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『犯人たちの事件簿(5)』狂言回し的な犯人たちが面白い漫画の感想(ネタバレ注意)

 

相変わらず犯人たちの狂言しじみたモノローグと奮闘が面白いですよね。

割と色物なスピンオフ作品ですが、犯人たちの事件簿も5巻まで続きました。

昔の『金田一少年の事件簿』を最後に読んだのは随分と昔ですが、それでも「あ~こんな犯人いたなぁ~」って懐かしくなってしまう、ミステリーにおいて犯人側がこんなに記憶に残る作品ってのも珍しいですよね。

そして、そんな犯人ですら魅力的なキャラクター性を兼ね備えているからこその犯人たちの事件簿という作品ですが、まだまだ楽しませてくれそうです。

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本作の概要

黒死蝶殺人事件の「不死蝶」こと小野寺将之。

飛騨からくり屋敷殺人事件の「首狩り武者」こと巽紫乃

怪盗紳士の殺人の「もう一人の怪盗紳士」こと和泉さくら

今巻は個人的に思い出深い『怪盗紳士の殺人』と、こんな子が犯人だったんだと驚いた和泉さくらがネタになっている所が一番の関心どころなのですが、どんな風に描かれるのかが楽しみにな事件でした。

というか、今巻の事件の犯人全員死んでるんですね。

本作の見所

黒死蝶殺人事件

悲恋湖伝説殺人事件の犯人であると遠野英治と目される深山日影の再登場が印象的な事件ですが、昆虫の生態を利用したトリックも面白い事件だと思います。

犯人たちの事件簿では犯人たちの下準備が面白いところの一つですが、小野寺将之はターゲットである班目舘羽の婚約者になり、班目紫紋の対策にも非常に時間をかけたハートキャッチ小野寺になっているところがまったく何キュアなんだよって感じで面白いですね。(笑)

班目るりを殺害した後、トリックの証拠である蝶々を美雪に見られてしまうのですが・・

「いや!! 大丈夫だ・・普通の女子高生が殺人現場に出くわして動揺もせず、蝶の詳細を覚えていられる注意力があるわけない・・!! この女子高生が・・相当な場数を踏んででもいない限り・・な!!」

しかし、普通の女子高生ではあっても場慣れ感が半端ではないのが美雪ちゃんですもんね。

ついつい分かりやすい通称ではなく学名で説明してしまった時も、内心焦っていたのが面白い。

今までの犯人の中ではかなりメンタル的に弱そうな小野寺将之ですが、そもそもトリックの綱渡り感というか、シチュエーションが確かに犯人視点だと心臓に悪そうな事件だと思います。(笑)

金田一が班目舘羽の握っていた深山日影のボタンの証拠の不自然さを説明するために、小野寺将之のシャツを掴んでボタンをはじいて見せるシーンがあるのですが、高校生にボタン取られて凹んでいる姿が哀愁を誘います。

確かに金田一の行動って時たまヤンキーっぽいですもんね。(笑)

猪川警部だけが精神安定剤になっているのも、確かに犯人視点で見ればいいようにミスリードしてくれる存在はありがたいって所が面白い。本編だと「何だこの刑事は」ってなるところが全く逆になりますからね。

飛騨からくり屋敷殺人事件

個人的にミステリーで犯人が共犯ってのは興ざめしてしまう所もあるのですが、これが犯人視点で描かれるとこんなに面白いとは・・

「何ちゅう恰好させやがる・・恥っっっずい! この格好でバスに乗せるとかサドが過ぎるぜ・・」

確かに、この事件に限らず『金田一少年の事件簿』では犯人が素面でするには恥ずかしいコスプレをしていることが多いですよね。

顔が見えないとはいえ、これは恥ずかしいものです。(笑)

