『父とヒゲゴリラと私』ちょっと変わった家族の形の終わりと始まりの感想(ネタバレ注意)
約7年前、兄と兄の娘と弟のちょっと変わったホームコメディ『父とヒゲゴリラと私』の1巻が発売しました。
こういうホームコメディは新しい生活や人間関係が始まるようなタイミングで完結するのが常で、前巻くらいにはそういう変化の前兆がありましたが、7巻にてついに完結してしまいました。
変わらないことと変わること。その両方に魅力がある日常系作品ですが、変わっていく部分は終わりに向かっているということなので寂しくもありますね。
主人公の草原みちる、その父の草原総一、父の弟でヒゲゴリラの草原晃二。
魅力的なキャラクター達の見納めですが、最後まで楽しみましょう!
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本作の概要
ヒゲゴリラの晃二は、西原雪緒先生との結婚に向けて倹約するようになり、触発された総一も動き始めます。
結婚に向けてのラブコメ成分多めでみちるの出番は少なめですが、ラブコメといってもいつものほのぼのとしたホームコメディ感は満載の内容になっています。
本作の見所
みちるのお小遣い
晃二が西原雪緒先生との結婚を見越して倹約し始めたのを見て、みちるにもお小遣いを与えて、計画的な物の使い方を学ばせることを思いついた総一。
小学校低学年くらいのこの時期、欲しいものを手に入れる手段、その難易度が跳ね上がりますよね~
みちるは結構お菓子とかを買おうとしてしまっていますが、僕がこれくらいの頃にはお菓子なんて残らないものを買う選択肢は無かったような気がします。
「使ったらなくなるのが怖くて」
そして、最初はサラッとお小遣いを使ってしまったみちるも、倹約を身に付けつつあります。
これがもう少し成長すると、お金を使わない代わりに上手く大人を使って欲しいものを手に入れるようになっていくんですよね~
西原雪緒先生との進展
晃二がちょっぴり大人な展開に・・って、大人なので当然といえば当然なんですけど、基本アットホームな雰囲気の『父とヒゲゴリラと私』では珍しいエピソード。
「晃二さんが私のことすごく大事にしてくれてるの嬉しく思っています。でも、もっと遠慮しないで晃二さんがしたいことちゃんと言って下さい。私だって人並みのこと考えます。だから人並みのことをしましょう。大事なことだから」
クリスマスデートの後の帰り道、ちょっとアレな休憩所の側を通って挙動不審になっている晃二への西原雪緒先生のセリフ。
いやはや、年下の女性に言わせるセリフではありませんけど、確かな好意が伝わってきて、言われて嬉しくない男はいなさそうですね。
そして、バレンタインが過ぎた後の週末に、この2人はまあそういうことになったようです。
こういうシーン、漫画だとエロい感じになってしまいがちだったりもしますけど、何か普通に幸せそうな感じが伝わってきて良かったです。
比和つかさとの進展
晃二と西原雪緒先生の恋愛は急激に進展していった感じですが、総一と比和つかさはじっくりとした感じです。
そもそもの性格もありそうですが、総一が元奥さんを亡くした子持ちだってのも影響しているのかもしれませんね。
それでも意外と考えの読みづらい感じのつかさが、明らかにいつかは総一と結婚するのであろうことを想定した行動を取っているのがいじらしくも可愛らしいと思います。
個人的に何か最近、年齢のせいもあるのかもしれませんが大人の恋愛シーンって何か好きなんですけど、本作品の雪緒もつかさも、相当魅力的なキャラクターだとは思うんですよね。
みちるの独創性
晃二と総一の恋愛話がメインになってきている『父とヒゲゴリラと私』ですが、忘れてはいけません主人公はみちるです。
晃二が子供ってたまに独創的とみちるを見て思っていますが、どうやらそもそもかなり独創的な子供っぽいです。
決してうまくはないけど独創的な絵を、うまさだけならみちるよるずっと上の川野さんに真似られて、それが賞を取ったものだから何だか絵を描くのが楽しくなくなってしまったようですが、そこは総一が父親らしいところを見せます。
「下手でもいい。みちるにしか描けない絵を描けばいいんだよ」
成績や他人との優劣よりも個性を重視する親って、世の中にどれくらいいるのか分かりませんが羨ましいとちょっと思います。
総一と養父
病気で入院した養父を見舞うことになった総一。
孫にあたるみちるは可愛がられていますが、総一と養父の関係は若干気まずげな感じです。
まあ、結婚相手の両親なんて家族になったといっても元は赤の他人なわけだし、その結婚相手である奥さんを亡くしている総一にとっては、そりゃあ接し方が難しい相手であることは間違いなさそうですね。
しかも、ひょいっとみちるがつかさの存在をこぼしてしまったので、気まずさが倍増に・・
これ、実際問題どんな空気になるんでしょうかね。若くして伴侶を無くして、再婚を考えている相手がいる状況を義理の親に知られる状況。
そんな経験をしたことがある人は少ないでしょうけど、同じ状況なら再婚を考える人はそれなりに多いでしょうし、義理の親への報告だって当然必要でしょう。
だけど、その雰囲気が全く想像できないですよね。
ちなみに、フィクション作品でこういう状況だと、子供との関係にスポットがあたりがちですが、本作品においてその辺は既にクリアされていそうな感じがしますね。
ヒゲゴリラのプロポーズ
そもそもゴリラが苦手だった西原雪緒先生。
ヒゲゴリラと呼ばれる晃二との相性はそもそも最悪だったところが来るところまできました。
その甲斐もあって、当初ほどゴリラが怖くなくなってきている西原雪緒先生でしたが、だからといって動物園のゴリラの前でプロポーズしなくてもって気もします。(笑)
トラウマじみた思い出のある動物園に、しかし良い思い出もできたということなので良かったのかもしれませんけど。
比和つかさの総一への両親への挨拶
全く気付いていませんでしたが、つかさと晃二って今巻が初対面なんですね。
自分は色々動き出している晃二は若干余裕気味ですけど、つかさのことは気に入ったようです。
「あの、つかささん。近いうちに一度うちの親に会ってみませんか」
そして、ついにこの時が来ました。
しかし、総一の両親は総一のことをできの悪い子供だと思っている節があり、親は子供のことを謙遜しがちだとはいえ行き過ぎだと思ったようで、つかさは総一をフォローします。
だからなのか、その帰り道に総一はつかさに甘えたような雰囲気になり・・
何だかメッチャ良い雰囲気でプロポーズすることになります。
ゴリラにアレを投げつけられた後にプロポーズした晃二よりロマンチックですね。(笑)
それに、キスしようとして照れるつかさがまた可愛らしい。
総括
いかがでしたでしょうか?
いつも通りのホームコメディですが、じわじわとラブコメ要素もあるのが魅力的な作品でしたが、最終巻はラブコメ要素がかなり強めで、兄と弟がそれぞれ結婚することになって完結します。
ちょっと変わった家族の形は終わってしまいますが、この先も見てみたいと思わされるような作品だったと思います。