『ファミリアクロニクルepisodeリュー(6)』リュー視点のダンまちスピンオフ完結巻の感想(ネタバレ注意)
『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』には数多くの魅力的で奥行きのあるキャラクターが登場します。
考えるまでもなくスピンオフ作品向けの作品ですね。
『ファミリアクロニクルepisodeリュー』はそんな『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のスピンオフ作品の一つのコミカライズ版となります。
今回紹介する6巻で最終巻となるのですが、1冊の小説のコミカライズ版で6巻分とは・・なかなか丁寧に描かれたということになりますね。(小説1冊分だと2~3巻が相場な気がします)
冒険者たちの憩いの場、酒場・豊穣の女主人のウェイトレスであるリューが主人公である物語は最終巻を迎えましたが、面白い漫画だと思いつつもどこか消化不良、もっと先が読んでみたいという人も多いのではないでしょうか?
しかし、そこは安心しても大丈夫だと思います。
本作はあくまでもスピンオフ作品、ここに登場したキャラクターたちの未来はきっと『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に描かれることになるのではないかと思われます。
実際、ほぼ同時発売の『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の最新14巻には、リューの活躍が数百ページにわたり描かれています。
『ファミリアクロニクルepisodeリュー』は単品でも十分に楽しめる作品ですが、リューというキャラクターを魅力的だと感じるならば、是非とも『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』の本編も読んでみてくださいね!
ほぼ同時発売の『ダンまち』本編の原作最新巻のレビューはこちら
?
本作の概要
疾風のリオン(リュー)の暗殺を依頼された二人の暗殺者。
黒拳のルノアと黒猫のクロエの暗殺の標的重複もあり、戦闘は徐々に混乱したものになっていきます。
アーニャも登場し、意外な実力の高さを見せつけます。豊穣の女主人のポテンシャルの高さが伺えますね。
ルノアとクロエを嵌めた黒幕も巻き込み、どう落ち着くのか予想ができない戦闘が続きますが、最後は豊穣の女主人のミアの逆鱗に触れ、すべては丸く(?)収まりました。
本作の見所
豊穣の女主人のリュー
暗殺者の殺意が本格的になってきたことに気付いたリューは、いよいよ豊穣の女主人に迷惑を掛けられないと辞めることを決意しますが、ミアに機先を制されてしまいます。
「店員も全部アタシのもんなんだからさ」
「アタシ等に迷惑かけず上手いことやって落とし前をつけりゃいいのさ」
ある意味、暴論じみたことを言ってリューを諭すミア。まるでリューをファミリアの一員であるかのように扱うミアに、リューは応えます。
「私が蒔いた種だ。なんとかしてみせます」
腹をくくって、豊穣の女主人のリューのまま解決してみせることを決意しました。
それにしても、『ダンまち』でのリューは主人公のベルの視点から見ても頼れる先輩冒険者(元)という感じなのですが、『ファミリアクロニクルepisodeリュー』ではもっと人間味あふれる表情を見せてくれて、どんどん魅力的に見えてきますね。
今巻で言うと、戦闘中に豊穣の女主人の離れを壊してしまい、そんな場合ではないのに「店主(オーナー)にどやされる・・」と青くなったり、全てが終わった後に豊穣の女主人を修繕している作業中、クロエに暴走エルフと揶揄されて「私はいつもやり過ぎてしまう・・」と落ち込んだり。
本編である『ダンまち』・・というかベルの前では見せないような表情を見せてくれるのが良かったです。
アーニャの実力
酒場の可愛らしいウェイトレスといった感じのキャラクターですが、豊穣の女主人のウェイトレスはミアによって集められた訳アリの女の子揃い。
実はというかやはりというか、アーニャも相当な実力者だったようです。
眠りの香が効いて眠っているのかと思いきや、実は酔っぱらって爆睡していただけなので交戦音で目が覚めて起きだしてきたっぽいですね。
クロエvsアーニャ。
「なんだかミャーと同じ匂いがするニャ!」
「胸はミャーの方がおっきいのニャ!」
クロエと同じ猫人。キャラ被り扱いされたり、何だかアホっぽい言動に振り回されたり、舌戦ではアーニャに分があるようです。(笑)
そして、冒険者としての実力もアーニャは相当なもの。どうやら戦車の片割れの2つ名で知られた冒険者らしいですね。
何となく、既に読者には豊穣の女主人という場所がそういうギャップの巣窟であることが理解できているのでそこまでの驚きはないものの、アーニャまでがそうだったのかと思った人は多いのではないでしょうか?
ミア・グランドの逆鱗
豊穣の女主人の店先で繰り広げられる激闘。
それが周辺に及ぼす影響と、その結果起こり得る事象に、その時が来るまで誰も思い至っていませんでした。
「おい、馬鹿娘ども。なんだい、このありさまわぁ? ここは誰の店だい?」
フレイヤ・ファミリアの元団長でレベル6の冒険者(元)である豊穣の女主人の店主、ミア・グランドの逆鱗に触れてしまい、先ほどまでハイレベルな戦いを繰り広げていた面々はミアの恫喝だけで戦闘を停止されてしまいました。
それにしても、現在はオッタルというオラリオの頂点が務めるほどのフレイヤ・ファミリアの団長という立場だったのに、ファミリアに籍は置いているものの半分隠居状態になっているなんて、訳アリ娘が集まる豊穣の女主人の店主であるミアもまた何かしら訳アリなのかもしれませんね。
リューはミア・グランドが『可憐で美しい』という噂を聞いていたから、その実力を目にするまでは信じることができなかった(失礼だな)ようですが、火のない所に煙は立たぬとも言いますし、本当に昔は可憐で美しかったのかもしれません。
とすれば、ミアの過去話とかのエピソードもどこかで見られるかもしれませんね。
ミアも色々と謎めいたところがあるキャラクターなので、ありえない話ではないかと思います。
ちなみに、表紙裏のリューの想像する『可憐で美しい』ミアは本当に可憐ですが、「今と繋がらない」と納得できない表情のリューが面白いですね。
ほのぼのと温かい物語
スピンオフ作品の良い所でも悪い所でもあるのですが、本編を知っている人にとっては最初からネタバレになっているような部分もあったりするものです。
もちろん、それを承知の上で敢えて結論の見えた物語を構成するのも作家さんの腕の見せ所なのだと思いますが、本作品はそういう意味で腕を見せつけられた作品だと感じました。
クロエもルノアも最後には豊穣の女主人で働く未来が最初から見えていましたが、だからこそそこに至るまでの過程に殺伐としたものがあっても、何故だかほのぼとした温かさも感じられるような作品だったと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
『ダンまち』のキャラクターは誰しも魅力的ですが、一番好きなキャラクターが誰かと問われたら答えに窮するところがあります。
というのも、原作者の筆力が高いこともあって、その時メインで書かれているキャラクターを好きにならずにはいられないので、優柔不断に好きなキャラクターがコロコロと変わってしまうからです。
しかし、『ファミリアクロニクルepisodeリュー』の主人公であるリューは『ダンまち』のメインであるヘスティアファミリアのメンバーを除けば、個人的にはほぼ不動の1位のキャラクターだったりします。
未だ謎めいている所の多いアイズよりも、正直リューの方が人間味があって好きなんですよね。
そんなリューが主人公のスピンオフのコミカライズ版も完結してしまいましたが、本編の方ではまだまだ出番があるようなので、これからもリューの活躍を楽しみにしたいと思います!