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『ガンバ!Fly high(5)』優勝してもピンチから始まる平成学園(ネタバレ含む感想)

 

ガンバ!Fly highは最初から最後まで抜かりなく面白い漫画だと思います。

それでも最も印象に残っているエピソードはどれかと問われたら、この5巻でクライマックスを迎える種目別選手権だったのではないかと、そう答えたいですね。

アニメ版でのクライマックスだったこともありますが、スペシャリスト軍団としての平成学園の形が確立され、作中での平成学園と藤巻駿の知名度が一気に上がったエピソードでもあり、今後のストーリーの基盤になっているのではないかと思います。

あと、どうでもいいけど裏表紙の李東生の冷たい色合いにはちょっと笑ってしまいました。(笑)

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本作の概要

次々と優勝を掻っ攫っていく李軍団。東のつり輪とアンドレアノフの異議、内田の挑戦は観客を盛り上げさせたものの、李軍団の優勝は止まりません。

平行棒では初めて李軍団の失敗があり、新堂にとっては大きなチャンスとなりましたが小早川や嘉村には敵いませんでした。

そして、スペシャリスト軍団でありながら平成学園の誰も優勝できないまま、最後の藤巻駿の鉄棒を迎えます。

盛り上げるだけでなくひとつくらい優勝してほしいところですが、この鉄棒がどうなるのか、それが5巻最大の見所となります。

本作の見所

平成学園の活躍

地区大会編での床の演技、そしてこの種目別選手権のつり輪の演技。

ガンバ!Fly highの序盤において、東の演技が見せるインパクトは群を抜いているような気がします。恐らく作品の人気そのものにすら影響を与えているのではないかと。

現実の体操の演技だと、東がやっているような力技はどちらかといえば地味に見えて、もっと飛んだり跳ねたりする演技の方がド派手に感じられるものだと思います。

恐らく漫画という媒体だからこそド派手に見える東の演技で、アンドレアノフの加勢もあって観客から審判に「加点しろ」コールが鳴りやみませんが、結果的に演技構成に欠陥があったことは事実なので採点は覆りませんでした。

「みなさんの声援にモーレツに感動してるんじゃい!! 何故ならみなさんのその声援こそが・・。俺にとって最高の加点なんじゃー!!」

中学生離れした演技をする東ですが、その演説も中学生離れしているかもしれませんね。

そして、中学生離れした演技を見せたのは東だけではありません。

内田もまた1回目の跳馬の得点に思う所があり、2回目に危険な挑戦を見せます。

1回目の得点も決して低くはなく、むしろ高得点。

しかし、李軍団に敵う得点ではない。

「選手生命を絶つ気か!? ミノル!! やめろ!! そんな体操私は教えてない!!」

挑戦には寛容なところがあり、真田が床の演技で最後に構成を変えて失敗してしまっても笑っていたアンドレアノフが必死で制止するほど危険な技である三回宙返りに内田は挑戦します。

そして、顔面から床に衝突しかねないところから無理やり胸で回転し、背中を派手にぶつけながらも、内田は三回宙返りを成功させます。

そんな感じで二年生の三バカトリオが大活躍したものの李軍団の優勝は止まらないわけなのですが、平行棒で初めて李軍団にミスが出ます。

競技中の落下から演技を再開するかでひと悶着ありましたが、李軍団以外の選手にとってこれは優勝のチャンスとなりました。

そして、キャプテンの新堂も見せます。

三バカトリオに比べたら縮こまった演技で平成学園らしくないとまで言われるのですが、最後には本作品原作者の名前が冠された大技モリスエを決めて、優勝こそ逃したものの自信を付ける大きなキッカケになりました。

藤巻駿の鉄棒

アニメ版では最後のトリを飾ったのが、この種目別選手権での藤巻駿の鉄棒でしたね。

ちなみに、原作とアニメ版では演技構成や得点が違います。アニメ版では大トリだったからなのか演技構成に初めてやるコバチが追加され、得点も10点満点でした。

原作ではそこまで極端な大活躍というわけでもないですが、ただ上手な演技というだけでなく見る者を熱狂させる理由がよく分かるように上手く表現された名シーンだったと思います。

連続放し技の2つ目のトカチェフで高く飛びすぎてしまうというハプニングも、高さで一つ目の驚きを与え、胸の回転で軌道を変えてしまうという二つ目の驚きも与え、しかしバーから離れすぎてしまし無理やり片手でキャッチするという三つ目の驚きを畳みかけ、たった一つの技の中で多くの驚きを与えています。

