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『グッバイ、ノーベル!(2)』すずの方がナヲキより作家っぽい気がする漫画(ネタバレ含む感想)

 

グッバイ、ノーベル!は、ノーベル文学賞候補の作家だった龍平ナヲキが、同時に生死の境を彷徨っていたが何とか生き残った女子高生・佐鳥すずの文字通りのゴーストライターとなって作品を世に出そうとする物語です。

ゴーストライターなんて言葉を使うと、佐鳥すずは龍平ナヲキの操り人形なのだとか、楽して成り上がろうとする野心家なのだとか、そんな風に思われる人もいるかもしれません。

しかし、佐鳥すずは人の言うことを素直に聞くだけの操り人形でも、周囲の評価のために行動するような野心家でもありません。

まさに名は体を表すというか、佐鳥(サトリ)の名の通り、常にマイペースで悟っているような女子高生です。

作家という職業の人間には、どこか一風変わったところがあるというのは偏見かもしれません。

しかし、佐鳥すずというキャラクターはハッキリ龍平ナヲキ以上に作家っぽい独特の個性を持っているキャラクターだと思います。

その上、完全に龍平ナヲキに言われたとおりに執筆していたわけではないので、作り上げた作品には確実に佐鳥すずの個性が表れているはずで、つまりは共作に近い作品になっているわけです。

幽霊になった大作家というSF的な要素を備えた作品にはなっていますが、もしかしたら共作したことによって生じる化学反応を描こうとしている漫画でもあるのかもしれませんね。

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本作の概要

佐鳥すずと龍平ナヲキが龍平すずとして二人で書き上げた『還らない手紙』は、残念ながら新人賞で大賞を取ることができませんでした。

しかし、間違いなく作品は評価されていて審査員特別賞を受賞。

佐鳥すずは編集者から二作品目に取り掛かるよう指示されます。

本作の見所

出版業界の闇

「「女子高生」枠は去年すでに使ったでしょ?」

佐鳥すずが応募した新人賞の授賞式。その対象の決め方がなかなかに出版業界の闇を垣間見たような内容になっています。

読めばわかる名作よりも、話題性抜群で売れる良作。

わからなくもないけど何だか釈然としない理由で龍平すずの『還らない手紙』は選ばれなかったわけなのですが・・

「まあ、普通に審査したら、これは確実に大賞になってしまいますからね」

しかし、どうやらこの審査結果の真意は他にあったようです。

二年連続で女子高生作家が受賞したりしたら最悪どちらも霞んでしまうため、だったら大賞を取らせずにデビューさせてしまえば良いという考えだったようですね。

というわけで男性アイドルの書いた作品が大賞を受賞し、佐鳥すずは残念ながら審査員特別賞止まりとなりました。

 しかし、そこはサトリ世代JK・佐鳥すず。あまり・・というか全く落ち込んだ様子がありません。これは出版社側の真意を知ったとしても喜びすらしなさそう。(笑)

二作目

二作目を執筆することを編集者に指示された佐鳥すずは、自分が何を書きたいのかを考えます。

そして思いついたのは亡くなった祖母のインスタを自身が更新し続けているということ。

「ばーちゃん死んだのやっぱ悲しいし・・今までで一番寂しい・・でも・・こんな時でも『恋君』は、最高って思えるんだもん・・「悲しい」と「寂しい」と「楽しい」が一緒になるとか・・人生ってまじエモい・・」

好きな漫画の作者に偶然出会って、そこでなんどその作品『恋君』を書いたのかを聞いて、なんで佐鳥すずがこう思ったのかは分かりませんが、単純に亡くなった祖母のインスタを更新し続けるとか素敵なエピソードだなぁと感じました。

龍平すずがこれで読めばわかる作品をまた書けるのか、その辺が気になるところですね。

コミカライズ

「実は君の『還らない手紙』を、花椿先生にコミカライズしてもらおうと思っててね」

サトリ系JK・佐鳥すずが今までで一番テンションを上げてしまい、その雰囲気はそのままに興奮した様子を見せたのは、大ファンである『恋君』の作者である花椿先生がコミカライズすることになったという事実です。

「・・なんか最近、お腹が空かないんだよね・・。デビュー作発売日だし、嬉しいはずなのになぁ・・」

しかし、ちゃんと嬉しいはずなのだという感情はありつつも、どこか上の空な様子の佐鳥すず。

これは一体何事なのかと思いきや、その答えはナヲキが持っていました。

「安心したよ。君でもそういう気持ちになるんだな。それ、「怖い」ってことだろ」

大好きな作家までコミカライズで協力してくれるデビュー作。それがもし失敗したらという恐怖をさすがのサトリ系JKも感じていたわけですね。

デビュー作なわけだから待ってくれているファンもいない。

それは例えば、規模は違うかもしれませんが何か新しいことを初めて今までとは違った人間関係の中に飛び込むような時に感じる怖さと同種なのではないかと思います。

しかし・・

「・・君、気付いてないのか? 花椿先生が「龍平すず」の第一のファンじゃないか。君にとっての「神」が、応援してくれてるって・・これ以上のことあるのか?」

コミカライズすることになった経緯を考えれば、既に龍平すずにはファンが、それも佐鳥すずにとっては神にも等しい存在がファンでいてくれているわけで、これは確かに心強いですね。

それは例えば、集団の中において「みんなと仲良くしなきゃ」と不安になっていても、一人だけ本当に仲の良い人間がいたら何だか安心してしまうのと同種の心強さなのではないかと思います。

半分作家

1巻から龍平ナヲキの大ファンとして描かれていて、『還らない手紙』のことをとても評価していて昨年度の新人賞大賞受賞者である早乙女桜が、再び佐鳥すずと接触します。

「私も半分作家なんだよね」

そして、早乙女桜が作家なのだと知った佐鳥すずは、早乙女桜が佐鳥すずイコール龍平すずだと若干思い始めていることを知らずにこんなことを言ってしまいます。

まあ、恐らく本人に隠すつもりは更々なさそうですけど。周囲にも自分が作家の卵になったことはあまり言っていなさそうですが、隠す様子もないので、恐らく「聞かれなかったから」というまさにサトリ系な考えなのかもしれません。

そして、早乙女桜はついに佐鳥すずが龍平すずであることを知るのですが、その後まさかの早乙女桜まで龍平ナヲキの幽霊が見える展開に!

これはこの先何が起きるのか、楽しみですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

世の中にある「読み続けたい」と思う作品には何通りかあると思います。

スカッとしてストレス解消になるのか、心に訴えかけてくる何かがあるのか、自分自身と共感できる何かがあるのか、キャラクターが魅力的なのか、ちょっとした勉強になるのか、その作品が流行っているのか・・

しかし、特に理由もなく、ただただ何となく面白いと思うからという理由で読み続けたいと思う作品もあって、僕の場合グッバイ、ノーベル!がそれに該当する作品のひとつになると思います。

エンターテインメント作品らしく見所、面白いところは多々あるのですけど、どうしてこの作品を読み続けたいのかは上手く説明ができない。

一発ネタ的な作品でもあるので、飽きやすいところもあると思っていたのですが、続きが気になってしょうがないんですよね。

佐鳥すずと龍平ナヲキのコンビが、今後どのような作品をどのような展開で作り上げていくのか、そのあたりが気になるところです。