『ダイの大冒険(3)』原作ゲームにまで影響を及ぼす名作の感想(ネタバレ注意)
最後のアバンの使途ヒュンケルが登場する3巻です。(前巻のレビューはこちら )
アバンの使途は全部で5人。
ダイ、ポップ、マァム、現時点ではアバンの使途であることが明言されていませんがレオナ。
そして、3巻で初登場するヒュンケルですね。
しかし、ヒュンケルはアバンを養父の仇だと思っていてアバンの弟子になったのはその恨みを晴らすためでした。
尊敬するアバンの、それも一番弟子が六大軍団の不死騎団を率いてダイたちに敵対する展開にはモヤモヤとしたものを感じますが、それだけに後々ヒュンケルがアバンの使途の長兄らしくなっていくところに大きなカタルシスを得ることができます。
なんとなく原作ゲームの『ドラゴンクエスト』にもありそうなエピソードなのが良いですね。
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本作の概要
パプニカ王国を目指してそしてたどり着いたダイたちですが、パプニカ王国は六大軍団の不死騎団を率いるヒュンケルによって壊滅させられてしまっていました。
魔法が通用しない鎧を身にまとい、圧倒的な剣技を見せる強敵であるヒュンケルは、実はアバンの一番弟子。
兄弟子と敵対した上での大ピンチに、獣王クロコダインが助けに入ったりする激熱の展開になっています。
本作の見所
パプニカを目指すアバンの使途
こういう冒険ファンタジーにおいて最大の見所といえば強敵とのバトルシーンであることは周知の事実だと思います。
しかし、個人的には閑話休題的なエピソードもキャラクターの魅力を高める最大の要素なのではないかとも思います。
バトル中の凛々しく格好良い姿。
そして少し休まる小休止の時間に見せる姿。
この二つのギャップが良いんですよね。
アバンの使途が3人そろってパプニカを目指す道中。船上でのやり取りが非常に微笑ましいと思います。
戦闘中は臆病だったのに、最後に勇気を見せたことで調子のよいポップ。
馴れ馴れしすぎるポップにむっとするマァム。
なによりパプニカの王女であるレオナと友達であることをからかわれて赤くなるダイが、デルムリン島での無邪気な少年ともバトル中の凛々しい感じとも違って新鮮に感じられます。
「へえ~っ 初耳~ ダイもけっこう隅におけないじゃない・・!」
「そっそんなんじゃないんだってばあっ!」
こんな感じのやり取りは物語の佳境ではない部分だからこそ見られるもので、個人的にこういう部分が本当に好きなんですよね。
こういうシーンがあるからキャラクターに愛着が湧くし、物語に深みが出るのだと思います。
六大軍団
2巻では獣王クロコダインが初登場しましたが、中盤から終盤にかけて重要な役割を果たすキャラクターも含めてかなり早い段階で出揃っているのが少し驚きですね。
百獣魔団率いる獣王クロコダイン。
妖魔士団率いる妖魔司教ザボエラ。
氷炎魔団率いる氷炎将軍フレイザード。
魔影軍団率いる魔影参謀ミストバーン。
超竜軍団率いる竜騎将バラン。
そしてアバンの使途の一人であり、3巻でダイたちと敵対する不死騎団率いる魔剣戦士ヒュンケル。
既に『ダイの大冒険』を最後まで読んだことがある人なら、こんな重要なキャラクターがこんな序盤から登場してたんだぁ~と改めて思わされるくらいの勢ぞろいです。
相当重要な役どころのバランに、最後の最後まで作中最大といっても過言ではなさそうな秘密を抱えているミストバーン。
それにネタバレすると六大軍団の内半分が後々の味方キャラクターになるのにも注目ですね。
ダイに味方するクロコダイン
ヒュンケルがダイにトドメを刺そうとする瞬間、そのピンチを救ったのはまさかの獣王クロコダインでした。
敵キャラが戦った後に味方になる展開は少年漫画のあるあるですが、何度も繰り返しているように『ダイの大冒険』ほどそれが他の作品に比べても顕著な傾向があります。
獣王クロコダインは六大軍団の団長の一人。
それと敵対するダイたちと、最初は敵同士となることはある意味当たり前といえば当たり前のことですね。
しかし、獣王クロコダインは恐らくダイたちと戦ったことで、自分自身のプライドというか信念というか、とにかくそういった諸々が六大軍団よりもダイたちに近いものだったということに気付いたのではないかと思います。
これは人(というかリザードマンですが)が惹かれるのは、組織ではなくあくまでも人なのだということの表れなのかもしれませんね。
「・・ヒュンケル・・いいぞ・・人間は・・今度生まれ変わる時には・・オレも・・に・・人間に・・ぐふっ・・!」
これはヒュンケルに敗れた時に涙を流しながら発せられたクロコダインのセリフですが、これにはダイたちに対する尊敬が含まれているような気がします。
しかし、人間であるヒュンケルに対してのセリフとしてはいささか皮肉めいているのが面白いですね。(笑)
アバンの弟子の長兄ヒュンケル
ヒュンケルはアバンの弟子の長兄で、役割的には戦士職となります。
怪物に育てられた少年が、それを滅ぼす原因となった勇者アバンを憎みながらも弟子になるというのは、なんだか原作ゲームにもありそうなエピソードって感じがしますよね。
初登場となる3巻では六大軍団の不死騎団を率いてダイたちと敵対することになりますが、ただでさえ強敵なのに自分たちの兄弟子ということもあって戦いづらさもある。ダイたちは大苦戦しますが、この戦いでダイは紋章の力無しでも相当な実力を発揮できるまでに成長しています。
ダイの成長速度は、少なくともこの時点では読んでいて極端にインフレしている印象は無いのですが、冷静に考えてみればそこまで大きなキッカケもなく飛躍的に強くなっています。
この自然な感じが良いですね。
ちなみに、ヒュンケルは自分の養父である怪物が死んだのはアバンがハドラーを倒したからだと思い込んでしまっていますが、考えてみればハドラーは生きています。
実は、ヒュンケルの養父にトドメを刺したのはハドラー自身(アバンをハドラーの元に誘ったことで処刑された)であり、そのことを知ったヒュンケルは酷く混乱します。
「いまさら・・いまさらそんなことが信じられるかっ・・!!」
とはいえヒュンケルの混乱も仕方のないことなのかもしれません。
自分が恨んでいた人物が実は恩人であるなんてことが判明したら、今までの自分の行動原理が間違っているなんてことが判明したら、それをすんなり受け入れられるのは強靭なメンタルの持ち主か考え無しのバカのどちらかのみだと思います。
つまり、このセリフはこれまで強い一面ばかり見せていたヒュンケルが見せた最初の弱さなのではないかと思うんですよね。
昔『ダイの大冒険』を読んだ時には純粋に強いキャラクターを格好良いと思っていたものですが、こうして見せる弱さもあるからこそ魅力的になっていくのではないかと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
今後の強敵である鬼岩城の六大軍団も3巻で全員初登場を果たしましたし、世界が広がるだけではなく徐々に役者も出揃ってきて面白くなってきましたね。
この時点では大きなネタバレになってしまうので名言は避けますが、バランやミストバーンあたりはかなり重要な秘密のあるキャラクターなので、この先の展開を知らない人はその動向に注目してみて読んでみて欲しいと思います。(次巻のレビューはこちら)