『フルーツバスケット(9)』全編アニメ化記念に全巻レビューします
花島咲の過去が明らかになる9巻です。(前巻のレビューはこちら)
9巻は色々と見所の多い巻です。
7巻ラストの少しだけ登場した生徒会役員のメンバーがちゃんと初登場したり、『フルーツバスケット』には珍しい恋愛的なエピソードが魚谷ありさを主人公に描かれているのが意外だったり、夾の実の父親が回想とはいえ登場したり。
何より本田透の記憶にある帽子の少年の正体が明らかになったりと、少し物語が進展したような気がする巻でした。
個人的には好きなキャラクターである花島咲成分が強めなのがうれしい巻です。
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本作の概要
ついに始まった夏休み。
ですが由紀は生徒会の引継ぎで学校へと向かいます。
そこでついに由紀は、十二支のメンバーにも引けを取らない個性的な生徒会メンバーと対面します。
魚谷ありさの少女漫画じみた恋愛や花島咲の過去など、本田透の友人たちのエピソードも満載です。
そして、ついに本田透思い出の帽子の少年の正体が明らかになります。
本作の見所
生徒会メンバー登場
あれだけ拒否っていた生徒会長ですが、やると決めたからにはしっかり全うしようとするのが由紀というキャラクター。
夏休みだというのに真面目に引継ぎのために学校に向かいます。
そして、そこで始めて生徒会役員のメンバーと対面します。
副会長の真鍋翔と、会計の倉伎真知。
2人ともなかなか個性的で魅力的なキャラクターなのですけど、十二支の物語である『フルーツバスケット』に十二支以外のキャラクターが新規に登場することは今まであまりありませんでした。
だからなのか、十二支メンバーの登場より新鮮味が感じられて、初登場時期の遅い十二支メンバー以上に生徒会メンバーの方が印象に残っていたりします。
「それにしても・・この真鍋って男のノリは誰かを思いだす・・っ。生理的拒絶反応すら起こしかねない。この・・発言と行動がちぐはぐな上、他人の事などお構いなさ気なこのノリは・・」
真鍋翔の言動は、由紀の苦手としている綾女に非常に似ています。
澄ましているようでいて意外と振り回され体質の由紀ですが、今後はその傾向が強くなりそうですね。
そして倉伎真知は、過去の魚谷ありさとはまた違う意味での危うさがありそうな雰囲気で初登場します。
今巻の時点ではセリフも少なくキャラクターが掴み切れない感じですが、後の展開を知っている人からしたら、由紀と倉伎真知の出会にニマニマしてしまいそうです。(笑)
倉伎真知は作中での変化がかなり大きいキャラクターで、個人的にはかなり好きなキャラクターだったりします。
魚谷ありさに出会いが
7巻でのヤンキーな感じの武勇伝が似合いすぎる魚谷ありさですが、恋愛的なエピソードの少ない『フルーツバスケット』において恐らく最初の、少女漫画的な恋愛エピソードの主人公になります。
また、バイト中の魚谷ありさの姿がヤンキー感が抜けきらない普段の感じとは違った可愛らしさがあるところにも注目ですね。
魚谷ありさが恋したコンビニの客である紅野は、苗字こそ名乗っていないものの実は草摩の十二支の一人なのですが、本田透以外のキャラクターが十二支にである草摩に深く関わる珍しいエピソードでもありますね。
花島咲の過去
個人的に一番好きなキャラクターである花島咲は、最初から十二支メンバー以上に謎めいていましたね。
しかし、毒電波とか言っていた謎能力がどうやら本物っぽく、周囲の家族とかすら悩ませていたようなものだとは思いませんでした。
『フルーツバスケット』はSFだった!?
