『フルーツバスケット(20)』全編アニメ化記念に全巻レビューします
十二支の呪いが解け始める20巻です。(前巻のレビューはこちら)
『フルーツバスケット』は全23巻の漫画です。
そう考えると20巻代に突入したことで、いよいよ終盤という感じになってきましたね。
そして、内容的にも佳境に差し掛かっています。
ついに気付いた想いを夾に伝えようと考えた本田透と、それに気づいた夾は人知れず抱いていた後ろめたさを本田透に語り始めます。
また、十二支の呪いも解け始めて、それを拠り所にしていた慊人が今巻ではかなり荒れていますね。
終わりへと向かう始まりと思わせるような内容になっています。
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本作の概要
母親よりも先に夾のことを考えるようになってしまったことにずっと動揺していた本田透でしたが、楽羅に諭されて夾に想いを告げる勇気を持とうとし始めました。
大きく物語が動く瞬間ですが、十二支の呪いの方にも進展があります。
既に紫呉によって「いつか」は解けることが示唆されていましたが、思った以上に早く解け始めるみたいで、今巻では紅葉と燈路。年少組の2人の呪いが解けてしまいました。
十二支の呪いを拠り所にしていた慊人の焦燥が非常に激しくなっていきます。
一方、本田透の想いに気付いた夾は、逆に自分の罪の意識を告白し始めます。
本作の見所
楽羅との喧嘩と本田透の決意
前々巻の依鈴とのやり取り。
十二支の呪いを解きたい想いのスタンスの違いについては、喧嘩と言われていましたが喧嘩というようなものではなかったと思います。
「夾のことをつっつかれるのが嫌で来なかったとか?」
依鈴の指摘はたぶん本田透にとって図星ですよね?
十二支の皆を守りたいという想いは詭弁で、夾には試すようなことを言って、そういう自分が卑怯なのだと本田透は思っているようです。
しかし、その裏側にあった本当の想いを依鈴に伝えるのですが・・
「そういうコトはちゃんと本人に言いなさい!!」
久々に登場する楽羅が横から入ってきますが、まあ確かにもっともなことを言っていますね。
本田透からしたら、まずは気まずくなってしまっていた依鈴と前々巻のやり取りの続きをしたかったってところだと思うのですが、その内容が依鈴からしたら自分に言われてもって感じのものですからね。(笑)
本田透はまだ若干混乱しています。
そして、横入りした楽羅の見た目はちょっと大人っぽくなっていますが、行動は変わっていません。
本田透を引っ叩いたところまではよくある修羅場シーンって感じですが、まさか昏倒させてしまうとは。(笑)
笑い事ではないですけど、ちょっと面白かったです。
そして、喧嘩は両成敗とお互いに謝らなかった本田透と楽羅でしたが、ともあれ楽羅の叱責をキッカケに本田透は止まらない勇気を出すことになったようですね。
解け始める十二支の呪い
今まで酉の十二支である紅野のみが呪いが解けた状態でした。
そして、紫呉の言っていたいずれは勝手に解けると思われた十二支の呪いは意外と早く解け始めます。
前巻で目に見えて大きく成長した紅葉と、紅葉ほどではないにしても身体的な成長の大きい燈路。
十二支の呪いとは無関係なところですが、見かけ上の変化の大きい2人から呪いが解け始めたのが符号っぽく感じてしまいますが、穿ちすぎでしょうかね?
「ボクはもうこんなに自由で、こんなにさびしくなった・・」
そして、呪いが解けた紅葉と慊人のやり取りが非常に興味深いです。
十二支の呪いと言いつつ滅多に動物には変身しなくなっている『フルーツバスケット』ですが、要するに十二支の呪いというのはそもそも動物に変身することそのものではなかったのではないかという風に感じますね。
異性に抱き着かれたり衰弱していたりすると動物に変身する性質はキッカケでしかなく、明らかに普通の人間より生きづらい体質からくる傷の舐めあい。
言い方は悪いですが、十二支の関係というのはそういうことなのだと思っています。
そう考えると十二支の神というのはただの寂しがり屋で、そんな傷の舐めあいの中心にいたいだけの存在なのかもしれませんね。
そう考えると、十二支の呪いが解けるごとに焦燥し、混乱していく慊人の様子にも説明が付くのではないかと思います。
「悪いかよ。それが僕の”常識”だったんだ・・! 今以外の生き方を誰も与えてくれなかったじゃないか!」
しかし、一方で十二支の神。草摩家当主として生まれ育った慊人の方こそ最も呪いに縛られているのかもしれませんね。
夾の告白
楽羅に諭されて夾に思いを告げる決意をした本田透でしたが、機先を制されて夾に告白されてしまいます。
しかし、これは愛の告白ではなく罪の意識の告白でした。
「おまえ俺が好きなのか・・?」
かなり豪胆な切り出し方ですが、夾のキャラクター的には意外な切り出し方でもありますね。
まあ、周囲からはかなり分かりやすいところまできていた2人なので、夾にもかなり確信があったのだと思います。
そして、明らかに本田透に好意を持っていて、しかも本田透からの好意にも気付いていた夾が、それを受け入れようとしない理由は自分が猫の十二支で幽閉される未来が決まっているからなのだと思っていました。
しかし、どうやらそうではなかったようです。
「おまえの・・母親、ホントなら死なずにすんでた・・」
夾と本田今日子に面識があることは以前から語られていた事実ですが、これはどういうことでしょうか?
夾は、自身の罪の意識を告白します。
それは、実は夾は本田今日子が事故に遭う現場にいて、助けようと思ったものの本田今日子を抱きとめたら衆目の前で猫に変身してしまう。
それを恐れて助けるのを躊躇してしまった自分が、本田透の好意を素直に受け入れることができないと思っていたのかもしれませんね。
さて、かなり衝撃の告白ではありますが、それを受けた本田透の感想が気になるところだと思いますが、それは次巻に持ち越しとなります。
総括
いかがでしたでしょうか?
『フルーツバスケット』は名作ですが、あまり1巻1巻の終わりで次が気になって仕方のなくなるような類の漫画ではなかったと思います。
しかし、20巻の引きはかなり続きが気になるものですよね?
夾の罪の意識の告白に対して本田透がどう答えるのか。
それに対して夾がどう応じるのか。
とても気になるところです。(次巻のレビューはこちら)