あるいは 迷った 困った

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『フルーツバスケット(23)』全編アニメ化記念に全巻レビューします

 

未来へと踏み出す最終巻の感想です。(前巻のレビューはこちら

十二支の呪いに縛られた草摩一族を描いた『フルーツバスケット』という作品もこれで最後です。

前巻までで十二支の呪いは完全に解けて、クライマックスの最終巻では新たな一歩というか、「これから」を匂わせるようなエピソードが描かれています。

また、本田今日子の最後の言葉。「許さないから」に込められた願いが明らかになり、モヤモヤも解消されることだと思います。

僕の場合は、この「許さないから」という言葉は夾の妄想だと勘違いしていたのでモヤモヤはありませんでしたが、このセリフは実際に本田今日子が発言したセリフだったっぽいんですよね。(笑)

だとすれば、それを解決せずには終われませんよね。

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本作の概要

ついに解けた十二支の呪い。

誰もが新しい一歩を踏み出そうとしていて、その一歩を踏み出そうとしているところが描かれています。

そして、十二支の呪いが解けたことが『フルーツバスケット』という作品におけるクライマックスなのだとしたら、その一歩を踏み出そうとしている所がエピローグなのだと思います。

そして、本田透と夾のその後にも注目ですね。

本作の見所

慊人と十二支

慊人が十二支メンバーを集めて、今までのことにけじめをつけようとします。

結論から言うと謝ろうとして誤れなかったのですが、こういう流れも嫌いではありません。

「君達が・・ようやくありのままの姿に戻れた・・ように。僕も・・ありのままの姿に・・戻る。君達は自由だ。・・遅くなったけど今まで・・」

慊人もまた誰よりも縛り付けられていたのだと思われますが、十二支メンバーを縛り付けていたことは事実なので、それに対する謝罪を口にしようとする慊人。

結局謝罪はできませんでしたが、この謝罪することの恐さに立ち向かおうとしていること自体が大きな成長というように思いますね。

保護者同伴デート

フルーツバスケット』という作品は少女漫画にしては恋愛要素薄めですが、終盤はだいぶ少女漫画らしいエピソードも増えてきました。

そして、最後の最後に主人公の本田透を中心とした恋愛的エピソードが描かれることになります。

夾と付き合い始めた本田透は、舞い上がっている感じがして今までと少し印象が違って見えますね。

最初のデートにはと同伴してくる保護者・・というか親友二人。

親友である本田透を取られて夾にちょくちょく意地悪したくなっている感じが青春って感じがします。

また、ちょっとしおらしくなっている珍しい花島咲も見られます。

「連れていってしまうのね・・。いつかは、そうよね。そんな時が来るって知っていたわ。でも・・勝手よ・・」

反射的に夾が誤ってしまいそうになるような様子の花島咲でしたが・・

「今ここで”ママ”って呼んだら許してあげる」

ちゃっかりと外堀を埋めようとしているあたりはさすがですね。(笑)

肉☆天使

由紀が遠い地の大学を受けるという、兄である綾女とも随分と仲良くなった由紀が綾女に部屋探しに行ってもらっているという微笑ましいエピソードですがお約束的なエピソードが面白い。

真鍋翔の彼女である中尾小牧は「肉☆天使」と呼ばれていますが、中尾小牧はそもそも今までに1回しか登場していないし、当然「肉☆天使」のエピソードも一度しか語られていません。

なのにお約束として定番化しているように見えるのが面白いです。

倉伎真知が土産に持ってきた肉に喜び、倉伎真知を怒らせた真鍋翔が肉をクッションに殴られたら・・

「お肉がー!!!」

彼氏である真鍋翔よりもお肉を心配する。(笑)

こういう一貫性のある特性ってたいてい面白いですよね?

ちなみに、この「肉☆天使」ネタは続編漫画であるフルーツバスケットanotherでもちょっとだけネタにされています。

夾と本田透の進路

遠くに行くのは由紀だけではありません。

夾もまたいずれは師匠の道場を継ぐために、遠くにある師匠の知り合いの道場に働きながら通おうというのです。

そして、そこに就職活動をしていた本田透に一緒に来て欲しいと声を掛けます。

「おまえを好いてる奴らとひき離すことになるって、勝手だって、わかってる。でも俺もう、自分を誤魔化す生き方は・・」

周囲のキャラクターはみんな本田透が夾とともに歩いていくことを悟っていましたが、それが文字通りの意味になってきました。

しかし、以前までの夾であれば本田透を連れて行こうとはしなかったでしょうし、そもそも積極的に自分の将来を見据えた行動を起こそうともしなかったであろうことを思うと感慨深いものがありますね。

許さないから

死の間際、夾に向かって「許さないから」と言った本田今日子ですが、十二支の呪いも解けた今この言葉の真意こそが最後の謎だったのだと思われます。

「ひとつだけ夾君に意見します。お母さんは夾君を恨んでなどいません。もし本当に許さないと言ったのだとしてもそれは、憎しみから生まれたことばなどではありません。絶対、絶対です」

意外と頑固で譲れないことは絶対に譲らない性格だと自覚している本田透は、一つだけと夾に意見します。

もちろん、さすがに夾と本田今日子に接点があったことすら知らなかった本田透には本田今日子の真意は分からないはずです。

しかし、真意は分からずとも信じてはいるようで、そしてその信頼は間違っていなかったようです。

本田今日子の「許さないから」の意味は、正確には本田透を守ってくれないと、今度こそ見つけ出してくれないと「許さない」という意味で、一人孤独になってしまう本田透を思っての言葉でした。

つまり、事故死を夾のせいだとは露ほども思っていなかったのですね。

エピローグでも手をつなぐ

これで本当に本当のエンディングですね。

こういう漫画のエンディングって、何年後かの日常が描かれていたりするのはよくあることだと思いますが、よくあるケースとしては小さな子供がいて新しい家族ができているくらいの未来が描かれていることが多いような気がします。

しかし、『フルーツバスケット』では本田透と夾がおばあさんとおじいさんになって、孫までいるところが描かれています。

ここまでの未来が描かれているのはちょっと稀ですよね?

恐らく、変化していくことをずっと描いていた『フルーツバスケット』ですが、変化しないものもあるってことを言いたかったのではないかと思います。

夾の告白時、本田透は「手をつないで一緒に」という表現を使っています。

夾の告白後にはしばしば手をつないでいる描写が見られるようになりました。

そして、このエピローグでは年を取った2人が変わらずに手をつないで歩いている後ろ姿が描かれています。

変化していくことを描いていた作品で、最後には変化しないものを描くっていうのが何だか面白いと思いました。

総括

いかがでしたでしょうか?

最終巻の表紙を本田今日子が飾っているのも何だか感慨深いですよね。

思えば『フルーツバスケット』は本田今日子が事故死したその後から始まる物語になっています。

であるにも関わらず、最初から最後まで物語の中心というか、根幹にいた本田今日子というキャラクターは本当に特殊だったと思います。

故人が物語を動かすなんて言うと大げさなのかもしれませんが、『フルーツバスケット』という作品には確かにそういう印象もありましたよね?

暗くて重いところも多い作品で、実のところ個人的には好きなタイプの作品なのかと問われたら微妙なところなのですが、それなのに『フルーツバスケット』の場合はほわッと気持ちが温かくなるところもあって最後まで楽しんで読むことができました。

さて、これで過去作品の全巻レビューシリーズが一つ終わってしまったので、次からはまた別の作品のレビューを書いていきたいと思っています。

フルーツバスケット』は温かい作品でしたが、次はThe少年漫画って感じの熱い作品にしようかなぁと思っています。