『いとなみいとなめず(2)』結婚してから始まる恋愛って感じが初々しい漫画の感想(ネタバレ注意)
実は現実にもお互いに本当に愛が芽生えるのは結婚した後になってからというケースがあるらしいというのは聞いたことがあります。
というか、今でこそ少ないと思いますが昔は一般的ですらあったのかもしれません。
いわゆるお見合い結婚の場合がそれに該当しやすいようで、考えてみればお見合いは結婚するための出会いなので当然と言えば当然のことなのかもしれません。
対して『いとなみいとなめず』の純岡清と飛鳥馬澄(もう純岡澄でしょうか)の場合は一応は恋愛結婚という形になります。
しかし、清の一目惚れと澄の早く結婚したい事情が噛み合った形なので、少しばかり通常の恋愛結婚とは違っていて、なんだかお見合い結婚のように結婚してからが恋愛のスタートラインというような印象があるのです。
恋愛結婚なのに結婚してから恋愛が始まっていくような雰囲気。
そういうところが『いとなみいとなめず』の面白いところで良いところだと思います。
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本作の概要
26歳のサラリーマンである純岡清は、女子高生だとは知らずに一目惚れした飛鳥馬澄の高校卒業を待って結婚することになりました。
あまりにも初々しい二人の新婚生活が可愛らしい漫画です。
本作の見所
同じ方向
1巻のラストは、真面目で純情ではあっても男である清が、勇気を出して澄を求めようとしたところで終わりでした。
こんなのは今どき恋人同士であれば、まして夫婦同士であれば当たり前のことだとは思うものの、奥さんがついこの間まで女子高生だったほどの年下であると考えると清でなくてもかなり勇気が必要そうなシチュエーションかもしれませんね。
「・・私ね。”あると思う”なんて気軽に言っちゃって、でもまさかそれが今だなんて思わなくて、そしたら急に先に進むのが怖くなって、逃げてきちゃった・・」
何があると思うってもちろん夫婦の営みのことですが、通常であれば夫婦になった時点で覚悟というほどのものですらなく、そういうものとして営みはあるものなのだと思います。
しかし、ついこの間まで女子高生だった澄には知識としてはあっても恐らく実感が伴っていなかったのではないでしょうか?
いや、この辺は年齢云々の問題ではないかもしれませんが、少なくとも澄にとってはそうだったのではないかと思われます。
こんな二人だからタイトル通り『いとなみいとなめず』な状況になってしまうのも分かるというものです。
「夫と妻の間で問題が起こる時ってのはだいたい2人で同じ方向向けてない時さ」
澄のおばあさん、いいこと言いますね。
夫婦というのはどうしても色々な価値観や問題を共有しなければいけないものだから、同じ方向を向くためにお互いに自分の意見を言うことと相手の話を聞くことの両方が絶対に必要ということでしょう。
僕は結婚していないですし、恋愛経験も多い方ではありませんが、これにはなるほどと思わされました。
これは夫婦以外の人間関係においても同じく大事なことだと思いますが、相手の話を聞くことをできない人って一見するとコミュ力高そうな人にも多いですからね。
手を繋ぐ
手を繋いで歩く恋人や夫婦ってどう思いますか?
人によってはウザいって思うらしいですが、個人的には手を繋いで仲が良さそうな男女は微笑ましく見えて嫌いではありません。自分が異性と手を繋ぐのが好きだからとか、そういう自己弁護的な意味ではなく。(笑)
手を繋ごうとするドキドキとした緊張感と、手を繋げた時の達成感って、実はキスやそれ先以上のものなのではないかと個人的には思っています。
いや、手を繋ぐってかなり気軽な感じではあるものの、一歩踏み出した感の強さだけなら最大なんじゃないかって感じるんですよね。
家具屋さんで清が手を繋いで歩く男女を見て、澄と手を繋ぎたいとドギマギしているシーンがありますが、ある意味では1巻ラストで夫婦の営みを迫った時以上に清が緊張して見えませんか?
