『ダイの大冒険(18)』原作ゲームにまで影響を及ぼす名作の感想(ネタバレ注意)
最期の戦いの序章という感じの18巻です。(前巻のレビューはこちら )
ダイとハドラーの一騎打ちからのアバンの復活という最高潮の流れがひと段落したこともあって、まだまだ戦いは終わっていないにもかかわらず少しばかり盛り上がりが小休止した感じもあります。
とはいえ、まだまだラストまでいくつかの山があるので、そこに向かうまでの場をまた温めだしたというような雰囲気の展開ですね。
また、17巻ではアバンが復活しましたが、18巻では兵士ヒムにラーハルトも復活して、クライマックスの前にキャラクターの復活が続きます。
人気キャラを復活させたという感じなんでしょうかね?
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本作の概要
アバンが復活し、18巻では兵士ヒムやラーハルトも復活します。
一方で、今まで様々なキャラクターが登場と退場を繰り返していた中で、なぜか今までしぶとく生き残っていたザボエラは最期を迎えます。
本作の見所
アバンの緊張感
『ダイの大冒険』のようなファンタジー作品、あるいはバトル作品において、本来なら緊張感があって然るべき場面でそれを感じさせない個性を持っているようなキャラクターが時折いたりしますが、アバンはまさにその典型ですよね。
「余が信じる強さとは全く異質の強さを感じる男・・それがアバンだ! 奴を生かしておけばダイたちアバンの使途の力が異常に増幅されそうな・・そんな気がする・・」
大魔王バーンの感じるアバンの異質さがそれなのかは分かりませんが、少なくともアバンの復活がアバンの使途たちに与えた影響はそれなりに大きそうな気がします。
「いやぁ~っ良かった良かった。こんな事もあろうかとピクニックセットをもってきておいて・・!」
このアバンのセリフ、閑話休題的なサブエピソード中のセリフじゃないですからね。(笑)
ラスボス大魔王バーンの総本山である大魔宮の通路で、レジャーシートを広げて可愛らしいお弁当まで取り出してきました。
休む時は休むというか、オンオフの切り替えが素晴らしいですね。
こういう一見緊張感が無さそうに見えるのに実は合理的な感じ、ダイがいくら強くなっても子供には出せない貫禄であるような気もします。
『ダイの大冒険』にはアバンの他にこういうタイプのキャラクターはおらず、復活して登場しているだけで随分と雰囲気が変わるような気がしますね。
そして、そういう雰囲気の中に大魔王バーンが警戒する何かがあるのかもしれません。
ノヴァとロン・ベルク
ノヴァは初登場時から随分と印象が変わりましたね。
自分こそが真の勇者で唯一なのだとそう言って憚らない、責任感とプライドの同居したようなキャラクターでした。
しかし、誰が真の勇者なのかとかはさておき、ダイたちアバンの使途の実力を目の当たりにしてからは色々な表情を見せるようになりました。
プライドを粉々に砕かれ随分と凹んだ姿を見せていたところもありますが、その後は責任感だけが残った好印象のキャラクターになっていったような気がします。
「たとえボクが死んでも必ずみんなに何かを残せるはず・・!!」
ロン・ベルクに止められるくらいノヴァの行動は無茶なことのようですが、良い感じにプライドを責任感に転換して成長したようにも見えますね。
「・・オレは今の今までおまえを見損なっていた。感心すると同時にやはりどうあってもムダ死にさせたくなくなった・・!!」
それに対するロン・ベルクの行動がいいですね。
人が人を認める瞬間というのは、何度見ても心が打たれるものです。
そして、ノヴァの代わりに自らの両腕を犠牲に戦ったロン・ベルクに、ノヴァは今まで以上に心酔することになります。
たぶんノヴァを認めたということを示すために、まずは酒瓶の栓をあけるところからノヴァに指示を出すロン・ベルクでしたが、慣れていないのかなかなか栓を開けられないノヴァ。
「・・やれやれ、おまえにはまず、酒瓶の栓の開け方を教えなきゃならんようだな・・!」
呆れ、笑われて照れているノヴァが可愛らしいですね。
そんな感じで、ノヴァは登場頻度のわりには様々な表情を見せる愛嬌のあるキャラクターになっていったと思います。
兵士ヒムとラーハルトの復活
17巻ではアバンの復活にとても驚かされましたが、18巻ではハドラー親衛騎団のひとりである兵士ヒムが復活を果たします。
まさかの復活ラッシュに、各キャラクターのファンは喜びそうですよね!
まあ、さすがにアバン復活ほどのインパクトはありませんが、ラーハルトなんかはファンも多そうですしね。連載当時にどのキャラクターが人気があったのかとか、その辺のことは実はわかりませんけど、このタイミングでの復活はまあそういうことなんだろうと。
兵士ヒムも、17巻の時点でハドラーが良い味を出していたので、そんなハドラーの魂を宿らせたような形での復活はウケたのではないでしょうか?
・・なんてメタいことばかり言ってしまっていますが、こういう過去のキャラクターの再登場はいよいよ終わりが近いことを感じさせられます。(まあ、まだそこまで近くはないのですけど)
「オレが今! この手で殺したのだ!!・・したがってオレがこの鎧と魔槍を持っていてもだれも文句はあるまい・・?」
個人的には、最後のヒュンケルとラーハルトのやり取りが好きです。
過去の過ちから、そしてアバンの使途の長兄としての責任感から、いつも頑張りすぎ無理しすぎなところのあるヒュンケルを休ませるために、あえてヒュンケルにトドメを刺すようなことを言って、要は死んでいるのと同じなのだから休んでいろと言っているわけですね。
不器用なヒュンケルのための不器用な優しさという感じが良いと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
17巻までの盛り上がりは半端じゃなかったこともあって少々物足りなさもあった18巻でしたが、それはこの先クライマックスの山に向かってのまだ麓だから。
19巻以降は、大魔王バーンを含むラスボス級のキャラクターが活躍し始めるはずで、今から楽しみでしょうがないです。(次巻のレビューはこちら)