あるいは 迷った 困った

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『透明の君(2)』2巻でちょっと化けた漫画の感想(ネタバレ注意)

 

透明の君の1巻を読んだ時、正直なところ微妙な感想を持っていました。

面白くはあるけど、後半の超展開を読んだ瞬間にちょっと萎えてしまったところがあったのですよ。

なのでレビュー記事だって書こうとしていませんでした。

あの展開の後、一体どう物語を進行させるのかには少しだけ興味があったので2巻も読むだけ読んでみようと読んでみたわけなのですが・・

「あっ、これ面白い」って思いなおすことになりました。

1巻のラストがかなり賛否ありそうな感じだったので、1巻で切ってしまったような人も少なくないのではないかと思いますが、2巻で結構化けた感じがするので、もう少し先まで読んでみても良いかもしれませんよ?

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本作の概要

主人公の日野正太を救った立花光里でしたが、夏休みが終わると日野正太以外の人物から立花光里が消え去っていました。

日野正太は必至で立花光里を探し、そして見つけますが・・

なんと立花光里はAIの人格と入れ替わっていました。

要は体だけ残した自殺のようなものですが、天真爛漫に見えた立花光里がなんでAIの人格と入れ替えることを選択してしまったのか?

それを探っていくような内容の漫画になっています。

本作の見所

AIの人格

立花光里の中にあるAIの人格がなかなか興味深いですね。

前巻の時点では日野正太に対して協力的ではあるものの冷たい機械的な印象を受けましたが、どうもそれだけではなさそうな感じです。

立花光里のようにこの世から消えたくてAIと人格が入れ替わっている人は結構存在しているらしく、ということは考えてみれば当たり前ですが意外と感情豊かで、自分の体の持ち主である立花光里のことを知りたいと思っていたりもするようですね。

「3ヵ月以内に立花様の人格を元に戻さないと、もう二度と立花様はこの世に帰って来ません」

恐らくですが、透明の君は立花光里の人格を取り戻す3ヵ月の物語って感じになるのだと推測されます。

主人公である日野正太の目的が立花光里との再会なわけですからね。

しかし、そんな中において立花光里の中にあるAIの人格がかなり人間的なものであることが明らかになっていく。

笑ったり泣いたり感情的なところもあり、立花光里ではないというだけで彼女もちゃんとした人格なんですよね。

「もし立花様の人格が戻った場合、私はどうなるのでしょうか・・?」

不安というよりは純粋な疑問という感じでのセリフですが、この辺が後に本物の不安や葛藤に繋がっていくんだろうなぁと想像されます。

立花光里を探る

探していた立花光里が見つかったと思ったら中身はAIの人格だった。

そんな状況に混乱しつつも、立花光里の元の人格を求めて動き出すあたり、日野正太はさすが主人公って感じですね。

しかし、誰もが立花光里のことを忘れてしまっている中、AIの人格という手掛かりがいるとはいえ、かなりの手探りの状況であることは間違いなさそうです。

そんな中で、どうやら立花光里のことを覚えているらしい立花光里の従姉妹・杉山陽優と、覚えているらしい様子なのに覚えていないと言い張る陽優の母親と出会います。

立花光里のことを探ることの延長線上に立花光里の人格を取り戻す手掛かりがあるのかは定かではありませんが、なんで立花光里がこんな自殺のようなことをしたのか、その理由をまずは探ろうってことなのかもしれませんね。

立花光里の母親

「日野さんは杉山家に近づけませんし・・彼女が何かを隠してるとしたら、私の前では新しい反応を見せるかもしれません」

明らかに陽優の母親が何かを知っている様子だが、日野正太は既に陽優の母親に警戒されているので近付きづらいですが、中身が別人格のAIとはいえ確かに立花光里が目の前に姿を現したら何か反応を見せるかもしれないという考えですね。

そして、その考えは正しくて陽優の母親はある反応を見せるのですが、それがまた予想外の方向の反応でした。

「奇跡だと思った・・! 光里を産んだことすごく後悔してたから・・!!」

陽優は立花光里の従姉妹ということですが、その母親が立花光里の実の母親?

なんとも複雑なところですが、この母親はどうも立花光里のことを疎ましく思っていたようです。

何故か誰もが忘れてしまっていることを好都合に捉えているとんでもない母親で、目の前に現れた立花光里にも赤の他人として二度と関わらないことを約束させようとし、それを拒むのであれば殺すと脅します。

何とも自分勝手な母親ですが、一応立花光里・・というよりその中にいるAIの人格はその約束を飲むことにします。

また、最後に父親である立花賢哉の存在も仄めかされていますが、母親が思わせぶりなことを言っていたので、ここにも何か立花光里の人格を取り戻す手掛かりがあるのかもしれませんね。

「・・今日あなたに会ったのが、立花光里じゃなくて良かった」

そして、立花光里の中にあるAIの人格の放った捨て台詞がこれです。

この人格は立花光里とは別人ではあると思うのですが、この人格そのものの性格なのか、体が立花光里だからなのか、実は立花光里の人格が元になっていたりするのか、などなど色々と想像できますが、立花光里の母親の言動に涙を流すくらいに感情が乱されています。

それもまた興味深いところですよね。

日野正太の両親

1巻の時点から主人公の日野正太は、両親から過度の期待・・を通り越した虐待を受けていました。

両親との間に問題がある主人公に対して、どうやらヒロインの立花光里はもっと複雑そうな家庭に育った可能性が出てきたのは何かしらの符号でしょうか?

SF的な作品ではありますが、こういう複雑な家庭内の問題について触れていこうとしている作品なのかもしれませんね。

そして、立花光里のために両親に嘘を付いていた日野正太は今まで以上に人格を否定されるような虐待を受けることになり、家出して立花光里の元にやってくることになります。

立花光里の人格を取り戻すためには、自らを縛り付けようとする両親が大きな障害となる日野正太ですが、この両親との間の問題がどうなっていくのかも興味深いところですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

なんとなく今後の展開も見え始めている感じもしますが、本作品では意外と多くの問題が語られています。

立花さんの意図が最大の謎であることは間違いありませんが、主人公の家庭内の問題や、立花さんの母親の抱えている問題。

それに立花さんの中に存在するAIの正体や、立花さんが戻ってきた場合にどうなってしまうのかなど、気になるところは山積みです。

これは続巻も読んでいきたいと思います。