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『フルーツバスケット(18)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

ついに由紀と倉伎真知の関係が進展していく18巻です。(前巻のレビューはこちら

基本的には草摩家の物語である『フルーツバスケット』ですが、由紀が生徒会に入って以降は、主に由紀の周りでは学園ものっぽいエピソードが繰り広げられています。

草摩家のエピソードは物語の佳境というか、深入りしていくほどに暗く重たくなっていくところに、生徒会周りのエピソードはほっこりするようなものが多くて良いアクセントになっていますよね。

今巻の前半は卒業シーズンの学校周りのほっこりしたエピソードで構成されていて、後半は草摩家周りのエピソードが描かれています。

個人的には『フルーツバスケット』の中でも特に好きな由紀と倉伎真知の絡みが見られて満足ですけど、若干ツンデレっぽさもある草摩依鈴と本田透の関係がちょっと良くなっている点にも注目したいですね。

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本作の概要

ここ最近は人間味が見えてきた倉伎真知ですが、物を壊したりする癖は治っていません。

そんな倉伎真知の行動原理の理由が明らかになるとともに、由紀との関係に進展が見られます。

一方で草摩家の方では、依鈴が十二支の呪いを解くためにかなり踏み込んだことをキッカケに、十二支の神である慊人と一部の十二支メンバーの間が険悪なものになっていきます。

本作の見所

倉伎真知と完璧なモノ

初登場時から何かと破壊衝動があるタイプのメンヘラ少女だった倉伎真知。

最近は以前に比べると生徒会メンバーと打ち解けてきて、人間味があるところを見せるようになってきたものの、その破壊衝動は無くなっていないようです。

「なんでも実の弟を死なそうとして家を追い出されたらしいですし!」

そんな噂まで広まっているくらい、いまだ倉伎真知は周囲に馴染み切れていません。

真鍋翔も親から又聞きしただけで詳しくは知らないようですが、この噂を限りなく事実に近いらしいと認めています。

いったい倉伎真知の過去には何があって、なんで破壊衝動に駆られた行動を取るのか?

その答えがついに明らかになります。

「雪が積もるのは嫌だ。一面に広がる白い雪は、乱れなく広がるその「完璧」さは」

冒頭の倉伎真知のモノローグからは「完璧」への嫌悪が現れています。

ただし、完璧ではない腐海の森と化した自室を由紀に見られた時だけはかなり恥ずかしがっていたので、感性がおかしいとかそういうわけでは無さそうですね。

「真知は・・整理されたモノが嫌なの?」

完璧を嫌い倉伎真知に気付いた由紀の問いかけ。

そして、倉伎真知は由紀の問いかけに応えるのですが、初登場時だったら無視されていた可能性が高そうなので、そういう意味ではこの2人の距離が近づいていることが分かりますね。

「いつも緊張してた。少しでも「完璧」さを欠いたら怒られる。細い細い糸の上に立ち続けろと言われてるみたいで」

その結果、勉強だけできる無個性に育ったと母親に言われるようになってしまった倉伎真知。

母親のために努力してきて、そして育て方を間違えたとまで言われてしまった倉伎真知。

それだってあまり良い母親だとは思えませんけど、もしこの母親が「完璧」を求める育て方を認め続けていたら、倉伎真知は現在のような破壊衝動は持っていなかったかもしれませんね。

完璧に息苦しさを感じつつも、完璧であろうとしたのではないかと思います。

「・・今の真知が存在てくれる事が嬉しい・・」

母親に間違った子供だと認められなかった。

そんな倉伎真知にとって、今の倉伎真知を認めてくれる由紀は大きな救いだったのかもしれませんね。

「わ、私。私、寒いんじゃないかと・・思って。カゼをひくんじゃないかと思って毛布を寝てる弟にかけようと・・しただけで、そんなつもりじゃなくて・・っ」

由紀を自分のことを認めてくれる存在だと認識したからか、倉伎真知はつらつらと噂話の真相を話し始めます。

「・・妬んでなんか、なかったのに・・」

倉伎真知はずっと一人で哀しい事実を胸に秘めていたようですね。

そして、その後の由紀が男前すぎます。

「このまま雪が積もったらさ、足跡一緒につけて歩こう?」

言い換えれば完璧を一緒に壊そうと言っていることになりますね。

生徒会の会議でもあえて新品のチョークを折ってから使ってみたり、倉伎真知に対する配慮が現れています。

ぶっちゃけチョーク折るのはもったいないですけどね。(笑)

