ククリの「かわいいポーズ(マジでただ可愛いポーズをしただけ)」を見たレイドがヘタレたことにより終わりました。

「戦いを封印されたよ」

しかし、格好良い言葉でそれを誤魔化しているのですが、実際のところ的を得ているのかもしれませんね。

予言者ガルニエとミウチャ

序盤から登場していた石板の正体がついに明らかになります。

予言者ガルニエが、世界の運命を動かす者(つまり勇者)に予言を伝えるためのものが、どうやら謎の石板の正体だったらしいですね。

しかし、石板の予言はいつも厳かな雰囲気でしたが、それを刻んでいるガルニエは意外と面白いジジイでした。

いつもの「変なオヤジ枠」の1人ですね。(笑)

間違って四コマ漫画を刻んだ石板を「たいくつな人」に届けようとしたら自分のところに石板が飛んで来たり、レフ島の時間が止まっていたせいでいつまでたっても勇者が現れずに放置されたり、ついにニケたちと出会ったら結局何もわからなかったり・・

完全に面白いジジイですね。

一方のミウチャは、そんなガルニエのダジャレ魔法の弟子。

勇者をガルニエの元に連れていくために石板に縛られてニケのもとに飛ばすという強硬手段を取られたり、修得したダジャレ魔法は恥ずかしくて使えなかったり、何かと幸の薄い少女です。

今巻最大のキーパーソンで、服職人になるというミウチャの夢と、ククリによく似た容姿がキーになっています。

レフ島を目指す冒険

レフ島を目指す道中、現れた悪魔デマはカヤの代わりを名乗りますが・・

う~ん。カヤのインパクトが強すぎてこのキャラクターは印象が少し薄いんですよね。

それに、ミウチャのダジャレ魔法、ニケの「ひきょう剣」、ククリの可愛らしいグルグル「すてきなおようふく」・・などなどインパクトのある出来事が戦闘中に続くものだから一層のこと悪魔デマの印象が可哀想なことに・・

そして、最もインパクトがあるのがその後のキタキタおやじの登場の仕方。

ニケが地の王に対する文句を言ったその時、地の王が現れると同時にヌルっと登場してきたキタキタおやじ

「なにがやりたいんだ」

ニケのツッコミはもっともだと思います。いないと思っていたら再登場してくるのは毎度のことですが、個人的にこのシーンでの再登場が一番面白くて好きですね。

「出るなら今しかないと思っただけです」

キタキタおやじもそう言っていますが、タイミングが抜群すぎます。(笑)

時間の止まったレフ島

レフ島にやってきたニケたちですが、レフ島に来て1か月ストーリーが何も進展しません。ニケやククリにミウチャ、キタキタおやじさえも、ゆっくりとした時間に身をゆだねてしまっていました。

そして、何とか状況を変えようとニケはギップルや地の王を呼び出そうとしますが、何故か現れません。それにククリのグルグルも、何も発動しなくなってしまっています。

藁にも縋る思いで悪魔ガルリロから購入した攻略本(?)を見ても役に立ちません。

そんな時、ニケは気付きます。

「みんなが悩んでいる。最後の針・・つぎの1ページを開くのをためらってる。これは偶然だろうか━━!?」

ニケってモノローグだと普段よりセリフが格好良くなりますよね。(笑)

ともあれ、ミウチャの2つ目のククリの服作りの背中を押すニケ。果たしてこれが物語を進めるキッカケになるのでしょうか?

ちなみに、個人的にはここで「もうひとつブレイクできそうな」キタキタおやじの背中を押しても面白かったと思います。(笑)

意味合い的には同じはずですからね。

ミウチャの夢と動き始める時間

そして、ククリの服を完成させたミウチャ。

素晴らしい出来栄えで「どうしてお店開かないのと?」と子供たちに詰め寄られるミウチャ。「そ、そんなのまだ・・」と引き気味のミウチャですが・・

「「まだ」と言っていたらいつまでもスタートできませんぞ。そろそろ誇りを持たれてはいかがかな?」

そんなミウチャを後押しするキタキタおやじ。面白い名言の多い魔法陣グルグルですが、恐らく普通に良いことを言っているセリフとしては、ひょっとして一番じゃないでしょうか?

