『ガンバ!Fly high(1)』伝説の体操漫画が待望の文庫化!?(ネタバレ含む感想)
体操漫画のレジェンド『ガンバ!Fly high』。
約20年前の漫画で今まで文庫化される気配もありませんでしたが、2020年の東京オリンピックの影響もあるのかこのタイミングで文庫化されることになりました。
恐らくですが、2020年の東京オリンピックの時期にちょうど作品全体のクライマックスであるシドニーオリンピックのエピソードが重なるように発売時期を調整しての発売なのではないかと推測されますね。
数少ない体操漫画なだけあって、多くの体操選手に影響を与えた『ガンバ!Fly high』は、日本体操界の第一人者である内村航平選手にとっても愛読書となっており、尊敬する体操選手として『ガンバ!Fly high』の藤巻駿を挙げているくらいです。
そんな『ガンバ!Fly high』を2020年の東京オリンピックまでの期間、少しずつ読み進めるのは悪くない趣向ですね!
今とは体操競技のルール自体が異なる時代の漫画ではありますが、努力と涙と感動。それに笑いやラブコメもあるハイブリッドな体操漫画。
今まで読んだことがない人も、東京オリンピックを目前に控えた今こそ『ガンバ!Fly high』を読んでみてはいかがでしょうか?
本記事では、そんな『ガンバ!Fly high』をの魅力をネタバレ含む感想を通して紹介していきたいと思います。
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本作の概要
オリンピックで金メダルを取りたい。
そんな大きな目標を掲げて平成学園の体操部を訪れたのは、逆上がりもできないし跳び箱も飛べないような中学一年生でした。
であるにもかかわらず入部早々ケガをした先輩の代わりに試合に出場することになってしまいます。
そこで秘められた才能を発揮・・するわけでもなく、素人以下の演技を見せることになってしまいます。
しかし、僅かでも得点が付いたことや不格好でも初めて跳び箱を飛べたことを素直に喜ぶ藤巻駿。
そんな前向きなところがある藤巻駿が、今はまだ素人以下の実力だけど少しずつ体操選手として成長していく物語となります。
本作の見所
悪く言えば地味なストーリーだけど・・
「一年B組っ藤巻駿!! ボク、オリンピックの金メダルを取りたいんです!!」
『ガンバ!Fly high』の6年間の物語は、そんなセリフから始まります。
スポーツ漫画に登場する主人公は大抵、ダメなところがあるように見えても最初から何かしらの才能を示しがちなものだと思いますが、『ガンバ!Fly high』の藤巻駿の場合はそこにいくまでに結構な時間がかかります。
それは考えてみれば当然のことですね。
なぜなら、素人でもある程度最初からできる他の競技と違って、体操競技の場合は素人がいきなり演技できるようなものではないですから。
球技系の種目なら下手でもプレイするだけなら、100m走なら遅くても良ければ難しいことではありませんしね。
だけど体操だけは、スポーツというよりは特殊技能。曲芸じみたところもあるので素人には演技できるイメージすらできません。
僕も運動神経にはそこそこ自身がある方ですが、体操の技ができるイメージが全く湧きません。(笑)
そういう意味で『ガンバ!Fly high』は、最初は素人だった藤巻駿の視点で一歩ずつ体操の世界に踏み込んでいくのが特徴の作品といえます。
漫画作品の場合、最初から難しい技を決めるキャラクターが登場したり、初心者の主人公がいきなり素人離れした技を成し遂げたり、そういうことがありそうなものですが、『ガンバ!Fly high』の場合はそういうのが一切ないんですよね。
よく言えばリアリティがあり、悪く言えば地味な展開だとも捉えられます。
しかし、どちらかといえばこの一歩ずつ進んでいくような展開が作品の魅力なのだと僕は思います。
入門のハードルの高そうな競技だからこそ、主人公と一緒に一歩ずつ入り込めるような展開になっているのではないかと思うからです。
また、『ガンバ!Fly high』の原作者は五輪金メダリストの森末慎二さん。
実際に体操の道を歩いてきた人が考えた物語だからこそ、その始まりは劇的すぎるものではなく、どこかリアリティを感じさせるものになっているのかもしれませんね。
ちなみに、森末慎二さんが原作だということは昔から知っていましたが、僕はずっと原作といっても原案か一歩踏み込んだ監修くらいの仕事をされているのだと勘違いしていました。
森末慎二さんはタレント活動のようなこともされていたマルチな方ではありますが、漫画原作はいくらなんでも畑違いすぎるし、それも『ガンバ!Fly high』ほどの名作の原作をまともにやられているのだとしたら、天が二物も三物も与えすぎだと思っていたからです。
しかし、今回単行本のオマケとして収録されている対談を読む限り、苦労しながらも普通に漫画原作をされていたようでちょっと驚きました。
一歩ずつ前進する藤巻駿
