『ダイの大冒険(2)』原作ゲームにまで影響を及ぼす名作の感想(ネタバレ注意)
外の世界に出ての冒険が始まるって感じの2巻です。(前巻のレビューはこちら )
1巻ではデルムリン島という狭い閉じられた世界の物語が描かれていましたが、2巻からはデルムリン島の外に飛び出して世界が広がっていくように感じられてきます。
これはファンタジーの王道パターンのひとつですが、元ネタの『ドラゴンクエスト』っぽさもありますよね。
また、レオナはなかなか登場しないヒロインですが、旅の仲間となるマァムが2巻で初登場します。
ダイが勇者、ポップが魔法使いで、マァムは僧侶という役割を持っていますが、銃を武器としていたり、今後のネタバレになってしまいますが武道家っぽい戦い方をしてみたり、『ドラゴンクエスト』における僧侶とは全くイメージの異なっているところが面白いキャラクターとなります。
それに、ダイにとっての最初の強敵となる六大軍団の獣王クロコダインも初登場します。1巻のハドラー戦はどちらかといえばアバンの活躍で退けた感じでしたからね。
2巻はそんなマァムやクロコダインの活躍が見所となります。
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本作の概要
ダイとポップの二人は大魔王バーンを倒す冒険の旅に出るためにデルムリン島から外の世界に飛び出します。そして、そこで二人と同じアバンの弟子であるマァムと出会い、旅の仲間が一人増えます。
最初の強敵、獣王クロコダインとの戦いでポップは勇気を、ダイはその実力を示します。
本作の見所
アバンの弟子のマァム
魔の森で迷子になっているダイたちは、そこで銃のような凄い武器で魔物を撃退するマァムに出会います。
失言が多くあまり男らしくない感じがするポップとは少々相性が悪い雰囲気で、それはダイとレオナの出会い以上だったのではないかと思います。
「大丈夫よっ! この村は私が守ってみせるわ!!」
男手の少ない魔の森の中にあるネイルの村を守る非常に男勝りな性格のマァムですが、ポップのラッキースケベに反応したり、怪物みたいに強いと言われて怒ったり、女の子らしい一面もあったりします。
「こっ、これは卒業の証・・! アバンのしるしじゃねえか・・!?」
そして、マァムが装備している首飾りを見てポップは、マァムもまたアバンの弟子であったことに気付きます。
マァムも母親のレイラはもともとアバンと共に戦った仲間でその縁もあったようですが、マァムがアバンに師事したのは4~5年前のことらしいのでダイやポップの姉弟子ということになります。
ダイにも謎めいた強さはありますが、確かに現時点ではマァムの方が安定感がある雰囲気がありますし、姉弟子っぽいといえば姉弟子っぽい気がしますね。
アバンの使途。
ダイ、ポップ、マァムとアバンの遺志を継ぐ仲間の冒険こそが『ダイの大冒険』の主軸となっていくので、アバンの使途というキーワードが今後頻出します。
偶像化されていくアバンが序盤から中盤にかけてのダイたちのモチベーションになっていくので、その辺に注目してみて欲しいと思います。
臆病なポップ
『ダイの大冒険』の魅力の一つにポップの存在があることは間違いありません。
味方キャラも敵キャラもなんとも魅力的な成長を見せてくれるのが面白い漫画ではありますが、中でも成長が感じやすいキャラクターの筆頭がポップだからです。
彼は最初から強いキャラクターではありません。
むしろ、その臆病さが際立っているキャラクターだと言えます。
「す、すまなえダイ! おめえも上手く逃げろよぉっ!!」
獣王クロコダインとの初戦でも、戦おうとするダイを尻目に一人だけ逃げ出してしまいますし、そんな姿勢はマァムを幻滅させてしまうことになります。
しかし、そんな臆病なところに何故だか共感してしまう。
まあ、多くの人は勇敢なダイのことを格好良く思うと思いますが、一方でダイはあくまでも、そしてあまりにも漫画の主人公らしいキャラクターです。
対してポップの在り方は、アバンを尊敬しているマァムからは幻滅されるようなものではあっても至って普通の少年の考え方だと思います。
個人的に人間の本質は臆病なものだと思っているのですが、だからこそこういうポップのようなキャラクターには無意識で共感してしまいやすいんだと思います。
そして、臆病なキャラクターだからこそ時たま見せる僅かな勇気が格好良く見える。
それがポップというキャラクターで、2巻でもクロコダインを相手に大活躍しています。
なにより・・
「・・こんな未熟な少年までが友情にすがり生命をはってまで戦っている・・!!」
・・と、ザボエラに唆され卑劣な戦い方をするクロコダインのプライドを擽ることができたのはポップの勇気のおかげ。
そして、今後もポップの活躍のしかたってある意味では美味しいところを持っていくような意味合いもありますが、ここぞというところを外さない格好良さがあると思います。
獣王クロコダイン
獣王クロコダインは『ダイの大冒険』における最初の強敵(ボス)です。
紋章の力で凄まじい強さを見せるとはいえ、まだ平和だったデルムリン島で勇者に憧れる少年というイメージの強かったダイが相対するにしては荷が勝ちすぎているように思える強敵ですね。
しかし、ザボエラに唆されて卑怯な戦いをすることになった自分に対しては疑問を持っている様子。
というわけでネタバレになりますが、クロコダインは敵だったのに味方になる最初のキャラクターとなります。
『ドラゴンボール』のベジータやピッコロではありませんが、クロコダインの場合は最初から割と所属する立場が敵味方分かれているだけで考え方はそれほど悪者感がありませんでしたから妙な納得感があったのを覚えています。
『ダイの大冒険』ではこんな感じで敵味方の境界が曖昧で、敵が味方になったりその逆だったり、敵だけど一時的に味方になったり、そういう展開が非常に多いので、そういう移り変わりにも注目していきたいですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
マァムの登場に合わせて今後重要なキーワードとなってくる「アバンの使途」という言葉が登場し、いよいよアバンが偶像じみてきましたね。(笑)
クロコダインも敵キャラながら最後は憎めない感じで良かったのではないかと思います。
少し今後のネタバレになりますが、少年向けバトル漫画にありがちなかつての強敵が味方になる流れは『ダイの大冒険』にもあって、むしろそういう流れがかなり顕著な作品だと思うのですが、実は最初の一人目がクロコダインだったりします。
『ダイの大冒険』はこんな風に、その行いだけを見たら絶対に許せないような敵キャラにもどこか一本筋が通ったところがあって、例えばハドラーなんかもダイの成長に合わせて成長していく興味深いキャラクターだったりします。
そういうキャラクターが本当に多いので、『ダイの大冒険』をはじめて読む人は敵キャラの今後とかに注目しながら読んでみても面白いかもしれません。(次巻のレビューはこちら)