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『ガンバ!Fly high(11)』逆転に次ぐ逆転劇が熱いアジア大会(ネタバレ含む感想)

 

アジア大会編の序盤において日本はパッとしない成績で沈んだ空気が漂っていましたが、決勝では今までのただ完璧なだけの体操とは違う嵯峨の熱の入った演技、そして簑山の怪我によって藤巻駿がレギュラー化したことをキッカケに日本チームの一体感が高まるとともにジワジワと首位を走る中国チームに迫っていきます。

このアジア大会のエピソードは、オンリンピックで金メダルを取るという藤巻駿の目標が俄然現実味を帯びてくるガンバ!Fly highにおける重要な節目ですが、それに相応しい素晴らしい展開でした。

また、結論を言ってしまえば今回は惜しくも銀メダルという結果になってしまいましたが、日本チームに勝利した中国チームにもまたドラマがあって、冷たい印象があるものの実は誰よりも熱い王景陽の勝利への執念に、最後に逆転を決めた楊修平に影響を与えたのが同じ中国チームの王景陽だけではなく藤巻駿であったというのも面白いところです。

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本作の概要

簑山の怪我をキッカケにレギュラー化した藤巻駿。団体戦のプレッシャーの中で簑山のために決めたトカチェフ前宙で日本チームに活力を与えます。

そこからは中国チームとの一進一退の点取り合戦が始まります。

しかし、ポイントゲッターとして活躍する藤巻駿の左足に異変が発生し、演技を進める内にそれが徐々に顕在化してきます。

本作の見所

ポイントゲッター

簑山の怪我は考えようによっては藤巻駿に全種目演技させるためのメタい意図のある怪我なので不遇と言えば不遇な扱いです。だからこそなのか、藤巻駿のオリジナル技であるトカチェフ前宙は簑山のためにという理由で団体戦のプレッシャーの中決められます。

そして、アジア大会の終了後に簑山は引退してしまうのですが、この流れはもしかしたらいわゆる世代交代を描いたものだったのかもしれませんね。アジア大会のエピソードは若手の選手にチャンスを与えるものでしたが、もっとメタい視点を入れるとオリンピックで活躍させたいこれまでの藤巻駿たちのライバルを成長させるためのものだったのだと思います。

ともあれ、フル出場することになった藤巻駿は日本チームのポイントゲッターとして活躍し始めます。

王と藤巻の二人が勝敗のカギを握ると、そこまで称されるようになるのですがそれに過剰反応したのが王景陽です。

気にはしつつもまだまだ藤巻駿のことを甘い選手だと見ている王景陽は、自分とそんな藤巻駿が同列に語られていることに苛立ちを見せます。

さて、こういう風に主人公側のキャラクターを舐めているようなところがあるキャラクターって嫌われ役みたいなところもあると思うのですが、王景陽の場合は口だけではない何かがあって言いしれない魅力があると思います。

そんな王景陽と藤巻駿というポイントゲッター同士の点取り合戦が、得点だけ見たら王景陽の方がかなり上を行っているように見えるものの興味深くはあります。

藤巻駿の怪我

スポーツ漫画において怪我なのに無理して頑張るという展開はひとつの定番ですが、怪我なら安静にしなきゃダメだろうという常識がありつつも熱くて格好良く感じられる展開ですよね。

怪我と隣り合わせだと思われる体操という競技を描いているにしてはガンバ!Fly highにおいては珍しい展開ですが、藤巻駿が足に違和感を感じつつも、そして徐々に痛みに耐えながら演技する姿は格好良いです。

とくに印象的なのは怪我に気付いた内田の反応です。

平成学園の仲間として一緒に戦っている時ならまだしも、日本を代表して戦っている藤巻駿をただの観客でしかな自分たちには止められないと、藤巻駿のことを案じつつもショックを受けている姿が良いですね。

しかし、日本代表として戦っているとはいえ遠くに行ってしまったわけではなくちゃんと声援の届くところにいる。怪我を我慢しながら演技しているとはいえ藤巻駿がしているのはあくまでも平成学園の楽しい体操なのだと諭したのは相楽まり子。さすが藤巻駿への理解が深いです。(笑)

そして、最後の跳馬の演技では助走の途中で倒れ込んで今いながらも、藤巻駿のことなどほとんど知らないであろう観客からの声援を受けて王景陽と同じ技をキッチリと決めます。

そのことは、藤巻駿のような甘い選手には跳べないと思っていた王景陽をも驚かせました。

中国チームの活躍

中国チームの王景陽に最初から好印象を抱いた読者って少ないような気がするのですけど、アジア大会編を通して氷の男と称される王景陽の冷たいだけではない確かな熱さが感じられて、とても魅力的で格好良く見えるようになってきます。

相手を舐めたように見下し、そもそも相手にすらしていなさそうな態度ですらありましたが、それはあくまでも自分自身の努力に絶対的な自信があるからでした。

その証拠に、相手がそれなりの成果を示した時には興味を持っている様子でしたし、藤巻駿の決死の跳馬で日本チームに逆転されて、しかも自身の演技を以ってしても日本チームの優勝ムードを覆せなかった時には敗北感に涙を流しました。

最も涙と縁遠そうな王景陽だけが中国チームの中で唯一涙を流したという事実は、それだけ王景陽の中に熱さがあったという証拠なのだと思います。

そして、決死の跳馬を見せた藤巻駿や、誰よりも勝ちに拘った王景陽に体操選手として負けたくないと土壇場の局面で新技を披露した楊修平もまた素晴らしい。

成功率10%程度の新技の成功で中国チームはギリギリ逆転して金メダルを獲得することになるのですが、そういう意味では9割は勝利していた日本チームも、1割の勝利を手にした中国チームも悔いのない大会だったのではないでしょうか?

いや、正確には王景陽だけは大きな敗北感を持っていたことは間違いありません。

その証拠に、後々に王景陽はオリンピックに向けて更に完成された体操選手へと進化してきます。そして、その辺はもう少し先の見所になってきます。

オリンピックに向けて

アジア大会を経て藤巻駿の体操選手としての知名度は大きく増し、いよいよオリンピックへの道筋が見えてきました。

アジア大会の予選の前にはインターハイに出場しようとしていてそこまで世界を意識するようなことは無かったことを考えると大きな進歩ですね。

そして、注目すべきはアジア大会の団体銀メダリストになった藤巻駿に触発された平成学園の他の選手たち。新堂キャプテンも三バカも大学生になりましたが、そこで個々に戦っていく展開に突入します。

総括

いかがでしたでしょうか?

アジア大会の決着、そして触発される平成学園の内田に真田。いよいよオリンピックに向けて動き出すことになり面白くなってきます。

平成学園がチームとして戦う展開も面白かったですが、今度は代表枠を巡るライバルになるわけですね。

信頼関係のあるライバル同士の戦いもまた興味深いです。