『フルーツバスケット(1)』全編アニメ化記念に全巻レビューします!
2019年4月。
なんと『フルーツバスケット』が全編 アニメ化されます!
過去にアニメ化された際には若干消化不良気味なタイミングで終わってしまったので、ファンとしては嬉しい限りです。
割と少女漫画らしい少女漫画が原作となるアニメですが、男でも全然楽しめる作品なので、少女漫画はちょっとって人も見てみて欲しいものです。
『フルーツバスケット』が好きな同志が増えてくれたら嬉しいですね!
そんな感じでアニメ化にテンションが上がってしまったからってわけでもないですけど・・いや、完全にそんなわけか。
久しぶりに『フルーツバスケット』の原作を読み直しているんです。
といわけで、せっかくなので『フルーツバスケット』を1巻から順に全巻レビュー記事を書いてみようかなぁ~と思います。
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本作の概要
幼い頃に父親を亡くし、女手一つで育ててくれた母も亡くし、引き取ってくれたおじいさんの家を改築することになり、その間は友達の家に泊まるように言われてしまった主人公の本田透。
友達には迷惑を掛けられないとテント暮らしを始めるのですが、そこは同級生の草摩由紀の住む草摩家分家宅の私有地でした。
本田透の事情を知った草摩由紀と従姉妹の紫呉は、本田透を居候させてあげることにしました。
そして、ひょんなことから本田透は異性に抱きつかれると十二支の動物に変身してしまう草摩家の秘密を知ることになります。
本作の見所
テント暮らしの女子高生
考えてみれば『フルーツバスケット』の主人公である本田透は、初っ端からなかなか壮絶な状況に置かれています。
高校生にして両親ともに亡くしているだけでも薄幸の少女って感じなのに、おじいさんは優しいけど親戚との関係は悪く、心が弱い人ならそれだけで病んでしまいそうな状況なのですが・・
「楽な暮らしとは言えないけれど、大丈夫私の取り柄はどんな時でも、めげない事です」
それを感じさせないくらいに前向きで、明るく優しく健気で、そしてひた向きなキャラクターが本田透なのです。
悪く言えば天然でちょっと抜けたところもあるってことになるのですが、むしろそんなところが魅力的ですよね。
しかし、だからといって女子高生が一人テント暮らしとは・・
思いついてもなかなか実行できるものではありませんし、実行した上で本田透のように前向きでいられるのは本当に凄いと思います。
仮に耐えられるだけの精神性を持っていたとしても、何で自分だけって気持ちが少しでも入り込んでしまったらもう無理そうですしね。
一発で主人公の本田透のキャラクター性が分かるエピソードだったと思います。
草摩家の秘密と草摩家の人々
本田透がテント暮らしをしていた場所は、実は草摩家の私有地でした。
テントに帰ろうとしているところを同級生の草摩由紀に目撃され、テント暮らしをしていることがバレてしまった本田透。いや、バレてしまったというか、そもそも私有地だったことを知らなかったようですが、ともあれ草摩由紀と従兄弟の草摩紫呉に事情を説明することになりました。
テント暮らしの本田透を発見した時の、できた大人っぽい雰囲気なのに爆笑してる草摩紫呉が面白かった。(笑)
その後、紆余曲折あり由紀と紫呉の住む草摩家分家に居候することになった本田透ですが・・
ひょんなことから草摩家にやってきた草摩夾に抱きついてしまい、猫に変身した草摩夾を見て、異性に抱きつかれると十二支の動物に変身してしまうという草摩家の秘密を知ることになりました。
本田透の友達
登場人物の大半が『草摩』という同じ苗字だという珍しい作品ですが、本田透の友人である魚谷ありさと花島咲は数少ない草摩以外のキャラクターとなります。
2人ともなかなか魅力的なキャラクターで、1巻時点で活躍の場は少ないものの既に存在感は抜群です。
魚谷ありさは、天然で優しい本田透の友人とは思えないような元ヤンですが、友人想いのメッチャ良い女の子です。
