『はしっこアンサンブル(2)』役者が揃ったって感じの合唱部の感想(ネタバレ注意)
『はしっこアンサンブル』の1巻は、主人公である藤吉晃と彼を合唱の世界に引きずり込んだ木村仁の2人に焦点の当たった序章中の序章という感じで、他のキャラクターは顔見せ程度の登場でした。
そして、この2巻では今後メインになっていくであろうキャラクターについて掘り下げられ始めていて、いよいよ役者が揃ったという感じで賑やかになってきました。
『げんしけん』の時もそうでしたが、木尾士目先生の描くキャラクターってちゃんと漫画のキャラクター的な魅力もあるのに、「あ~こういうやつって確かにいるな~」って思わさせられるリアリティもあるというか、誰もかれも人間って感じの魅力があるように感じられますよね。
色んな奴がいて、バランスが悪いようにも見えるのに、それが徐々に調和して一つの集団が形成されていくのがまさに青春って感じです。
徐々に調和していく感じがまさに合唱って気もしますよね。ごじつけだけど。(笑)
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本作の概要
藤吉晃を取り巻く面々が段々と賑やかになっていきます。
不登校気味の幼馴染である小泉日鞠との関係を改善したり、折原昂聖が常にイヤホンを身に付けている理由を明らかにして更生(?)させたり、何かと焦り気味の倉田栞音の葛藤が明らかになったり・・
今後メイン級になっていくキャラクターたちが徐々に掘り下げられていき、いよいよ合唱部が創部できそうな感じになってきました。
本作の見所
小泉日鞠
さすが主人公!
お隣に住む藤吉晃には幼馴染の女の子がいたようです。
ただし、テンプレ的な幼馴染キャラって感じではなく、ちょっと癖のあるヒキコモリ気味の女の子となります。
実は、藤吉晃と同じ高校に通っていて木村仁と同じクラスで最初の頃は登校してきていたようですね。
まあ、それを藤吉晃も藤吉晃の母親も知らなかったので、疎遠気味になっているということなのかもしれません。
「私、あいつの低い声マジで大嫌いなんだ。あいつの声が昔みたいにもどるなら、やってやっても・・」
木村仁に折原昂聖のイヤホンの修理を頼まれた際に小泉日鞠はこう言っています。
どうやら子供の頃の藤吉晃が絵本を読んでいる時の声が好きで、それがボソボソと自信なさげな低音になってしまったのが気に入らないようですね。
藤吉晃からすると「どないせぇちゅうねん!」って感じでしょうけど。
しかし、木村仁が藤吉晃の才能を力説するのを聞いて多少は興味を持ったようで、藤吉晃が選んだ曲を小泉日鞠に披露することになりました。
その結果・・
「子供の頃、絵本パクってごめん」
何でこのタイミング・・ってか、何でその絵本を持ってきてるんだって感じもしますが、もしかしたら小泉日鞠の方も何かキッカケみたいなものが欲しかっただけなのかも知れませんね。
「ひまちゃんそうゆうとこあって、来たあと何かしらちっちゃいものが無くなりがちで・・」
そして、絵本のことは藤吉晃も何となく気付いていたみたいですね。
というか、小泉日鞠のキャラクターがただの刺々しいヒキコモリだったのが一気に手癖が悪い感じにっ!(笑)
「私、さっそく実習で何かちっちぇえパーツいくつかパクっちゃったんだけど・・」
いや、ダメんだけど、何か漫画のキャラクター的には一気に愛嬌が増したような気がしました。
折原昂聖
相変わらず怖い感じの金髪ヤンキーですが、そんな折原昂聖のことも徐々に明らかになっていきます。
体育祭でも藤吉晃から借りているイヤホンを引きちぎられたことでブチ切れて大暴れしていたのですが、いつも聞いている音楽プレイヤーの曲を聴かせることで落ち着かせることに成功しました。
実は、具体的には語られていないものの折原昂聖の家庭環境は複雑だったらしく、赤ちゃんの泣き声や女性の悲鳴のような高さの音に長時間さらされていたことで軽度の難聴になっていたようです。
