あるいは 迷った 困った

漫画、ラノベ、映画、アニメ、囲碁など、好きなものを紹介する雑記ブログです。

『ガンバ!Fly high(7)』観客席でドラマが繰り広げられる珍しい展開(ネタバレ含む感想)

 

6巻のレビューでも散々言及したことですが、ガンバ!Fly highにおける福井県での全国大会のエピソードでは選手たちの演技は元より、観客席で繰り広げられる人間ドラマの盛り上がりが見所のひとつになっています。

通常、スポーツ漫画においては選手の競技こそが全てとは言わないまでもほとんどなのだと思いますが、このエピソードの見所の半分までは観客席と言えるほど観客席が面白いし、感動的なのです。

そして、この7巻では全国大会と同時に観客席のドラマもクライマックスを迎えます。

というわけで続いて嵐雲高校との対抗試合のエピソードが始まるのですが、これがまた今までの試合とは少し違っていて面白いですね。

全中の大会やジュニアの大会はイメージしやすいですが、学校同士の対抗試合というのもまた新鮮な展開ですし、1種目ずつ勝敗を決めていくというのも面白いところ。

また、相手が高校生であり、中学生である平成学園の体操部員たちがまだ経験の浅い種目でも戦わなければいけない状況も、何だかんだ準備万端で挑んできた今までとは違って面白いと思います。

何より、ここで堀田辰也という藤巻駿と同じ選手の視界が見える選手が初登場するのも見所です。

ちなみに、本編とはあまり関係がありませんが藤巻駿の母親や妹も登場してなかなか個性的なので注目してみてください。

?

本作の概要

李軍団の所属する明青台中学も最後の鉄棒の演技を終え、最期は平成学園の鉄棒の演技を残すのみとなった全国大会。

鉄棒に関してはみんな以前よりも安定感を増している平成学園の選手たちは次々と順調に演技を終えていき、最後は種目別選手権で唯一李軍団に勝利している藤巻駿に委ねられます。

試合の結果もですが、その時観客席で何が起こるのか。それも見所のひとつになっています。

本作の見所

鉄棒からの落下と観客席のドラマの決着

藤巻駿は何だかんだで今までどの大会でも勝ってきています。

一番最初の地区大会は種目別を制していますし、種目別選手権でも平成学園が得点では敵わなかった李軍団にも藤巻駿の鉄棒だけは上回っていました。

その後の三バカ不在の地区大会も、途中で選手の入れ代わりという反則があったものの優勝していますし、反則そのものは白状してしまったものの全国大会に足を進めている時点で勝利と言えるでしょう。

そういう意味で藤巻駿が成績的な意味で敗北しているのは作品全体のプロローグであるド素人の状態で出場した大会だけですね。(笑)

なのでこの全国大会で後は最後の藤巻駿の鉄棒に結果が委ねられ、必要な得点も李軍団のものを少し上回るくらいという状況になった時点で、これは最後に藤巻駿が大活躍して終える流れなのかと、そのように思えたものです。

試合そのものもですが、観客席にいる相楽まり子の人間関係の問題も、何故か藤巻駿の演技に委ねられてしまっていますし、何より藤巻駿がそのことを意識しているので、今まで以上に勝ちたい気持ちは大きいはずですからね。

しかし、藤巻駿はまさかの鉄棒からの落下という、演技を再開したとしても優勝は不可能という痛恨のミスをしてしまいます。

これは恐らく、「勝ちたい」が「勝たなくてはいけない」になってしまい今までは純粋に体操を楽しんでいた精神状態とは違ってしまっていたことが原因なのでしょうか?

「・・見えない・・。藤巻クンの翼が・・見えないよ・・」

そして、相楽まり子はそのことに落下のミスの前から気付いていた節があります。

確かに、演技に挑む時の藤巻駿の表情が今までのものとは違いましたね。鉄棒以外の演技も、大きなミスこそありませんでしたが鬼気迫るものがありました。

それで実力以上の演技をしていたところもあるような気がしますが、その分リスクも負っていたというわけですね。

プレッシャーとリラックスのバランスがとても難しいということを示しているのでしょう。

しかし、藤巻駿が優勝を決めていたらそれはそれで相楽まり子の人間関係の改善のキッカケになったのかもしれませんが、この失敗こそがむしろ観客席のいざこざをより感動的な形で解決するキッカケにもなっていたと思います。

恐らく、最後まで相楽まり子との仲直りに踏み出さなかった秋場も本当はキッカケが欲しかったはずで、だからこそ本心では藤巻駿に頑張って欲しかったのだと思われます。だから自ら率先して落下した藤巻駿を応援してみせたのだと思いますが、その行動がまずは感動を呼びましたし、点数にはならない失敗した技のやり直しという勝利のためではない演技で藤巻駿は観客を沸かせることになったわけですね。

藤巻駿の母親と妹

作品にもよるでしょうけど、スポーツ漫画においては主人公の家族って地味な扱いのことが多いと思います。いるのかいないのか分からないくらいの(まあ当然いるのでしょうけど)存在感で、登場したとしてもスポットだけという感じでしょうか。

まあ、キャラクター漫画ではないですし、本筋とも関係ないことが多いので妥当といえば妥当な気もしますね。

そして、この7巻では珍しくメインキャラクターの家族。主人公である藤巻駿の母親と妹が登場します。

正直出ても出なくても良いキャラクターではあると思うのですけど、登場するだけで主人公そのものの人間味が増すような気がするので個人的には悪くないと思います。

嵐雲高校との対抗試合

今まで藤巻駿が出場してきた試合とは趣の異なる学校同士の対抗試合・・なのですが、相手がインターハイ優勝の強豪校。

インターハイ・・って、高校生じゃん!!

お忘れの方もいるかもしれませんのでおさらいしておきますが、藤巻駿たちは中学生です。いかにジュニアの大会で活躍した選手だったとしても、中学生と高校生では相当身体の出来上がり方が違っています。

その上、強豪校だとしたら試合をするまでもなく実力差は明白・・かと思いきや、最初の床の演技でまさかの勝利。

とはいえ、中学生では体操の全種目をやっているわけではないようですから、そこから見せた演技は散々なものとなりました。(笑)

しかし、初めてやるあん馬で藤巻駿が偶然にやって見せた高難度の技に、選手の視界が見える体操の天才・堀田辰也の闘争心が煽られます。

そこから、藤巻駿と堀田辰也の互いの視界を通した会話のようなものが始まるのですが、他人には理解できない天才同士のやり取りという感じでとても興味深いです。

総括

いかがでしたでしょうか?

藤巻駿が他の選手の視界を見ている描写は今までにもありましたが、それと同じことができる堀田辰也の登場と、二人だけの視界を通じたやり取りが始まって何だか面白くなってきましたね。

実はこれまでに登場してきているキャラクターの中にも、後に藤巻駿と日の丸を背負うことになるキャラクターは登場しているのですが、同世代の選手としてはこの堀田辰也の登場で出揃ったことになります。

未読の人は、他の誰がは藤巻駿の後の仲間になるのかを予想しながら読んでいっても面白いかもしれませんね。