本田透の亡くなった母親である今日子が実は伝説のヤンキーで、そんな今日子に憧れていたのだとか。
そして、花島咲は毒電波を発し、魔女と呼ばれるミステリアスな女の子。
「私・・彼からは妙な電波を感じるの・・」
人外であるネズミに変身してしまう草摩由紀から妙な電波を感じたり、謎の勘の良さを発揮する、動物に変身する草摩家並に謎めいたところがあります。
この本田透の友人コンビは両方とも『フルーツバスケット』の中でもかなり好きなキャラクターなのですが、特に花島咲は本田透と並んで一番だと思っています。
人は良心を持って生まれてこない
「本田さんは優しいね・・」
草摩由紀にそう言われて照れまくっている本田透のセリフが、よくよく考えると心に沁みる良いセリフなんですよね~
「お母さんが言っていました。人は良心(やさしさ)を持って生まれてこないんだよって。良心は体が成長するのと同じで自分の中で育てていく心なんだ・・って。だから人によって良心の形はちがうんだ・・って」
これ、何だかハッとさせられる言葉ですよね。
考えてみれば当たり前なのだけど意識することは少ないというか・・
自分の性格の成り立ちに自覚的な人なんてあまりいないだろうし、無意識に生まれながらのものだって思ってしまっているところもあるというか・・
しかし、確かに最初から良心を持っていたりはしないのだと思います。
例えば、幼い子供は純粋なものだけど、純粋なだけに意外と残酷だったりもしますからね。
2001年にアニメ化された時のOP曲の『Forフルーツバスケット』の歌詞に「生まれ変わることはできないよ。だけど変わってはいけるから」というのもありますが、まさに人の性格が生まれではなく育ちだということを示しているような気がします。
本田透とフルーツバスケット
『フルーツバスケット』は仲間外れの物語です。
幼い頃の本田透がレクリエーションでフルーツバスケットをやった時のエピソードなんて、主人公の哀しい思い出ではあっても『フルーツバスケット』という作品を秀逸に表現した良いエピソードだと思います。
フルーツバスケットとは、プレイヤーにフルーツの名前が割り振られ、呼ばれたフルーツと鬼だけで行う椅子取りゲームとなります。
当時男子にいじわるされがちだった本田透にはフルーツではなくオニギリが割り振られ、当然フルーツバスケットにおいてオニギリが呼ばれるわけもなく、本田透は目の前で繰り広げられる楽しげなゲームを見ながらオニギリと呼ばれるのをひたすら待っていたという、めっちゃ切ないエピソードなのですが・・
『フルーツバスケット』には、まさにオニギリだった本田透を思い起こさせるようなシチュエーションがとっても多いのです。
引き取られた親戚の家で仲間外れだった本田透。
草摩家の居候で分かり合えたつもりでも、どこまでいっても居候である本田透。
草摩家の中では、十二支の仲間外れの猫である草摩夾。
フルーツバスケットは楽しいゲームですが、それを仲間外れの意味で使っているのが何とも秀逸というか、面白いとおもいます。
そして、そんな仲間外れだった本田透が、ネズミに騙されて十二支の仲間外れになった猫に思い入れがあるってところがまた、何とも名状しがたい複雑な気持ちにさせてくれますね。
総括
いかがでしたでしょうか?
テント暮らしの女子高生という始まりからも分かる通り、実はかなり重くて暗いエピソードの多い『フルーツバスケット』ですが、それを吹き飛ばすくらい優しい世界観が作品全体を通して最大の魅力だと思っています。
1巻でも既に、そんな優しさが感じられますね。
それに、もの凄く耳に残るようなインパクトがあるわけじゃないんだけど、じわじわと心に沁みるような名言が多いのも特徴で、1巻にも少なからずありましたね。
そんな『フルーツバスケット』の魅力に、僕もアニメ化が発表されたことで久しぶりに読み直したので、なかなか新鮮な気持ちで触れることができました。
レビュー記事を書きながらなのでじっくりと読み直していきたいと思います。(次巻のレビューはこちら)