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『本好きの下剋上第四部(6)』いよいよ止まらないローゼマイン様の感想(ネタバレ注意)

 

本好きの下剋上は比較的、淡々と時系列に沿って進行していく物語です。

ローゼマインが暴走して周囲が翻弄されることの繰り返しはハッキリ言ってマンネリ化しつつあります。

それなのに・・

それなのに何でこんなに面白いんだろう?

それは、恐らく実際はマンネリ化しているのではなくパワーアップしているからなのだと思います。

なろう系小説にありがちなのは、最初にガツンと大きなインパクトを与えてくれるものの、その最初のインパクトを超えてくる続きが出てこないパターンだと思います。

しかし、その点本好きの下剋上の場合は常に進化し続けています。

今巻の場合は特に、本好きの下剋上の最大の魅力である一人称視点で語れるキャラクターの多さが際立っていました。

ローゼマインの側仕え達を始めとする貴族たちの報告が、同じ出来事を報告しているはずなのに全く違った個性的なものになっているのが面白かったです。

昨年発売した短編集貴族院外伝で大活躍したハンネローレがついにローゼマインと大接近したり、王族であるヒルデブラント王子が図書委員になったり、既にキャラクター数が飽和しているといっても過言ではない本好きの下剋上で新しいキャラクターを活躍させる手腕は香月美夜先生のさすがなところでしょうか?

個人的には貴族院外伝を読んでハンネローレが好きになったので、今巻表紙にハンネローレがいるのを見て少々期待値が上がっていました。(笑)

ちなみに、今巻の発売と同時に本好きの下剋上のTVアニメ化が発表されています。

これはもう本当に楽しみで、「おめでとうございます!」より先に「ありがとうございます!」が先に出てきてしまいそうな感じですね。

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本作の概要

貴族院の二年生になったローゼマインの新たな一年は、間違いなく昨年よりもパワーアップしています。

下手に抑制しようとすると逆効果になることを周囲が学んだことで、いよいよ止まらなくなってきたローゼマインの暴走がとどまることをしりません。

本作の見所

シャルロッテの奮闘

「お姉様のお役に立てるように頑張ります」

今巻のプロローグはシャルロッテから始まります。

そして、この宣言通り今までになくシャルロッテが活躍していたような気がします。

気がするというのは、シャルロッテそのものが描かれているシーンは少なく、陰ながら奮闘している様子が伝わってくるような描かれ方をしていたからです。

初登場時は若干影の薄いキャラクターだったシャルロッテですが、ここ最近存在感が増してきたような気がしますね。

個人的には、かなり前ですがローゼマインが眠っている間の出来事をシャルロッテ視点で描かれている短編が好きだったのですが、あまり描かれていないのにあの短編の時のような反応をしているシャルロッテが容易に想像できます。

こんな感じでキャラクターが深掘りされているから、あまり詳細に描写されていない時ですら色々想像できてしまうのが魅力的ですよね。

増える図書委員

かなり前からローゼマインは図書委員のことで頭がいっぱいの様子でしたが、ついに図書委員としての活動が本格始動しそうな感じになってきました。

「あ、あの、ローゼマイン様。わたくし、ずっと謝ろうと思っていたことがあったのです」

天性の間の悪さでずっとローゼマインに謝りたかったハンネローレ。

ハンネローレを本好き仲間と認識してずっとお近づきになりたかったローゼマイン。

かなり前からすれ違いっぱなしでなかなか接点の無かった友達2人がついに接近しました。

「わたくしがハンネローレ様を嫌う理由などありませんわ。シュバルツ達の主になりたいと思っていらっしゃったのですね。でしたら、わたくしと一緒に図書委員をいたしましょう」

そして、ローゼンマインはついにハンネローレを図書委員に誘うという念願を果たします。

よくよく考えたらハンネローレが謝罪中に「今しかない」と思ってしまうのはタイミングとしてどうなのかというような気もしますけどね。(笑)

ともあれ、ハンネローレが図書委員になるというシーンは楽しみにしていたエピソードではあったもののずっと予想できていた展開ではあります。

予想できなかったのはもう一人の図書委員。

それはヒルデブラント王子です。

前巻のラスト、突然の登場にどうなることかと思いましたがこういうことになりました。(笑)

前巻からローゼマインの小ささが原因でシャルロッテと取り違えてしまっていたヒルデブラント王子でしたが、そこはそこまで波乱を呼ぶことはなくヒルデブラント王子が自分で勘違いに気付いたようです。

しかし、自分と年の近いローゼマインに好意を持っているようで、ローゼマインはヒルデブラント王子がシャルロッテに好意を持っていると勘違いしている。

その辺はもしかしたら今後何かが起きるかもしれないと予想しますが、ともかくお忍びで図書館通いをするヒルデブラント王子にローゼマインも好意的ではあります。

そんな縁でヒルデブラント王子も図書委員に引き込まれてしまいました。

これまた何だかトラブルを引き起こしそうな組み合わせが誕生しましたが、今巻のエピローグでの保護者たちのうろたえようを見ると、その予想は間違っていなさそうですね。(笑)