まあ、考えてみれば親の都合で育てられた経験は由紀にも共通するところなので、他の人に比べると倉伎真知の変わった行動への理解は深かったのかもしれません。

鈍感な由紀

倉伎真知に対しては理解の深い由紀ですが、プリンス・ユキの会長である皆川素子に対してはずっと鈍感でした。

皆川素子の卒業間際。

由紀に声を掛けた時の様子で初めて気付くという鈍感ぶり。

というか、自分のファンクラブらしいプリンス・ユキのことはさすがに把握していたとは思いますが、その会長が自分に好意を持っていることに思い至らないあたりは実際のところかなり重症の部類です。

「俺って・・鈍感・・」

「そらニブイわっ。今わかったんかい。先輩の気持ちっ」

真鍋翔のツッコミももっともですね。(笑)

それにしても、プリンス・ユキって独りよがりというか、自分勝手な行動ばかりしている印象もありましたが、皆川素子は最後に「大好きでした」と断ち切るようなことを言っています。

「だから私、祈っています。由紀が・・由紀も、由紀だけの倖せを手に入れることができますよう」

自分の気持ちとは無関係に由紀の倖せを願う皆川素子は、最後に少し好感度が上がったような気がします。

依鈴と猫憑きの離れ

依鈴は十二支の呪いを解こうとしている。

燈路から依鈴が撥春から離れた真相を聞いた撥春は、尋常ではない雰囲気で慊人の元に殴り込みをかけます。

依鈴はどこだと詰め寄る撥春にしらを切る慊人。

どっちもかなり感情的な言動しかしていないのでこのままでは完全に暴力沙汰に発展する様子でしたが・・

「依鈴は、病院に運んだよ」

猫憑きの離れに閉じ込められていた依鈴をクレノが助け出していました。

「ふざけんなてめぇ・・!! ウソばっかつきやがって・・閉じ込めただと!? ひでぇのはどっちだ!!」

クレノの裏切りを酷いと罵る慊人と、酷いのは慊人の方であるとキレる撥春。

完全に慊人のことを見限っているかのような言動で、その場から立ち去ろうとする撥春を、しかし慊人は「行かないで!」と呼び止めようとします。

もちろん撥春は止まらないのですが、慊人の様子を見ると実は十二支の呪いに一番捉われているのは慊人なんだろうなぁと思うようになりますね。

次の春までに

無事が判明した依鈴は、心配かけた手前なのかメソメソしている本田透に以前に比べると強く出れなくなってしまっています。

これは完全にツンデレですね。(笑)

しかし、十二支の呪いを解こうとする目的は同じ2人ですが、そのスタンスには若干の差があるようです。

紫呉によって、いつかは解ける呪いだと告げられた2人の反応の違いが興味深いですね。

「いずれでも、いつかでもっ、解けるなら・・解放できるならアタシはそれでいいっ」

「春までには・・次の春までには解けなくては駄目です」

いつか解けたら良いと言う依鈴に対して、次の春と明確な期限感を持っている本田透

本田透が他人の意見に対して反発的な反応をすることは珍しいですが、これは本田透が十二支の呪いを解きたいと思うに至ったそもそものキッカケに起因しますね。

要は、猫憑きの夾の幽閉を回避することこそが本田透が十二支の呪いを解きたいと考えるようになった根本なので、幽閉されるまでに呪いを解く必要があるわけですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

いよいよ慊人と十二支メンバーの関係に何かしらの変化というか、亀裂のようなものが生じさせることを予感させるような内容でしたね。

草摩家の十二支の呪い。

あと6冊でどのように解けていくのかに注目ですね。(次巻のレビューはこちら