・・とか驚きましたが、そもそも十二支の存在自体がSFでしたね。(笑)
そうは言っても最初、毒電波とか謎能力を発揮しているように見えるのは、立ち居振る舞いで人をコントロールするのが得意とか、そういうことなのだと思っていたので驚いたのは確かです。
「こどもの頃は外が嫌いだった。聴きたくもない心の言葉が聴こえてきて、たくさん聴こえてきて、気持ちが悪くなったから」
幼少期の花島咲は、現在の花島咲と性格的には同じような感じですけど、人のあしらい方とかは現在ほど上手じゃないようですね。
子供は変わったものを排除したがる生き物ですけど、花島咲はまさにそういう対象になってしまっていました。
まあ、あの人格だとそうなってしまうのも想像に難くないですね。
「私が”死ね”って強く思ってしまったから、だから彼は死にそうになってしまったのよ・・」
人の心が聴こえるのとは別に、呪いのような能力も使えるみたいですね。
これが本当に花島咲の能力なのか、偶然なのかはともかくとして、自分のせいだと思ってしまうところに花島咲の置かれた環境と元々の性格が表れているような気がします。
だって、普通は「偶然だ」と言い張る場面ですよね?
それを自分のせいだと断言して、責任を感じている所が花島咲というキャラクターなのだと思いました。
しかし、そんな花島咲に合わせて黒い服を着る弟の恵との姉弟関係は何だか尊いですよね。
そして、中学生の頃にはあまりにも酷くなった学校での環境を変えるために転校することになってしまいましたが、そこで本田透と魚谷ありさの2人に出会うことになります。
「・・あの頃、帰る日見上げる夕陽は震えるくらい寂しく見えた。不思議・・いつのまにか優しく見えて、のびてゆく影が一つじゃなくなった。たったそれだけのことなのに」
ずっとネガティブな発言とモノローグを繰り返していた花島咲の、珍しく嬉しそうなモノローグが感動的です。
十二支メンバーといい、魚谷ありさといい、そして花島咲といい、本田透の周りにはネガティブな何かがあるキャラクターが集まりがちですね。(笑)
そういう人たちにとって癒しになるようなキャラクターが本田透ってことなのだと思いますが、そういうキャラクターにばかり縁のある本田透は・・
まあ主人公だからって感じなのでしょうか。(笑)
夾の父親
始めて『フルーツバスケット』を読んだ時にはそこまで気になりませんでしたが、改めて読み返すと十二支メンバーの両親との問題を描いたエピソードって定番ですよね。
それにしたって夾の父親のひどさはかなり強烈ですよね。
「もしも夾がこのまま外で生きる事を許されたらと考えると不安になる。夾は・・夾は化け物だぞ!!」
これは僕が比較的恵まれた家庭に生まれたから感じることなのかもしれませんけど、例えば何があっても自分の息子のことをここまで言えるものなのでしょうか?
しかし、夾にお本田透や草摩籍真のような理解者がいて良かったですね。
そうじゃなきゃ発狂ものでしょう。
帽子の少年
幼い頃に迷子になった自分を助けてくれた帽子の少年に憧れている本田透。
本田透にはあまり似合わなさそうな帽子を今でも大事に持っています。
そして、件の帽子の少年の正体について、初めて読んだ時ぼくはずっと夾なのだと思っていました。
しかし、今巻で実はそれが由紀だったことが明らかになります。
これ、「えっ!」って驚いたのは僕だけでしょうか?
めっちゃ夾の感じで描かれているように思っていたので絶対に夾だと確信していたらまさかの由紀だったのです。
総括
いかがでしたでしょうか?
始めて『フルーツバスケット』を読んだ時、帽子の少年は夾だと思い込んでいたので、実は由紀だったとわかってビックリした覚えがあります。
何となく夾の雰囲気で描かれていたし、由紀に帽子を被っているイメージが無かったから思い込んでいましたが、ミスリードだったようですね。
いや、僕が勝手にミスリードされていただけで気付いていた人もいるのかもしれませんけど。(笑)
いずれにしても、大きく物語が進展しそうになってきましたね。
個人的には、最初は何だか危ない人格っぽく見えるけど徐々にかわいくなっていく倉伎真知が結構好きなので、その辺も楽しみなところです。(次巻のレビューはこちら)