ちなみに、実は特に本が好きというわけではないらしいハンネローレの魅力については貴族院外伝に余すことなく描かれているので、この2人のやり取りは貴族院外伝を読んでからの方が面白いと感じられるかもしれません。

ターニスベファレンの討伐

今巻はいつもより格好良い感じのローゼマインが見られます。

シュタープの変形の講義では、神具の盾と槍を作り出しますが、自分用の武器としては水鉄砲をイメージします。

格好良くもローゼマインらしさがあるのが良いですね。

そして、今巻最大の見所の一つでもあるターニスベファレンの討伐シーンも面白い。

こういう討伐のシーンは第四部に入ってからはご無沙汰で、学生たちだけでってのは恐らく初めてのはずです。

騎士見習いたちの武器に祝福を与えるために駆け付けたローゼマインですが、こういう討伐系のエピソードでは過去一で活躍していたと思います。

祝福のみならず、自分専用の武器である水鉄砲でみんなを援護し、ターニスベファレンがローゼマインを警戒して水鉄砲が当たらないと悟るや否や、シュタープをマントに変化させてターニスベファレンの視界をふさぎます。

まあ、本当は視界をふさいで自分の水鉄砲を命中させようとしていたのに、シュタープをマントにしてしまったので手元に水鉄砲がないという間抜けをさらしてしまっているのですが、結果オーライで大活躍するという結果になりました。

そして、ターニスベファレン討伐後もシュタープをフリュートレーネの杖に変化させて強力な癒しを土地に与えます。

ローゼマインがこういう形で大活躍するのって意外と珍しい気がしますが、今回のエピソードは大満足でした。

本好きのお茶会

ハンネローレとヒルデブラント王子を招いての本好きのお茶会がついに開催されました。

あまり社交に積極的ではないローゼマインですが、こればかりは念願って感じでしたね。

ローゼマインがヒルデブラント王子に図書館の本の返却を促すオルドナンツを飛ばすという「仕事」をすることを提案してしまったということ以外は平和で楽し気なお茶会で、個人的にはハンネローレ成分が強くて大満足でした。

しかし、平和なままで終わらないのがローゼマインクオリティです。

「王宮図書館に招待する許可を得る方が、喜ばれるのではございませんか?」

ヒルデブラント王子の側近は、さすがは王族の側近ということでローゼマインの趣向を完全に見抜いていました。

しかし、まさかそんな提案だけでローゼマインが昏倒してしまうとはさすがに思わなかったでしょうね。

「喜びのあまり、わたしはその場で昏倒した」

ローゼマインのモノローグが、淡々と言ってんじゃねぇよって感じで面白かったですけど、当然その後はめちゃくちゃ混乱したようですね。

悩める保護者たち

養父のジルヴェスターに後見人のフェルディナンド、実父設定のカルステッド。

この3人がローゼマインの行動にヤキモキさせられるのは定番になってきていますが、今巻は特にその振り回されっぷりが面白かったです。

「フェルディナンド、ローゼマインは何故こうも突飛なのだ?」 

ジルヴェスターのセリフが全てを総括していますね。

ヴィルフリートやシャルロッテやハルトムートを始めとするローゼマインの周囲にいる貴族たちの報告、そして件のローゼマインの報告。

感じ方というものは人それぞれなので当たり前といえば当たり前なのだと思いますが、同じ出来事を報告しているはずなのにそうは思えない報告の連続に混乱しまくっています。

ヒルシュール先生がアーレンスバッハの生徒を弟子に取った報告では、アーレンスバッハに襲われた過去があるはずのローゼマインだけが危機感が無く、ヒルデブラント王子と遭遇した報告はローゼマインだけはついでのようになっている。

「・・友達になったところで失神だと? そんな友達、私は嫌だぞ。ダンケルフェルガーの姫は意外と精神的に頑丈だな」

そして、本好きのお茶会のラストもしっかりと報告されています。

ジルヴェスターは一年生の頃にローゼマインがハンネローレと友達になったところで失神してしまったことを知らなかったようですが、確かにそんな友達何だか嫌ですよね。(笑)

それにしても、その視点がことなるだけで同じ物事に対しても捉え方が違うということを面白おかしく描かれているのは本当に面白く、間違いなく本好きの下剋上の最大の魅力ですよね。

ジルヴェスターはハンネローレのことを「精神的に頑丈」と評しましたが、これもまたハンネローレ本人のことを知らない視点だからこその評価だと思います。

個人的には、ハンネローレは頑丈なのではなく気丈なのではないかと感じました。

総括

いかがでしたでしょうか?

今巻も図書館のためにローゼマイン絶好調って感じでしたね。

特にエピローグで頭を抱える保護者たちが面白かったです。

それにしてもエピローグ後のルーフェン先生視点の短編が、ただの短編かと思いきや不穏な感じで終わりました。

まさかローゼマインが魔獣ターニスベファレンの件の容疑者に浮上するとは・・

暴走したり失敗したりが多いローゼマインですが、こういう形で疑われてしまうようなことは初めて。

現時点でも頭を悩ませている保護者たちがこれを知ったらどういう反応をするのかが楽しみなところです。

いや、いつも最新巻を読み終わった後には続きが待ち遠しくなるものですが、今回はいつも以上に待ち遠しく感じてしまいますね。