あるいは 迷った 困った

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『フルーツバスケット(19)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

本田透と夾が急接近する19巻です。(前巻のレビューはこちら

かなり前から夾に気があることは明らかだったのに、お母さん一筋(?)という感じで今まで恋愛的な意味での感情を表に見せることが少なかった本田透でしたが、今巻くらいからその辺を大きく表に見せることになります。

必然的に夾の出番も増えていますね。

また、真鍋翔の彼女である中尾小牧が登場しますが、小牧と本田透の意外な関係性が明らかになったりと、注目度の高いエピソードが満載です。

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本作の概要

母親のことを忘れないために、母親のことを一番に考えようとしていた本田透ですが、一番大切な人を思い浮かべた時に出てくるのは母親ではなくなってしまっていました。

考えてみれば当然のことで、どうしたって生きている人間を優先するのは普通のことではあるのですが、本田透はそのことでとても葛藤してしまいます。

一方の夾は、本田透の祖父との会話を通して現在の本田透がどのように形成されているのかを少し垣間見ることになります。

本作の見所

本田透の気持ち

十二支の呪いを解きたい本田透ですが、その根本には夾の幽閉の回避、つまり夾と一緒にいたいという想いがあることが徐々にあふれ出してきていますね。

「これからはいつだって、どんな時だって一番に、胸に想うのはお母さんであり続けようと、そうして想い続けていれば、いつまでも色褪せる事はないと信じた」

言い方は悪いですがかなりマザコンの気がある本田透でしたが、そんな風に考えていたのですね。

しかし、今思い浮かぶのは母親ではなく夾になっていた。

今日子に夾と名前も似ていたり、幼少期の境遇も似ているのも何かしらの伏線なのかと思っていましたが、本田透にとって大事な人物になってくるという点でも共通してきましたね。

そして、本田透はそのことを母親に対する裏切りのように感じているのかもしれません。夾への想いを自覚していくほどに自己嫌悪が強まっているような気がします。

当然のように側にいた存在が亡くなってしまったからこそ、そこに確かに存在したことを忘れないように誓ったからこそ、夾への想いで上書きされつつあることに自己嫌悪しているのだと思われます。

しかし、個人的には「考えてみれば当たり前のことなのでは?」って思ってしまいます。

恐らくですが、本田透の誓いの本当の理由は母親が大事だったからなのではなく、自己防衛本能的なものだったのではないかと思うのです。

もちろん母親のことは大事だったのでしょうけど、母親が亡くなった時の本田透が置かれていた状況はかなり孤独なものだったので、その推測はそこまで的を外していないのではないでしょうか?

つまり、母親のためではなく自分のための誓いなので、自己嫌悪する必要性は全くないような気がするんですよね。

むしろ母親以外への想いで母親が薄れることは、それだけ孤独ではなくなったということなので、亡くなった母親にとってもむしろ喜ばしいことだったはずです。

夾と本田透の祖父

夾と本田透の祖父という珍しい組み合わせの会話が興味深いです。

本田透の祖父は、本田透のことを以前から「今日子さん」と呼んでいました。

ぶっちゃくボケているのではないかと思っていましたが、夾と話す時には「今日子さん」と呼びそうになるものの「透さん」と言い直しています。

つまり、別にボケているのではなく「今日子さん」呼びはわざとってことになりますね。

夾に悪趣味ではないかと指摘されていますが、その理由が本田透の誓いと同じなのが興味深いですね。

本田透のためなのか、それとも自分自身のためなのか、いずれにしても本田今日子が確かに存在したことの証としての「今日子さん」呼びなんだとか。

また、更に興味深いのは本田透の独特の口調の理由についても本田透の祖父から語られている点です。

どうやら父親の真似をしているらしいことは、かなり序盤に魚谷ありさの回想で本田今日子によって語られていましたが、口調が移ったとかそういうわけではなくもっと切実な理由があって意図的に真似されたものだったようです。

「お父さんに”にてない”からガッカリしてるの? どうしたらソックリになれる? ソックリになればお母さんげんきになる?」

父親が存在したことの証を母親に示すため。

子供の頃の本田透はそこまで小難しいことは考えていなかったと思いますが、要は失ったものの存在証明が本田透にとっては大事なことだったのだと思います。

「似てないから、口真似をしているだけです・・」

夾にどんな父親だったかと問われて、顔はあまり似ていないけど話し方が似ていると答え、すぐに否定する。

本田透の祖父が話していた通り、かなり父親と似ていないことを気にしているのは間違いなさそうな反応が興味深いですね。

居た堪れない由紀

「そうだ俺・・今日は用事があったんだぁ・・っ。今いきなり思い出したよ。いけないいけない。早急に出掛けないとなぁ・・っ」

由紀には本田透と夾に何があったのかまでは分からないはずですが、妙に異性的な意味で意識しあっている姿を見て居た堪れないような気持になってきているようです。(笑)