巻末のオマケの対談で森末慎二さんが触れられていましたが、『ガンバ!Fly high』では担当編集者に提案されたとしても漫画的なあり得ない技を出さないようにしていたのだとか。
確かに、『ガンバ!Fly high』にはスポーツ漫画にありがちな超人的な見たことのない技は登場しません。
いや、ある意味では超人的なのですが、そもそも体操という競技は現実でも素人目に超人的にしか見えないもので、だからこそそのままを描くことで十分漫画として楽しく、その上リアリティもある名作になったのかもしれませんね。
特に今思えば文庫版1巻に収録されているくらいの内容は、面白くはあるものの少年漫画にしては驚くほど地味です。
主人公の藤巻駿は、最初は全く体操ができない・・どころか運動神経そのものがあまり良くなさそうで、その上主人公らしい特殊な何かを持っているわけでもない。
それが最初の試合で恥をかいて、体育の授業をキッカケに倒立の練習をして、そしてその次はバク転。
もちろん、倒立やバク転ができるようになることは十分に凄いことだと思いますが、少年漫画の展開としては地味そのもの。
しかし、藤巻駿が最初に体操競技に触れた素人の等身大の姿であったからこそ読んでいて共感しやすかったのではないかと思います。
そして、作品通してのネタバレになりますが、そんな素人の状態から藤巻駿は本当に一歩ずつ一歩ずつ積み重ねていって、最終的にはオリンピックで金メダルを取る選手にまで成長する。
もちろん、藤巻駿は徐々に主人公らしい才能を発揮していくキャラクターではあるのですが、最初はあまりにも等身大のキャラクターだったからこそ、大きく成長していく姿に感動できる作品になっていくのではないかと思います。
本作品のヒロインは?
僕が『ガンバ!Fly high』という作品を初めて知ったのはアニメ化されたことがキッカケでした。(アニメでのタイトルは『ガンバリスト!駿』となります)
その時にも勘違いしていたのですが、藤巻駿の通う平成学園のマドンナ。オリンピック代表候補の一人でもある折笠麗子がメインヒロインなのだと思っていました。
主人公の藤巻駿も彼女に憧れていましたし、折笠麗子も藤巻駿の才能を見抜いて背中を後押しするような言動を取っていました。
美人で優しい先輩というのは、まさにメインヒロインという感じです。
・・なんてことを言うと。
文庫版1巻に描かれている二人。
右側の男の子が主人公である藤巻駿であることは言うまでもありませんが、それでは左側のセーラー服の女の子が折笠麗子なのかと、『ガンバ!Fly high』という作品を知らない人は思うかもしれません。
いやいやそうではありません。
彼女の名前は相楽まり子といって、オリンピックの代表候補どころか逆上がりもできない運動音痴の女の子です。
そして、相楽まり子こそ『ガンバ!Fly high』のメインヒロインなのです。
表紙を飾ってはいますが、文庫版1巻には登場しません!(笑)
時たまこういう作品もありますが、『ガンバ!Fly high』という作品の珍しいところのひとつとしてメインヒロインの登場が遅い点が挙げられますね。
相楽まり子のことについては初登場後に語っていきたいと思いますが、ちょっと地味なところもあるもののかなり良いヒロインであるということだけはここで明言しておきたいと思います。
鉄棒の練習
1巻ラストでは鉄棒の練習場所を奪われ、田所のおばあちゃんの家の庭の鉄棒で練習する藤巻駿たち平成学園体操部男子部の面々が描かれています。
この鉄棒。『ガンバ!Fly high』という作品においてかなり重要な役割を果たすことになっていく夢の鉄棒で、藤巻駿の得意種目が鉄棒になるのもこの鉄棒が影響しているのではないかと思います。
そして、今この鉄棒が奪われようとしている。
そんなところまでが文庫版1巻の内容となりますが、どうやらこの鉄棒のエピソードのメインは次巻になるようなので、詳しくは次巻のレビューで語っていきたいと思います。
総括
いかがでしたでしょうか?
僕はスポーツ漫画はあまり読まない方(漫画好き人間にしてはというレベル)ですが、小学生の頃にアニメ放送していてそれが面白かったこともあり、『ガンバ!Fly high』に関してはかなりのファンだと自負しています。
僕と同世代だと、例えば『スラムダンク』あたりがスポーツ漫画の中では人気が高かったですが、なぜか『ガンバ!Fly high』や『なぎさMe公認』など週刊少年サンデーで連載されていたスポーツ漫画が好きでした。(笑)
しかし、アニメ化されるくらいには知名度が高かったし、相当に完成度の高い名作であるにも関わらず今まで文庫化される気配が更々なかっただけに、今度の文庫化は本当に嬉しかったです。
別に文庫化されなくても昔からある単行本を読めばいいじゃんって思う人もいるかもしれませんけど、それでも好きな作品が文庫化されたらやっぱり嬉しいですし、少しずつ時間をかけて読み返す良いキッカケにもなりますしね。
最近はこうして文庫化された作品を少しずつ読み進めることが少なくなってきたのですけど、久々に『ガンバ!Fly high』を追っていきたいと思います。