『フルーツバスケット(3)』全編アニメ化記念に全巻レビューします!
世界で一番バカな旅人が素敵な3巻です。(前巻のレビューはこちら)
猫とネズミが喧嘩してマラソン勝負をしていたら、牛が出てきて猫と喧嘩になりました。
バレンタインには猫を求めて猪がやってきて、ホワイトデーには兎が温泉のお返しにやってきました。
・・『フルーツバスケット』のあらすじを草摩家を十二支の動物に置き換えると何だか絵本のあらすじみたいになりますね。(笑)
3巻には新たな十二支は登場しませんが、牛と猪と兎がちょっとだけ深堀りされはじめています。
?
本作の概要
『フルーツバスケット』における日常になりつつある由紀と夾の喧嘩ですが、今回は学校の持久走での勝負に夾が燃えています。
ですが夾に勝負を仕掛けたい草摩撥春によってそれは邪魔されてしまいました。
バレンタインにホワイトデーに少女漫画らしいエピソードが中心ですが、何だかアットホームな雰囲気に仕上がっているのが魅力的だと思います。
本作の見所
草摩撥春
今巻が初登場というわけではありませんが、初めて物語の主軸に関わってきます。
登場シーンにシュールな魅力がありますよね。
女の子たちから視線を向けられるロックテイストのイケメン男子ですが、格好良くゴーグルを付けて、ブーツで地を蹴り跨るのは・・
バイクかと思いきやママチャリでした。(笑)
中学生だから仕方ないですよね。
まあ、かなり天然系のキャラクターではあります。
「日曜日にでかけたつもりが、知らない間に知らない街に入り込み、気づけば三日過ぎていた・・」
いやはや、よく誰も通報しなかったな草摩家。
そして、一度キレると手が付けられないブラック春になるという特性を持っています。
草摩楽羅もそうでしたが、草摩家はキレやすい人間が多いんだろうか。
夾も喧嘩っぱいやいし、由紀も売られたら買うし、意外と血の気の多い家系なのかもしれませんね。
バレンタインデー
バレンタインデー付近になると街中でそれっぽいチョコを売っているのをよく見かけるので、縁があろうが無かろうが思い出すことになるバレンタインデーですが、夾は全く忘れていたようです。
「帰る・・いや、だめだ・・家も危険だ。旅・・そう旅に出る。俺はしばらく姿を消す!!」
そして、思い出すや否や様子がおかしくなる夾。
勘の良い読者ならすぐに気づくでしょうけど、楽羅を警戒しているわけですね。
猪突猛進に夾にアタックする楽羅。
バレンタインデーに思い人にこうまで避けられるのは可哀想な気もしますが、あんな形相で追ってこられると男は怖いですよ。(笑)
そして、本田透もお世話になっている人たちに義理チョコを渡して回っていますが・・
これが後からちょっとした波乱を呼ぶことになります。
ブラックな紫呉
今巻ではブラック春なんてキレた少年が登場しますが、本当にブラックなのは強かな大人だという話。
「この前もさ。僕、ちょっと夾君突ついちゃってさ。夾君とても乱れちゃって。でも透君と一緒に帰って来た時はもうケロッとしてたよ。まるで二人の精神安定剤みたいだよねぇ」
人の良い顔をしていて実は自覚的に本田透を利用していると認めている紫呉。
この時点でどう利用としているのかは判断が難しい所ですが、こういう強かな大人の方が分かりやすくキレる撥春や楽羅よりよっぽどブラックですよね。
昔読んだ時はあまり抱かなかった印象ですが、やっぱり読む年齢が変わると受ける印象も変わるのかもしれません。
世界で一番バカな旅人
修学旅行の積立金の支払いを延滞しているらしい本田透。
一応大丈夫らしいですが、真面目にバイトしているのに何でこんなことに?
・・ってバレンタインのチョコ代かとみんな一斉に気付きます。
「そうだよねぇ。チョコが空から降ってくる訳ないし透君が自腹切ったに決まってるよねぇ」
バレンタインのチョコ、高いですもんね。
自分のことを差し置いて義理チョコを配っていた本田透に夾がキレかけますが、さすがに自制します。
そして、紅葉はクラス会で読んだ「笑える話全集」に収録されていた「世界で一番バカな旅人」という物語を引き合いに出して言います。
「誰かにとってはそれがバカでも、ボクにとってはバカじゃないだけ。誰かにとってはだましがいのある人でもボクはだまさないだけ。ボクは本当に喜ばせてあげたいと思うだけ」
「世界で一番バカな旅人」というのは要はグリム童話の『星の銀貨』的な物語で、ただただ周りに搾取されるだけのバカでお人好しな旅人を笑うような物語となります。
最初、紅葉がこの話をどういう方向に持っていこうとしているのか予想できませんでしたが、要は本田透の自分のことを差し置いて人に施してしまうような所はバカにも見えるかもしれないけど、それを愛おしいと思うから自分は本田透を騙さないし喜ばせたいということが言いたいようです。
なんだか回りくどいような気もしますけど、それで夾にも納得させてしまいましたし、何だか素敵なエピソードだと思います。
ホワイトデーの温泉旅行
そして紅葉が本田透に持ち掛けたホワイトデーの贈り物はみんなでの温泉旅行でした。
「温泉など・・そのような高価な地へ私がお母さんを差しおいて・・許される事なのでしょうか・・」
意外と・・いや意外でも無いか。貧乏性な感じに尻込みする本田透が可愛らしいですね。
そして、夾に心の中でツッコミされてしまっていますが、温泉に来た程度でお姫様気分になれる本田透は意外と幸せ者なのかもしれません。
この辺も無いものねだりしない性質がでている感じでしょうか?
そして、問題は本田透と一緒に温泉に入ろうとしたり、寝ようとしたりする紅葉です。
というか実際に同衾しちゃってます。(笑)
本田透からすれば相手が子供だからって感じなのでしょうけど・・って、それでも小六くらいに思っていたようなので、小六はアウトなんじゃぁって思わなくもないですが、そもそも実は一つ年下の撥春の同い年だった紅葉。
最後に明らかになってさすがの本田透も驚いて混乱していました。
というか、由紀と夾は明らかに本田透が勘違いしてるんだからもっと言ってやれよって感じですね。(笑)
それにしても、十二支の本田透と比較的年齢の近い面々は見た目と年齢が逆のキャラクターが多いですね。
総括
いかがでしたでしょうか?
少女漫画なのにバレンタインデーのイベントが色っぽい事にはならず、なんというか家族の中のバレンタインデーっぽさがあるのが、『フルーツバスケット』っぽい感じがして好きです。
少女漫画らしいラブコメ要素もありますけど、どっちかといえば家族というか、居場所のようなものが描かれてる作品だと思うから、こういう雰囲気の方が『フルーツバスケット』らしいって感じます。
かつて読んだことがあって『フルーツバスケット』の作品性をある程度分かっている状態で久しぶりに読むと、より一つ一つのエピソードに『フルーツバスケット』らしさを感じられるから不思議です。
さて、3巻は割とキリの良いシーンで終わっていましたが、4巻はどんな話だったかなぁ~
そこまで何度も読み返したことがあるわけではないので各巻のエピソードの順番とかはうろ覚えですが、それだけに楽しみも大きいです。(次巻のレビューはこちら)