あるいは 迷った 困った

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『フルーツバスケット(14)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

依鈴のことが深掘りされていく14巻です。(前巻のレビューはこちら

初登場以降、じわじわと出番はありましたが語られることの少なかった依鈴ですが、この14巻で本田透と急接近。

依鈴の行動の理由が明らかになっていきます。

実は、個人的には印象の薄いキャラクターで、久しぶりに読み返していて「どんなキャラだっけ?」となってしまっていたのですけど、考えてみれば本田透と行動理由を同じとするかなり重要な立ち位置のキャラクターでした。

そして、前巻から引き続き由紀と生徒会のことが描かれています。

フルーツバスケット』におけるヒーロー役は夾ですが、実は由紀の変化が一番綿密に描かれているような気がしますね。

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本作の概要

夏休みに草摩家の別荘で慊人と話し、草摩家の呪いを解きたいと思うようになった本田透ですが、同じことを考えているのは本田透だけではありませんでした。

馬の十二支である草摩依鈴も同じことを考えていて、そして部外者でありながら草摩家に関わろうとしてくる本田透のことを疎ましく感じているようです。

そして今巻では、なぜ依鈴が本田透を遠ざけようとしているのか、その理由が少し見えてきます。

また、前巻から引き続き生徒会活動の中で変化していく由紀も見られます。

本作の見所

燈路と杞紗

始めて『フルーツバスケット』を読んだ時には感じなかったことですが、燈路と杞紗の2人がものすごく微笑ましく見えてしまいます。

燈路は生意気なガキだし、杞紗は可愛いけど子供っぽいというのが昔感じていた印象ですが、今なら2人とも可愛らしい幼馴染に感じられます。

読み手である僕の年齢が大きく変わっているのが、その感じ方の違いに繋がっているのは間違いないでしょうが、恐らくこの2人に対する感じ方が一番変化しているような気がします。

「ねーさっちゃん。おムコさんにしたくなるわよねー♡」

「その手の話題を杞紗にふるのはやめてくれる!?」

燈路とその母親の会話ですが、好意を抱いている女の子の前でこんな話をふられるのは恥ずかしいもの。恥ずかしがる燈路と反応の薄い杞紗の対比が面白・・微笑ましいですね。

一応、杞紗の方がお姉さんのはずですが、お互いが弟のようでいて妹のようでいて、そして兄のようでいて姉のような関係が良い感じだと思います。

本田透と依鈴

「ぐれ兄はしってるんだろ? 十二支の呪いを解く方法」

何となく今までの流れでも察せるところですが、依鈴の目的が本田透と同じく十二支の呪いを解くことであることがハッキリと明らかになります。

なんで紫呉が知っていると思ったのかは定かではありませんが、確かに紫呉は他の十二支にくらべると慊人に近い印象がありますから、それで知っていると思ったようですね。

ちなみに、燈路あたりは両親とうまくやっている十二支っぽいですが、依鈴はうまくいっていない側。

ただうまくいっていないのではなく、依鈴の両親はうまくやろうとお芝居をしてしまっていて、ある日突然ふとしたキッカケでそれが崩壊してしまったようですね。

そして、そんな依鈴を励ましたのが撥春だったようで、十二支の呪いを解きたいのは自分のためというよりも撥春のためということの方が大きそうな感じです。

そういえば、馬(午)という牛と字面が似ている十二支である依鈴が、牛である撥春と縁があるというのは面白い符号ですよね。

「呪いを解こうとするのはやめろ」

しかし、同じ目的を持つはずの本田透のことを依鈴は否定しようとします。

十二支を見下しているのかとか、余計なことなのだとか、本田透が部外者であることを殊更強調するような拒絶のしかたですが、依鈴の行動の理由を踏まえるとそれは建前なのではないかということが見えてきます。

依鈴の行動原理があくまでも撥春のために何かをしたいということなのであれば、それを他の人がしようとしていることは許せないことなのかもしれませんね。

「孤独は恐いと知ってる人間は、人間を愛さずにいられないから」

ですが本田透には本田透の行動理由がありますから、実のところ引くことを知らない性格の本田透が引くわけがありません。

徐々に本田透に影響されていっているような依鈴が印象的でしたね。

ゆんゆんご乱心

メンヘラ女子っぽい倉伎真知の行動をめぐり、なぜか真鍋翔と少し仲良くなっているように見える由紀。

実は真鍋翔と倉伎真知は異母兄妹で、何やら母親同士の競争に巻き込まれて大変な子供時代を送ってきたようですね。

「ボタンかけ間違えてそのまんまって感じ」

何というか、この両親との間に何か問題があるのって、まさに草摩家の十二支たちが抱えている問題に近いものがあって、中でも子供を自分の思い通りにしようという感じは由紀と由紀の母親の関係に近しいものがありますね。

「あ~らら・・なんですか? ゆんゆんまでご乱心ですか?」

そして、恐らく由紀は自分と似たような境遇でありながら自分よりずっとちゃんとしているように見える真鍋翔を見て何か思うことがあったようです。

「子供は親を取り替えられない。親が子供を取り替えられないように。親子には”当たり”も”ハズレ”も無いんだ。だったら、やっていかなきゃな・・」

これまで十二支と十二支の両親の問題を見てきた後だと、この由紀のセリフがとても前向きなものに感じられますね。

それにしても、考えてみれば真鍋翔が由紀と似た境遇ということは綾女ともにた境遇ということになります。

そんな真鍋翔が綾女と似たキャラクター性を持っているということ。

そんな真鍋翔を見て由紀が前向きになっているというのは、これまた良い感じの符号に思えてしまいますね。

また、その後由紀は携帯の契約書に保護者の認め印を母親に貰いに行きます。

その由紀の行動は、今までの由紀っぽくない行動ですし、母親の反応も前巻で受けた印象とは少し違って母親らしいものに変化しているのですが、やっぱり何かが変化したら周囲も併せて変化していくものってことなのかもしれませんね。

夾の本田透への理解

少女漫画における主人公の相手役(恋人的な意味で)のことをヒーローって言いますが、ネタバレになりますけど『フルーツバスケット』におけるヒーロー役は夾のはずです。

しかし、ここ最近は由紀のエピソードが中心で夾が空気になっていますね。(笑)

「見舞い言ってるのか? もしかして」

「なにやら夾君には最近、私の事を当てられてばかりですね」

しかし、ふと登場してきたと思ったら本田透への深い理解を示したり、ヒーロー感が強くなってきているのが印象的です。

ちょっと面白いのは、そういう夾の変化を感じ取っているのが本田透ではなく由紀であるところでしょうか?(笑)

倉伎真知と由紀

生徒会のごたごたで由紀と真鍋翔のやり取りが前巻から印象的な部分です。

ですが、倉伎真知に対する由紀の対応、何を考えているのかよくわからない感じだけど倉伎真知の由紀に対する反応も興味深くもあります。

興味深いというか、この2人がどうなるのかを知っているからなのかもしれませんけど、すべての言動に何か理由を付けたくなってしまいますね。

総括

いかがでしたでしょうか?

ここらへん夾の出番がかなり少なめですが、由紀のエピソードを通して本田透との親密度が伝わってきて、存在感だけはあるのが印象的ですね。

ですがしばらくは由紀のエピソードがかなり多かったはず。

個人的に好きな倉伎真知のエピソードもそろそろのはずなので、実はこの全巻レビューシリーズを先に進めるのも楽しみになってきているところです。(次巻のレビューはこちら