キタキタおやじの場合、その「誇り」が周囲に迷惑を掛けているのですが、「誇り」が欠けているよりは良いのかもしれませんね。

しかし、その子供の背中を押す大事なセリフを半裸のおやじに先に言われたミウチャの父はちょっと可愛そうです。

「新しいものを作ったから時が流れ始めたんだ!」

急激に進む話に、ニケは時間が進み始めたことを確信します。

しかし、ククリがグルグルを使えるようになりヨンヨンでレフ島を脱出しようとしたのですが、見えない壁に阻まれて脱出できませんでした。

まだ、何か謎が残っているようですね。

トリコさん

ずっとレフ島の図書館にいるトリコさん。(美食屋四天王じゃないよ!)

ククリの憧れそうな大人のお姉さんですが、実は全く逆の性質を象徴しているようなキャラクターとなります。

ククリは初めから感じ取っていましたが・・

「古い物語や知識がたくさん眠る部屋・・この建物の中ではまるで時計が止まっているみたい」

そうです。図書館にいるトリコさんこそが時間を止めている観測者だったのですね。

ククリの服も「前の服の方がよかったかしら」と言ったり、読んでいる本のページが進んでいなかったり・・

「変わらないってすばらしいことよ・・」

「ページをめくらなければ、いつまでも幸せなのに」

心地の良い、幸せについて語るトリコさんのセリフは、その実まるで「変化を受け入れること」を完全に否定するようなものです。

大人っぽいキャラクターですが、大人になることを拒む子供の心を象徴しているかのようですね。

トリコさんの正体

ミウチャの協力で観測者・トリコさんの目を欺きレフ島を脱出したニケたち。

しかし、トリコさんとは一体何者だったのか?

トリコさんは最後に言います。

「「ブリはテリヤキとは限らない」って」

このセリフは、最強のグルグル・恋するハートを作った少女と同じものですが、果たしてトリコさんはあの少女の幽霊か何かだったのでしょうか?

いえ、そうではありません。

実は、今回最初に時間を進めたくないと考えたのはククリでした。

「やっぱり"封印"はコワくて使えません」

最初に「まだ」と言っていたのはククリ。そして、そんな思いでバトーハの塔の戦いを「かわいいポーズ」で封印(?)したククリの心の中が呼び出されて形になったのがトリコさんだったのかと思われます。

だからこそ、観測者トリコさんはレフ島に来る直前に冒険したバトーハの塔で知った少女の形をとっていたのかもしれませんね。

「「まだ」と言っていたらいつまでもスタートできませんぞ。そろそろ誇りを持たれてはいかがかな?」

そう考えると、キタキタおやじがこのセリフをミウチャだけではなく、ククリにも言っていれば、その時点で解決していたのかもしれませんね。

そして、ミウチャはククリと姿形の似ているまるで双子のような存在として描かれていますが、似ているのは姿形だけではなかったということになりますね。

どちらも先に進むことを怖がった少女という点で共通しています。

トリコさんを生み出したのはククリでしたが、ミウチャを含む変化を怖がる子供たちの象徴でもあったのだと思います。

総括

いかがでしたでしょうか?

今巻のテーマには「夢に、大人に向かって歩き始める子供の成長」すなわち、「変化を受け入れること」があると思っているのですが(ミウチャのことですね)、13巻のタイミングでそういう話が来るのは何だか意味深な気がします。

これはストーリー的な意味ではなく、読者視点的な意味で。

というのも13巻の発売時期と言えば、魔法陣グルグルを連載当初から読んでいた子供がちょうど中高生くらいの年齢に差し掛かっている頃で、かく言う僕も13巻発売時点でちょうどニケやククリの年齢を少し上回る中学三年生になっていました。

早く大人になりたいと思いつつも将来への不安とかも相まって、いつまでも子供のままでいたいという気持ちも拭えていないような、そんな複雑な年代ですよね?

そしてまさに、今巻のテーマが刺さるような年代なのではないかと思います。

少なくとも、僕はどちらかと言えば変化を怖がるタイプなので、この話は結構刺さりました。

もし、そういう初期からの読者の年齢を考えて13巻にこのエピソードを挿入してきたのであれば、衛藤ヒロユキ先生は意外と策士なのかもしれませんね。

ちなみに、全く登場しないので忘れかけている人もいるかもしれませんが、魔法陣グルグルのラスボスの名前は憶えていますか?

次巻では、ついにラスボス・魔王ギリが〇〇しますよ!(次巻の書評はこちら