聞こえづらくなった音を脳が頑張って聴こうとすることで発生するのが耳鳴りなのですが、それを折原昂聖は死んだ弟の声だと思っていたようですね。
そして、施設にいた頃の小学三年生だった折原昂聖は、クリスマス会にきたジジィだらけのコーラス団の高い歌声を聴いた時だけその耳鳴りが治まったのだとか。
それでずっとイヤホンでクラシックの曲を聴いていたわけなのですね。
どうやら、耳鳴りが発生する付近の高音がコーラスの倍音現象で聴くと脳が安心して耳鳴りが治まることがあるのだとか。
なんで木村仁、そんなことまで知ってるんだって感じですけど、ともあれジジィばかりのコーラスを聴いて折原昂聖が、笑みを浮かべながら涙を流すシーンは感動的でしたね。
倉田栞音
工業高校という舞台なので女子キャラは少ないですが、倉田、加藤、長谷川の3人はなかなか良いキャラしていますね。
合唱部に入ってメインキャラクターになっていくのはどうやら倉田栞音のようですが、個人的には長谷川さんが地味に好きだったり・・
いや、ぶっちゃけ可愛いかって言われたらそういうタイプのキャラクターではないのですけど、性格は良いし地味に良い働きをしている素晴らしいキャラクターだと思います。
普通、漫画に出てくる女の子って、あまり可愛くない設定の女の子でも重要なキャラクターなら十分可愛いだろって感じで描かれていることが多いですが、木尾士目先生の描くキャラクターは必ずしもそうじゃないんですよね。
長谷川さん、お世辞にも可愛いとは言えません。
だけど、ものすごく魅力のあるキャラクターだと思うんです。
そういう意味では小泉日鞠あたりもそうですが、木尾士目先生はキャラクターではなく人間をちゃんと描いてるって感じがするんですよね。
一方の倉田栞音は、いわゆる残念美人的なキャラクターになります。
1巻の時点で、ストイックだけど不器用で何事もうまくできないキャラクターとして描かれていましたが、どうやら結構な葛藤を持っているキャラクターだったようです。
人に歴史ありって感じで。
それなりに良いとこのお嬢様で、もともとはコンクール常連になるほどピアノを頑張ってきたのですが、伸び悩み自分には才能が無いと諦めかけます。
「栞音ちゃんからピアノ取っちゃったら何も残らないじゃない!」
ピアノを止めるという倉田栞音に冗談交じりで母親の放った言葉に心が折れ、すったもんだの末に工業高校に入学して、だけど何もかもうまくできな状況というのが、倉田栞音が置かれている状況らしいですね。
そりゃあ、色々焦ったりイライラしたりもしますわ。
しかし・・
転んで倒れて北野先生の胸を揉んで、ノコギリの使い方というか力加減を制御できるようになったり、力を入れすぎずにピアノを弾けるようになったり・・
なるほどって感じもしますが、見た目だけならメインヒロインなのに、作中一番のコメディキャラになっている所が面白いですね。
憎めない感じの残念美人さんだと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
相変わらず、合唱と工業高校という珍しい組み合わせなのに、違和感なく魅力的な作品だと思います。
役者もだいぶ揃ってきて、そろそろ合唱部が出来上がりそうな感じになってきましたね。
1巻はだいぶ男くさい感じでしたが、女子のキャラクターもピックアップされ始めたところにも注目です。
ぶっちゃけ男キャラクターだけで構成しても十分に面白い作品だとは思いますが、やっぱり女の子キャラクターがいた方が花もありますしね。
そうはいっても、2巻まではどちらかといえば女子のエピソードは女子内で進行しているような感じで、日鞠ちゃん以外はあまり主人公の藤吉晃たちとの絡みはありませんでしたが、次巻以降は倉田さんとかとのやり取りも見られるのではないかと思います。
その辺、楽しみですよね~
次巻も楽しみにしています!