『フルーツバスケット(6)』全編アニメ化記念に全巻レビューします!
猫の本当の姿が現れる6巻です!(前巻のレビューはこちら)
1巻から登場しているメインキャラクターって次々と登場する十二支よりもまだまだ描かれていない部分がるという感じがしますが、今巻では猫の十二支である草摩夾がひたすらフューチャーされています。
2001年のアニメ化の際には最終回を飾った重要のエピソードなので大注目ですよ!
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本作の概要
猫の物の怪が雨を嫌いだからか、雨の日になると体調が悪くなる夾。
本田透は心配しますが、そんな雨の日に夾の武道の師匠である草摩籍真が草摩家に現れれます。
しかし、優しくも厳しい師匠は本田透のいる草摩家をぬるま湯と称した夾を逃げているだけだと諭し、猫の物の怪の本当の姿と本田透を引き合わせます。
本作の見所
雨の日は体調が悪くなる
気候の変化が体調に影響することは往々にしてありますが、雨の日の夾の体調の悪さはかなりのものに見えます。
「傘を持つのもお辛いならば、どうぞこちらへっ・・っ」
心配した本田透がそう提案しますが・・
思春期男子である夾は照れてしまい、そして照れ隠しに怒ってしまいます。
「それでは不本意かもしれませんが猫の姿になられまして、僭越ながら私がお抱きして帰・・」
「もっとできるかアホー!!!」
本田透、人の心配をするのは良いけど、もう少し思春期男子のそう言われた時の心境を考えてあげた方が良いと思います。(笑)
人を遠ざける人
忌み嫌われる猫の物の怪の夾ですが、考えてみれば楽羅がどうして夾に付きまとうのかについてはまだ語られていませんね。
夾自身、なんでなんだと楽羅に疑問をぶつけますが、それははぐらかされてしましました。
「気づいてないの? それは、夾君の方からだったんだよ?」
楽羅の夾に対する言動の理由までは今巻時点で語られませんが、この楽羅のセリフはちょっとハッとするところがあるかもしれません。
要は、人から遠ざけられる人は、その人自身が人を遠ざけようとしているのだと楽羅は言いたいのだと思います。
まあ、十二支というか猫の物の怪というか、忌み嫌われる理由が理由なだけに夾の場合に完全に当てはまるかどうかは分かりませんけど、確かに人を遠ざけようとしたら結果的に人から遠ざけられているように見えますからね。
猫の物の怪
草摩家に夾の師匠である草摩籍真が現れました。
本田透たちの前ではぶっきらぼうに振舞っていた夾が、籍真の前では過去一で嬉しそうにしているのが意外な表情って感じで良いですね。
しかし、籍真の目的は夾に猫の物の怪と向き合わせることにあったのだと思われます。
猫の物の怪としての本来の姿を自分を癒してくれる本田透に見られたくないから、そこから逃げ出したい言い訳として草摩家を「ぬるま湯」と称する夾を籍真は失跡します。
そして、意図的に本来の猫の物の怪の姿になってしまった夾と本田透を引き合わせます。
「コレが夾の本来の姿なの? 体が醜くひしゃげてるよ? それに何? なんてひどい臭いなの」
子供の頃の慊人は夾をそう評したようですね。
「・・あれが猫憑きの夾が隠していたもう一つの姿です・・」
怖いと思ったか。
癒してくれるかと本田透に問いかける籍真。
「ものすごい異臭です。何かが腐ったような臭いが充満して・・嗅いだ事もない臭い。見た事もない姿。あれが夾君」
さすがの本田透も、本来の猫の物の怪の姿には嫌悪感は隠し切れません。
「今の・・夾君は声をお聞きしても夾君ではないみたいで、見た事もない姿で、怖いです・・。でもこれからは、ちゃんと理解っていきたい・・っ」
夾本人に、夾の姿が怖いとハッキリと言う本田透。
しかし、その上で一緒に悩んで一緒に過ごしたいと。
「ありのままを受けとめられる自分になりたいと思うのです」
今巻の初めにも本田透はそう言っていましたが、まさに有言実行した形となるわけですね。
夾の母親は、夾を突き放しこそしなかったものの間違いなく猫の物の怪の姿を受け入れていなかった様子があります。
いや、猫の物の怪の姿を受け入れることができなかったのは本田透ですら例外ではありません。
ですが、それは夾の母親が愛情で誤魔化して見ようとすらしなかったものを、本田透はそれをしっかりと「怖いもの」として見た上で、それでも夾といたいと言ったわけですね。
「そうやっておまえは俺の中の醜い感情を、泥づいた物思いを、ひとつずつ溶かしていってしまうんだ」
忌み嫌われるものとして遠ざけるのではなく、見たくないものを見ないのでもなく、怖いものとして受け入れるのが夾にとっての正解だったのですね。
いや、夾に限った話ではなく、人を受け入れるというのはまさにこういうことなんだと気づかされました。
由紀と綾女の兄弟
さて、本田透に受け入れられたことで一つ変化のあった夾ですが、由紀にも変化が訪れつつあります。
「だから・・良かったら今度、兄さんの店に行ってみたいな・・って。これからはもう少し兄さんの事理解していけたらって」
兄である綾女との関係に対して、少しずつ歩み寄ろうとし始めている由紀。
しかし、綾女の方はウェルカム状態なのですが、言動があれなせいでわだかまりが解けそうな雰囲気になってもそうならないのが面白いですね。(笑)
綾女の店で働く店員の倉前美音の綾女と似た空気の女性ですが、さすがに初対面の倉前美音の暴走には強くツッコミできない由紀が新鮮な感じだと思います。
「本田さん・・俺・・兄さんを一つ理解できたよ。兄さんはとにかく・・余計なセリフや行動が多すぎる」
その辺を割り切って接さないとダメだということに気づいた由紀ですが、言ったそばから綾女の言動に腹を立てたりしています。
しかし、綾女初登場時にあった刺々しさは無くなってきているように感じられますね。
総括
いかがでしたでしょうか?
恐らく、「変わっていくこと」というのはフルーツバスケットのテーマの一つなのだと思います。
今巻では夾と、そして最後には由紀も少しずつ自分が変わっていくことを意識し始めていますね。
それにしても、『フルーツバスケット』は少女漫画には珍しく恋愛事はあまり描かれていない作品ではありますが、だからといってその要素が皆無というわけではありません。
僕は最初、由紀が本田透にとってのヒーローだと思っていましたが、ネタバレすると最後には夾がそうなったので意外に感じた記憶があります。
しかし、こうして結末を知っている状態で改めて読み返すと、夾の見え方が変わって面白いと思います。(次巻のレビューはこちら)