『ホウキにまたがる就活戦争(2)』若干人見知りが改善した残念系最強魔法使いの感想(ネタバレ注意)
『ホウキにまたがる就活戦争』は、すごい才能を持っているのに人前では発揮することのできない主人公の残念さが面白いファンタジー作品です。
最近の異世界ファンタジーといえば、異世界転生・転移して主人公が順風満帆に無双していく系の作品が主流ですが、そういう意味で『ホウキにまたがる就活戦争』は何か異質な作品なのかもしれません。
しかし、一昔前の主流という気もします。
実はすごい残念系最強魔法使いの活躍が楽しみな作品です。
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本作の概要
エイシャ城のお抱え魔法使いを目指し、タンゴに弟子入りしたニコですが、人見知りはなかなか改善できません。
凄い才能を持っているのに残念なニコは、師匠であるタンゴの高価な水晶玉を割ってしまい、弁償資金を稼ぐためにカジノにやってきたかと思えば、カモにされてしまうような残念ぶりでした。
しかし、ここでカモってきたディーラーのシジマと、助けてくれたバーテンのルイがタンゴの弟子になってくるとは意外な展開でしたね。
本作の見所
水晶玉
人見知りだけど実はすごいヤツってのがニコというキャラクターだと思っていましたが、人見知り以前に少々残念な感じでもあるかもしれません。
補助魔法の修行のために師匠のタンゴから高価な水晶玉を預かるニコでしたが・・
地面のくぼみに躓いてガッシャーン!
いきなり割ってしまいました。(笑)
「オレが貸した水晶玉持ってないけど、割ったりしてねーよな。仮にそうならお前の肉を削いで窯に入れて燻製にするぞ」
「あ、なんでもないです」
最初は正直に謝ろうとしたニコでしたが、機先を制されて打ち明けることができませんでした。
何とも残念な主人公ですが、気持ちはわからなくもないですね。
「1千万なんて・・マグロ漁船に乗るか夜のお店で鬼出勤するしかないよ~」
貧乏バイターに弁償できるような金額ではないようですが、かといって主人公がマグロ漁船に乗ったり夜のお店で働くようなファンタジーは嫌ですよ?(笑)
というか、この世界マグロ漁船とかあるのって感じ。
まあ、その辺はノリでしょうか?
ともあれ悩むニコの耳に入ったのはカジノで所持金10倍になった一攫千金の話。
これほど次の展開の読みやすいことも珍しいですが、キッチリ予想通りの展開に突入していきます。
カモられるニコ
いかにも怪しげなディーラーに勧められてポーカーに興じるニコ。
瞬く間に100万も稼ぎ出してしまいます。
・・が、賢明な人間なら気付いてしかるべき展開ですよね?
「ついさっきまで爆勝ちしていたのに、あっという間に流れが変わって・・」
最初の大勝で自分にギャンブルの才能があると勘違いしてしまったニコは、秒速で無一文に。
最初に良い気分にさせてカモにするのは常套手段ですし、そうでなかったとしても引き際の見極めがギャンブルにおいては重要なはずです。
というか、ニコは典型的なギャンブルで身を滅ぼすタイプですね。
負け分を取り返すための借金も膨れ上がり、1千万稼ぐどころか1千万の借金ができてしまいました。
僕はギャンブルだけはしないタイプの人間なのでニコのような行動原理は理解できないのですけど、ギャンブルで身を滅ぼすようなキャラクターってそれだけで残念に見えてしまいます。
いや、嫌いではないんですけどね。
幻影のシジマ
ニコをカモった怪しげなディーラーは、幻影のシジマという結構有名な魔法使いだったようです。
どうやらかなり落ちぶれてしまってはいるようで、物乞いのようなことをしたり少女を暗殺しようとしたり、生きるのに必死な感じです。
ですがこのシジマというキャラクター、善人というわけでは無さそうですが嫌いになりきれない愛嬌があると思います。
「さすがに良心が痛まんでもないが・・一生みじめな路上生活はごめんだ。・・悪いが死んでくれ!!」
自分を殺そうとしていることを知りつつもシジマに好意を抱く女の子と、微妙に良心の呵責を覚えながらも女の子を殺そうとするシジマ。
そして、何度も標的の女の子の殺害に失敗してしまうのですが、最後には女の子を助けてしまうことになるという不思議な関係が地味に興味深かったです。
預言者ルイ
カジノでカモられるニコを助けたバーテンのルイ。
ネタバレになりますが、いわゆる男装の麗人的なキャラクターですね。
100%当たる予言に絶望してしまっていた少女時代のルイは、ことごとくその未来を覆すタンゴに尊敬を抱きます。
そういうわけで、ルイもタンゴ塾の生徒になりました。
カジノでカモられたニコと、カモったシジマと、助けたルイという、ちょっと変わったというか、出会って早々因縁のある3人の兄弟弟子の誕生です。
「ルイくんのことが好き・・です」
助けてくれたからかルイが気になるニコでしたが、シジマに促されていきなりルイに告白してしまいます。
しかし、ルイは男装しているだけで普通の女性なので当然ながらフラれてしまいます。
フラれた上に同姓に告白してしまうとは、残念系主人公が確立されつつありますね。(笑)
合宿とシャルルとデク
ニコ、シジマ、ルイの三人の弟子と師匠のタンゴ。
1巻で主人公とプラス1人くらい。2巻3巻でメインとなるキャラクターが次々と登場してくるのはストーリー漫画定番の流れですが、『ホウキにまたがる就活戦争』もまたその王道の流れに乗っていますね。
登場人物も増えて賑やかになってきたところで、タンゴ塾は合宿を決行します。
「みんなで青春しようぜ!」と何故か楽し気なタンゴの勢いに押された形となります。
「人前では力を発揮できない人見知り・・。そこをつけば倒すことができる!!!」
しかし、そんな平和なエピソードの中に不穏な影。
前巻でニコに退けられた魔法使いシャルルとデクが子供に化けて近づいてきたのです。
「近づいて仲良くなって・・隙をついて殺す!!」
自信満々ですが、人見知りであることの隙をつくのであれば、仲良くなる前、初対面を装った方が効果的な気がするのですが、気のせいでしょうか?
ともあれ、シャルルとデクの2人と仲良くなっていくニコ。
しかし、タイミングを見てシャルルはついにニコに攻撃を仕掛けようとしますが、シャルル以外の誰かが先にニコに攻撃を仕掛けてきました。
しかもその攻撃はシャルルとデクにまで襲い掛かります。
まさかの敵キャラの絶体絶命のピンチでしたが、そこで2人と仲良くなっていたニコがキレます。
・・という所で今巻は終わりですが、次巻はニコの格好良いところが見られそうな気がしますね。
総括
いかがでしたでしょうか?
今巻は、前巻以上にニコの残念さが際立ちました。
おいおい大丈夫か主人公とツッコミたい!
タンゴの弟子が増えて賑やかになってきているのも良いですが、その出会い方が独特で面白かったです。
しかし、前巻ではそれなりにニコの凄いところも見せてくれましたが、今巻はそれは無し。
残念系主人公のすごいところも見たいのでそこは少し残念でしたが、最後の展開から想像するに次巻の最初には大きく活躍してくれそうな気がしますね。
次巻も楽しみです!