『ダイの大冒険(22)』原作ゲームにまで影響を及ぼす名作の感想(ネタバレ注意)
いよいよクライマックスの最終巻です。(前巻のレビューはこちら )
21巻は、ついにダイが諦めるという中々ショッキングな展開で終わりましたが、そこからダイやポップは立て直せるのか、果たして地上の平和は守られるのか、そのあたりが最大の見所になっています。
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本作の概要
仮に大魔王バーンを倒せたとしても、地上消滅の危機は変わらない。そんな状況に絶望してしまうダイでしたが、地上では今までダイが出会った人たちが黒の核晶を止めようと奮闘しています。
そんな状況を覚醒したメルルに知らされまずはポップが、そしてポップの触発されたダイが元気を取り戻します。
そして、本当の最終決戦が始まります。
本作の見所
最高の友達
この『ダイの大冒険』の全巻レビューを書くにあたって読み返してみて改めて感じたのは、やっぱりポップが魅力的なキャラクターであるということが一番です。
子供の頃に読んだ時には、やっぱり強くて格好良いダイこそが一番格好良いと感じたものですし、それは今でも変わりません。
しかし、ポップの魅力って子供心には分かりにくいところもあって、大人になった今だからこそ人間味のある弱さの中にある強さが魅力的に感じられるような気がします。
そして、クライマックス大魔王バーンとの戦いにおいてもその格好良さは遺憾なく発揮されています。
21巻では大魔王バーンの天地魔闘の構えを打ち破るキッカケを作りましたし、そして22巻では大魔王バーンの完全勝利からダイが立ち直り、再び勇気を持って大魔王バーンに挑もうとするキッカケを作ります。
その上、大魔王バーンのカイザーフェニックスを防いだり、メラをメラゾーマと勘違いしていた頃の面影もありません。
やはり、特に所見の人はダイにばかり注目してしまいがちなところもあるとは思いますが、是非ともポップの魅力も感じ取って欲しいと思います。
神の涙
ダイの友達というか、一番の仲間といえばポップのイメージが強いですが、ポップよりももっと昔からの、ダイにとってもっとも長い付き合いの友達は実はゴメちゃんですよね。
正直そこまで作中での存在感が強いわけでもなく、セリフもない・・いや正確にはこの最終巻でセリフがありましたが、最後の最後でこんな大きな役割を担ってくるとは予想外でしたね。
まあ、確かにごくたまに奇跡を起こすキッカケになるような描写はあったものの、何だかんだで誰に対しても余裕ぶった大魔王バーンがその存在に気付いたとたん相当な苛立ちを見せてツブしてしまったわけなのですから、余程重要な存在だったのでしょう。
しかし、もしかするとこれが大魔王バーンにとって最大の悪手だったのかもしれないと思いました。
なぜなら、これこそがダイが大魔王バーンに勝利するための賭けに出るキッカケになったからです。
竜の紋章
最初は主人公ダイの額に何故か輝く強さの象徴であり、バランの登場によってそれが竜の騎士である証明になるものだということが明らかになり、次いでバランの支配から逃れるために額ではなく手の甲に移動した竜の紋章は、最終決戦を前にバランから引き継いだものがもう片方の手に現れて双竜紋になりました。
そういう風に、常に作中の節目節目で重要な役割を果たし、形を変えてきた竜の紋章ですが、双竜紋になった後のダイでも大魔王バーンには敵いませんでした。
しかし、ダイにはこの双竜紋ではまだバランの竜の紋章は十全に使えていないという自覚がありました。
「おそらくおれの身体がセーブをかけているんだ。正常でいられるレベルに紋章の力を・・。だから意識的に両方の紋章を全開にすればっ・・!!! 爆発的に強くなれるはず・・。たぶん竜魔人みたいに・・」
強敵との戦いの最中に主人公が急激にパワーアップする展開はバトル要素のある漫画ではよくある展開ではありますが、『ダイの大冒険』におけるこの大魔王バーンとの最終決戦のクライマックスのパワーアップの説得力は他に比べて強いような気がします。
ダイが双竜紋を全開にした時、二つの紋章は再びダイの額に移動して一つになるのですが、もともとはバランの支配から逃れるために移動した竜の紋章。おそらく額にあった方が力を発揮するのでしょうし、それが二つ分なのですからその威力が少なくとも双竜紋以上であることは想像しやすいですね。
実際、このパワーアップでダイは大魔王バーンに肉薄するどころか圧倒するまでになっています。
鬼眼王
そして、追いつめられた大魔王バーンは自身も元に戻れないリスクを犯して鬼眼王という魔物へと姿を変えました。
ドラゴンクエストのラスボスは変身を繰り返すもので、それがゲームであれば特に違和感は無いのですけど、漫画だとちょっと違和感のある展開に感じた人が多いのではないでしょうか?
最後に大魔王バーンが安っぽくなってしまったような気がしなくもないのですね。
とはいえ、長かった戦いのクライマックスが近いことが分かりやすくて良いのかもしれませんね。
総括
いかがでしたでしょうか?
大魔王バーンを討伐するという一つの目的に向かって突き進んだまさに原作ゲームのドラゴンクエストのような漫画でした。
原作ゲームであればクリア後要素とかもあったりするものですが、残念ながら『ダイの大冒険』はここまでのようです。
実際には大魔王バーン討伐後には魔界編が予定されていて、そのための伏線として大魔王バーンとの戦闘中にヴェルザーを伏線として登場させていたようですが、作者の体力的な問題でそれが描かれることは無かったようですね。
確かに、ヴェルザー以外にも結局ダイはどうなったのかとか、謎を残したままの完結になってしまっています。
まあ、これでとても一本筋の通った綺麗な作品になっているわけなので良かったのかもしれませんね。
とはいえ、個人的にはこの続き、クリア後の世界を楽しんでみたいところ。
いつか『ダイの大冒険』の続きが描かれる日がくると嬉しいですね!