怪人のお約束的な衣装ではありますが、冷静に考えたら恥ずかしいってのを表現できるのは犯人たちの事件簿ならではだと思います。

互いに互いを利用しあっている関係のはずですが、冷めた紫乃に対して意外と仙田猿彦が好意的な感じに描かれているも意外性があって面白いですね。

ラッキースケベでおっぱいを見つつヒロインを救うとは・・主人公として何てムダのない行動なんだ・・」

そして、確かに金田一が美雪の着替えのシーンに遭遇して危機を回避するシーンがありますが、それに対する仙田猿彦の評価がメタすぎて面白すぎる。(笑)

何かと失敗しがちな仙田猿彦にツッコミ役の巽紫乃という構図も、共犯者のいる事件ならではって感じで良いですね。

紫乃・・魂の咆哮・・・!! 何故か犯人全員に備わっている圧倒的演技力・・!!」

確かに、その通りなんだけど「お前がそれ言うんかい!」ってツッコミたくなってしまいました。関西人の性ですが、思わずツッコミを入れたくなるのはそれだけ犯人たちの事件簿という作品が面白いからだと思います。

「一旦安心した後でまた攻め込まれる・・一番心が疲れるヤツよ・・!」

そして、一度は仙田猿彦を犯人だとして帰って行った金田一たちが引き返してきた後の紫乃の反応がまた面白い。

トリックを解き明かす実験をする金田一に連れられて単に気まずくなっていますが、何としても隠し通さねばという思いがありつつも気まずいことは気まずいってのが狂気的な犯人の人間的な部分って感じで良いと思います。

怪盗紳士の殺人

怪盗紳士の殺人の犯人の和泉さくらが意外と苦労人というエピソード。

計画を立ててもう後戻りできない所まで来てから罪をなすりつけようとしていた怪盗紳士に殺人をするイメージが無いことに気付いたり、最初から前途多難です。

また、金田一の同級生で探偵としての能力を知っている犯人という意味でも、真新しい視点の犯人で面白いと思います。

そして、真犯人である和泉さくらがまだ何もしていない段階から次々と不測の事態というか事件が発生してしまいます。

「あたしは今、完全犯罪っていうギリギリのジェンガやってるのよ? 何急に横から入ってきて2・3本雑にジェンガ抜いてくるの? ジェンガをナメてらっしゃるの?」

この例えがまた面白いですよね。

不測の事態すらうまく利用した頭の良い犯人のイメージがあったこの事件ですが、慌てふためいている和泉さくらが良い感じです。

「嘘でしょ・・!? まだ何もしないうちから、こんなにも起こるの・・? ハプニングって・・!!」

あまり考えたこともありませんでしたが、確かにこの事件って真犯人の和泉さくらが行動を起こす前に別人による絵画の盗難や本物の怪盗紳士の登場があって、和泉さくらが何もしない内から事件になってしまっていました。

面白いだけじゃなく気付いていなかったというか、全く気にしていなかった所に新しい発見があるのも犯人たちの事件簿という作品の良いところだと思います。

蒲生の目を潰すのにも、潰しすぎたらトリックの肝であるラベンダーの匂いを嗅がせるどころではなくなるから絶妙な眼球捌きが必要だと、事前に色んな魚を捌いて練習してきたというのも面白いですね。

飛騨からくり屋敷殺人事件もそうでしたが、一度帰った後に戻ってくる金田一面白可笑しく描いているのも良いですね。

「ていうか何で怪盗紳士なのに女なんですか? おかしくないですか?」

最後に和泉さくらを逆ギレさせてるのも、原作の和泉さくらのキャラクター性とは違っていて面白いですね。

総括

いかがでしたでしょうか?

今巻3人目の犯人である和泉さくらが起こした事件。『怪盗紳士の殺人』は始めて原作漫画を読んだ作品なので個人的に思い入れが非常に強いです。

次巻も『墓場島殺人事件』など、犯人の行動が面白そうな事件が盛りだくさんなので楽しみですね。

それにしても、犯人たちの事件簿を読んだ後は本家本元の『金田一少年の事件簿』も読みたくなってくるから不思議ですね。