こういうところ、個人的には凄く共感できてしまいます。
僕はあまり自分の恋愛観を他人に話したいと思うタイプではありませんし、本ブログでもその手のことを書いたことはほとんどありませんが、本記事では少しですが僕自身の恋愛観にも触れています。
そんなことを書いてしまう程度には、この清が手を繋ぐということだけに緊張しているエピソードに共感できたということだと思います。
澄の表情がちょくちょく面白い件
どちらかといえば恋愛においては男性の方が幼い印象がありますが、『いとなみいとなめず』でもかなり年上の夫である清の方がドギマギしていて幼く描かれていると思います。清の場合は中でもかなり特殊なレベルではありますが。(笑)
一方の澄は意外と肝が据わっている印象がありますね。
女性の方が精神年齢が高いとは一般的にも言いますが、実際年下で外見的にはかなり可愛らしい印象の女性でも精神的に自分より大人っぽく見えることがあるから不思議です。
澄もまたそういう印象が強いキャラクターではありますが、2巻ではちょっと初心なところというか、1巻では見せなかったような表情を見せていました。
清に自分の下着を洗われた上に綺麗にたたまれているのを目撃した時の微妙な表情や、ドラマのラブシーンを目を見開いてガン見してドキドキしている表情。
これらがあえて可愛らしい感じではなくギャグっぽく描かれているところにギャップがあって凄く良いと感じました。
深田充先輩と澄の恋の自覚
新婚である澄の前に現れたのは、昔から澄のことが好きだったらしい深田充という結構格好良い系の青年でした。
ところで皆さんは自分の彼女や奥さんが他の男性と仲良くしていることをどう思いますか?
意外と、清と同じような反応をする人が多いのではないかと思います。
好きな人には余裕を見せたいですし、多少他の男性と仲良くしようがヘッチャラらだぜって態度を取りつつも、心ここにあらずで上の空になってしまう。
恐らくですがこの清のような反応は、男性が本能的な反応をするとしてしまう態度そのものな気がするんですよね。
相手が気になる女性であればあるほど、できるだけ弱みを繕うことはせずに言いたいことを言うようにする人も多いみたいですが、清の場合は前者だったみたいです。(ちなみに、僕の場合は後者です)
ともかく、深田充は清よりは明らかに格好良いですし、最初はちょっと不穏なキャラクターなのかなぁと思ったものの、結論から言えば個人的には結構好感が持てるキャラクターだと感じました。
思い人の突然の結婚。
それに対してどう反応するかは人それぞれだと思いますが、深田充のように諦めきれずに相手が本当に幸せなのかを問い詰めるも、どうやら本当に澄が幸せに感じていることを確認するとあっさりと断ち切ってきました。
「ごめんなイジワルな質問して! 知らなかっただろ、俺、さっきまで飛鳥馬の事好きだったよ」
いや、第一印象でねちっこいストーカー体質のキャラクターなのかと思ってしまっていたので、最後のギャップで一気に好感度が上がりましたね。
「さっきまで」というのがさっぱりしていて特に格好良い。
さすがに思い人の突然の結婚なんて事態に遭遇する機会はそうそうないでしょうけど、こういうことが言える男になりたいものですね。
しかし、確かに格好良いんですけど、深田充の言動こそが事情ありきの結婚をした澄に本当の意味での清に対する恋心を芽生えさせるキッカケになってしまっているのが皮肉といえば皮肉でしょうか?
総括
いかがでしたでしょうか?
澄はもちろん相手が誰でも良かったわけではないでしょうけど、清の早すぎるプロポーズを受けたのは早く結婚したい事情があったからなのは明らかです。
世の中には、結婚すること自体が目的の結婚や、恋愛すること自体が目的の恋愛が数多く存在するのではないかと思います。
実はそういったことに個人的に否定的ではあるのですが、澄の抱えていた事情が理解できるものだったこともあって、『いとなみいとなめず』の場合はただただ結婚した二人が微笑ましい漫画だなぁという印象を持っています。
2巻では「手を繋ぐ」ということと「キスをする」という恋愛的な意味において大きな二つの進展がありましたが、これ、既に結婚している二人のことだと思うとあまりにも初々しくて可愛らしいですね。
本当に素敵な漫画で、恋愛系の作品の中では今一番続きが楽しみかもしれません。