しかもそれが三連続放し技の一部でしかないという・・

特に片手キャッチの大ゴマは作中でも屈指の印象的な大ゴマだったと思います。

「ふっ・・藤巻に翼が・・。翼が生えてらぁ!!」

藤巻駿は運動音痴だと思い込んでいた高原万由美も思わず感動してしまっていましたね。(笑)

鉄棒する藤巻駿の背中に翼が見えるというセリフのオリジナルは相楽まり子ですが、巻末のオマケ対談によるとこのセリフは原作の森末慎二氏こだわりのセリフで、漫画にするにあたって是非そのまま使って欲しいと推したセリフでもあるようですね。

むしろ本業の作家ではない森末慎二氏の原作に付け足したようなセリフなのかと思っていましたが、どうやら逆みたいで驚きました。

しかし、確かにこの翼が見えるというセリフはにガンバ!Fly highおいても一つ象徴的なものになっていますよね。

ともあれ、見る者を驚かせるだけでなく感動させる演技で藤巻駿は、種目別選手権鉄棒で優勝することになりました。

陳清華とアンドレアノフ

考えてみれば、この種目別選手権のエピソードは平成学園男子体操部にとっての挑戦であると同時に、アンドレアノフと李東生の体操論を巡る争いの始まりでもありましたね。

体操は楽しいものであるべきだというべきアンドレアノフと、厳しく使えない選手は容赦なく切り捨てる李東生。

アンドレアノフの最初の生徒である陳清華は、とても才能のある子だったのにその後李東生の指導に耐え切れず選手としては大成せずに消えていきました。

そして、ある時アンドレアノフが陳清華に会いに行った時に、アンドレアノフには会いたくないと消えてしまったことから自分は恨まれていると感じていたアンドレアノフだったのですが、実は陳清華はこの種目別選手権にコーチとして訪れていました。

それを岬コーチが発見し、アンドレアノフが感じていた恨みは誤解であることは明らかになるのですが・・

「たった一度でも体操を憎み・・そして、あの人から逃げた私が・・。今さらあの人に会う事なんてできる訳がないわ・・」

陳清華にあったのは恨みではなく後ろめたさでした。

今でも楽しい体操を貫くアンドレアノフに会う資格はないというのが陳清華にはあったわけですね。

その決意は固く、陳清華が自分を恨んでいないと知って探し回っているアンドレアノフに気付かれずにホッとした表情すら見せていた陳清華が、しかしアンドレアノフに見つけられた時に見せた涙と笑顔がとても感動的でした。

新学期の始まりと再びピンチ

ストーリー漫画における新学期は物語のひとつの転換点。

種目別選手権での主人公の優勝という分かりやすい転換点の後に新学期という分かりやすさが良いですね。

大抵、新キャラの登場や新しいエピソードのキッカケとなるポイントで、主人公たちの立ち位置が後輩から先輩に変わることによる視点の変化も面白かったりします。

ガンバ!Fly highの場合、既存のメインキャラクターの個性があまりにも強烈で、ここで登場する新入生の新キャラたちは、今後もそこまで大きな活躍を見せることはありません。

まあ、良くも悪くも三バカ先輩があまりにも印象的すぎましたね。(笑)

しかし、新たに先輩となった藤巻駿たちの視点や、その印象的すぎる三バカ先輩を頼れない状況をあえて作り上げての二度目の地区大会編は面白い試みだったと思います。

三バカ先輩抜きで藤巻駿が、どこまで後輩たちを引っ張っていけるかが今後の展開の見所になっていきます。

総括

いかがでしたでしょうか?

先輩になった藤巻駿たちというのが新鮮で、三バカ抜きで臨む地区大会がどのように進展していくのかが楽しみですね。

実は、子供の頃は漫画を必ずしも1巻から順に読んだりしていなくて、ガンバ!Fly highに関しては11巻、つまりこの文庫版でいうところの5巻後半の新入生が入ってきた辺りから読み始めていたので、個人的には読んでいて思い出深く感じられるエピソードがしばらく続きます。

だから6巻はメッチャ楽しみなんですよね。

高原万由美が藤巻駿に猛烈アプローチしているのが、どういう結果に繋がるのかも見所のひとつです。