『大蜘蛛ちゃんフラッシュバック(5)』こんなお母さんいたらマザコンでもいいわって思える漫画の感想(ネタバレ注意)
植芝理一先生の作品は絵柄も内容も個性的で面白いですよね。
絵柄は他に似ている人がちょっと思い浮かばないくらいに個性的だけど老若男女どのキャラクターも生き生きとしているし、独特な世界観もとても素晴らしいです。
ちょっと変わったフェチが描かれていることが多く、キーワードだけ抽出してみれば少々背徳的だったり、もっと直接的に言えばエロさを感じさせるものだったりしますけれども、他の似たようなテーマの作品には多少なりとも存在するいやらしさは薄く、それなのになんだか濃い。
そんな不思議な作品が多くて、実のところそこまで極端に「超面白い!」と感じているほどではないんですけど、その独特な作品はとても記憶に残りやすく、読んだ後には早く続きが読みたいと思わされる作品でもあったりします。
『大蜘蛛ちゃんフラッシュバック』も、もちろん例によらずで半年ぶりの新巻をとても楽しみにしていました。
4巻、ものすごく気になるところで終わっていましたからね。
どうでも良いけど、文章中に一(にのまえ)ちゃんの名前出すと文章の意味が分かりづらくなって困ります。(笑)
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本作の概要
5巻はフラッシュバック成分は少な目で、現代の大蜘蛛ちゃんの魅力が大いに描かれていた印象です。
息子の友人をアシスタントに迎えたことで少し人間関係が広がり、そのことで今までになかった表情が見られるようになった印象ですね。
また、実のフラッシュバックを通して大蜘蛛ちゃんの過去を垣間見ることは作品の性質上多かったですが、5巻では大蜘蛛ちゃん自身が過去を振り返る機会があったのも今までとは少し違っていて面白かったです。
本作の見所
アシスタントの一(にのまえ)
4巻の終わりから気になっていた漫画家の大蜘蛛先生の大ファンである一(にのまえ)ちゃんが、ついに実の母親イコール大蜘蛛先生であることを知ってしまう展開の続きから5巻は始まります。
「やっぱり鈴木くんのお母さんって・・大蜘蛛先生じゃないのっ!!」
自分が大ファンだと知っているのに、その上そうじゃないかと言ったのに、それなのに隠してた実が、そういえばフラフラだった大蜘蛛先生を背景に糾弾されるのがちょっと面白かったです。(笑)
フラフラだったから実も秘密がバレたとしても戦力になりそうな一(にのまえ)ちゃんを呼んだわけなんですけど、ともかくここでお手伝いをしたことをキッカケに一(にのまえ)ちゃん、正式なアシスタントになってしまいました。
『大蜘蛛ちゃんフラッシュバック』という作品におけるメインヒロインは実のお母さんでもあり漫画家の大蜘蛛先生でもある大蜘蛛ちゃんなのだと思いますが、一(にのまえ)ちゃんも普通の漫画であればメインヒロイン的なポジションのキャラクターです。
大蜘蛛ちゃんと、実にしてみればフラッシュバックする大蜘蛛ちゃんと重ねて見てしまうことの多い一(にのまえ)ちゃんの二人の距離が縮まったことで、作中の人間関係が大きく進展したような気がしますが、そのことで何だか今までにない新たな絡みや展開が起こりそうで楽しみですね。
大蜘蛛ちゃんの昔の絵
好きな漫画家が昔描いた絵。それは一(にのまえ)ちゃんじゃなくても見てみたいものですよね。
「綾のデビュー前の絵も上げたら面白いかなーと!」
大蜘蛛先生は気が進まない様子ですけど、作品の公式SNSに大蜘蛛先生の昔の絵を掲載してみようと部屋を物色しているわけですね。
まあ、気が進まないというより大蜘蛛ちゃんからしたら普通に恥ずかしいことなのかもしれません。
実際・・
「それは見ちゃダメっ・・」