クール系のキャラクターの由紀ですが、確かに一つ屋根の下で自分もいるのにこうもどかしい感じのイチャイチャを見せつけられるのはキツイですよね。

「母親と新しい恋人に挟まれた息子の心境というのか」

そういえば以前も本田透に母親を求めていたのかもしれないと自覚していた由紀ですが、なるほど由紀は別に異性的な意味で本田透を慕っているわけではないので、こういう心境になるわけなのですね。

寂しさよりもキツさが上回るとも言っていますが、その表現がこれほどしっくりくる状況も珍しいと思います。

大きくなった紅葉

フルーツバスケット』は名作ですが、序盤と終盤では結構絵柄が変わっている漫画でもあります。

ですが年少のキャラクターが久しぶりに登場すると少しずつ成長している所はうまく描かれていますよね。

しかし、今巻での紅葉の成長はけっこうビックリしますよね。(笑)

相当背が伸びて長身イケメンになっているのにウサギリュックではしゃぐ所は変わっていないギャップが面白いです。

しかし、外見上の変化よりももっと大きな変化が次巻の紅葉には訪れます。

そう考えると、今巻での紅葉の成長は伏線めいても見えてきますね。

由紀のプレゼント

正直なところ今巻においてそんなに重要なエピソードでも無いんですけど、倉伎真知ファンとしては触れておきたい由紀から倉伎真知へのお詫びのプレゼントを渡すエピソード。

何のお詫びかといえば倉伎真知を綾女の家に呼び出して着せ替え人形にしたお詫びなのですが、綾女の家にあったモゲ太の置物に興味を示していた倉伎真知に気付いた由紀がそのモゲ太のペーパーウエイトをプレゼントしているのが憎い所ですね。

「大丈夫! あれは気に入った態度だ!」

そして、かなり分かりづらい倉伎真知の反応から手ごたえを感じている所も、昔の由紀では無さそうな感じで良かったです。

その後、お礼を言いそびれてソワソワしていた倉伎真知が可愛いですね。

それでいて気に入ったと素直に言えないところも。

「仕方ないです。アレは限定品で数自体が少ないんです」

そして、気に入っているかと思いきや実は綾女の店にあったモゲ太のグッズがレアものだと知っているくらい詳しい倉伎真知が意外でしたね。

中尾小牧

生徒会メンバーの真鍋翔は由紀の友人という感じで、他のメインキャラクターと絡むことは稀ですが、実は本田透と間接的に関係がありました。

真鍋翔の彼女の中尾小牧には、本田透と少々因縁があるようですね。

「肉好きなんですってね。さっき翔が肉☆天使・・って」

非常に可愛らしい女子ですが、朝からステーキを食べる肉好きだそうです。

いきなりおかしな紹介をされて怒っているのがちょっと可愛いと思ってしまいました。

そんな状況で、まあ用意していたものは仕方ないですが、夕飯のメニューを聞かれて「焼肉」とは答えづらかったに違いありませんね。(笑)

ちなみに、真鍋翔は由紀のことも家庭の事情で男装している女子なのだと嘘情報を中尾小牧に教えていました。

由紀と実際に会話するまでそれを信じちゃっていたところも良いです。

そんななかなかに魅力的な中尾小牧ですが、実は中尾小牧の父親が起こした事故こそが本田透の母親である本田今日子が亡くなった事故だったのです。

被害者と加害者という違いこそあれ同じ事故で親を亡くした2人。

例え本田透が被害者側の遺族なのだとしても、自分だけが不幸ぶっているような感じがして真鍋翔は気に入らなかったようですね。

この辺、ほんの少し立ち位置が変わっただけで見え方が変わりそうなところですが、僕には真鍋翔側の理屈がちょっと理解できませんでした。

確かに不幸に大小は無いのでしょうけど、第三者でしかない真鍋翔が本田透を責めるようなことを言うのはいかがなものかと感じました。

総括

いかがでしたでしょうか?

中尾小牧が地味に可愛かったですね~

全23巻の『フルーツバスケット』ですが、次巻でいよいよ大台20巻代に突入します。

まだまだ見所満載ですが次巻くらいから物語が大きな佳境に差し掛かっていくので目が離せませんね。(次巻のレビューはこちら