門外不出のBLを見られそうになって焦ってみたり・・ってそれは確かに息子に見られそうになったら焦るか。(笑)
やたら可愛らしく描かれている高校生の頃の自画像見られて照れてみたり・・
そういえばフラッシュバックした過去の大蜘蛛ちゃんのこういうシーンは今までにも多かったですけど、大人になっている今の大蜘蛛ちゃんがこういう表情を見せるシーンは珍しいような気がしますね。
クリスマス
シングルマザーと息子の二人暮らし。いかに息子の方が食べ盛りだったとしても、ホール二段重ねのクリスマスケーキをチョイスするとは大蜘蛛ちゃんも甘い物好きですね。(笑)
それに食べ盛りといっても実はそこまでモリモリ食べそうなタイプでもないですし。
「ほら! 実! あんたの好きなクリスマス・ケーキ、ちゃんと手をつけないでおいたわよ」
それなのに一(にのまえ)ちゃんの前で実がケーキ好きなことにされてちょっと照れてるが若干もらい事故感がありました。(笑)
いや、考えてみれば自分が帰るまで手をつけるなと実も言っていたわけで、大蜘蛛ちゃんとしてはそれを素直に受け止めただけの発言だったのだと思いますけど。
というか一(にのまえ)ちゃん、サンタコスのサプライズに高校生男子の友達の母親を誘うとは、これもまた中々普通ではない発想な気がしますね。
一(にのまえ)ちゃんにとって大蜘蛛ちゃんは、友達の母親である前に漫画家の大蜘蛛先生であるということの比重が大きいのかも・・いや、そうだとしてもアラフォーに近い女性をなかなか誘ったりはしないか。
取材旅行と修学旅行
一(にのまえ)ちゃんが大蜘蛛先生のアシスタントになったことで新鮮な組み合わせでのイベントが発生しました。
いわゆる取材旅行なのですが、そこで実は修学旅行中の大蜘蛛ちゃんにフラッシュバックします。
「鈴木くん! 今夜、鈴木くんの部屋に行くからね。今夜は一緒に寝ましょう♡」
これが大蜘蛛ちゃんというキャラクターをまだよく知らない段階で聞いたセリフならなんか色っぽい展開になってきたなぁと感じるくらいだったのだと思いますけど、これはどちらかといえば大蜘蛛ちゃんが言わなさそうなセリフですよね。
少なくとも、このセリフから想像してしまうような意味では。(笑)
まあ、大蜘蛛ちゃんも同年代の男性である山田さんに恥ずかしげもなくサラッとその思い出話をしてしまっているくらいなので、もしかしたらこのセリフには何かしらのミスリードが含まれているのではないかと思います。
一(にのまえ)ちゃんも、過去の大蜘蛛ちゃんと同じようなことを実に言い出しましたし、このセリフにどういう意味があるのか、そこがかなり気になりますね。
総括
いかがでしたでしょうか?
なんというか、4巻の時もそうでしたけど『大蜘蛛ちゃんフラッシュバック』はいつも単行本のラストで続きが気になる感じになりがちですよね。
いわゆる引きが上手いということなのでしょうけど、ひょっとしたら単行本になった時の区切りがかなり計算されているのかもしれないと感じました。
なんと少しばかり漫画好きの通ぶった発言をしてみたものの、結局何が言いたいのかといえば単純に「続きが楽しみ!」ってだけのことなんですけどね。(笑)
ラブコメだとしても主人公の母親をメインヒロインに据えられている作品なので、その結末というか、行く末が予想できないということは既刊のレビューでも触れてきましたが、一(にのまえ)ちゃんがだいぶヒロイン的になってきたので彼女との恋愛が描かれるか、別にラブコメだからといって必ずしも恋愛に結び付けなければいけないわけではないという感じで終わるのか、そのどちらなのかと推測されます。
だけど『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』みたいな例もあるから何とも言えな・・いや、さすがに兄妹以上に親子はありえないか。