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『ヒカルの碁』の名場面、名台詞から囲碁を学ぼう!(その5)

ヒカルの碁に登場するキャラクターは週刊少年ジャンプの連載作品にしては尖った部分のないいわゆる普通の人という印象が強いです。だからといって没個性なわけではなく、誰も彼も魅力的なキャラクターばかりで、だからこそ共感しやすいところも多いのではないかと思います。

例えば、ヒカルにとっては院生時代の先輩というか兄貴分的なキャラクターである伊角さんにしても、いわゆる普通の好青年といった雰囲気のキャラクターですが、その割には随分と人気のあるキャラクターでもありますね。特にプロ棋士の中にファンが多いようで、実力がありながらプロ試験を突破できずにくすぶっている姿が共感を呼ぶのだと思われます。

そんな伊角さんのプロ試験のエピソードにおける最も印象的だった出来事から学ぶ教訓について本記事では触れていきます。

今回の名場面・名台詞

伊角さんがプロ試験でヒカルと対局した際に一度指から離れた石を打ち直したシーンについて

ヒカルの碁の作中には数多くの対局が描かれていますが、最も印象に残るミスをしたシーンといえば伊角さんが対局相手であるヒカルを気にするあまり自分の意思に反した手を打ってしまい、慌てて打ち直したが指が碁石から離れてしまっていたので反則となってしまったシーンなのではないでしょうか?

そして、このシーンから学ぶことは大きく二つあるのではないかと思います。

それは

  1. たった一つのミスで形勢は入れ替わるということ
  2. 集中力を欠いている状態では考えられないようなミスが起こり得るということ

の二つです。

一つ目はある程度囲碁の経験を積んだ人であれば実感していることかと思いますが、囲碁というゲームには良い手はあっても勝因となる手は多くの場合存在しません。いわゆる良さそうな手を打っても、それを後に繋げられるか否かは純粋な実力でしかないからです。

しかし、勝因となる手は無くても敗因となる手は山ほど存在します。後に繋げられなかった良さそうな手などは多くの場合はやりすぎてしまった敗因の手であると言えますね。

より多くの、そしてより大きなミスをした方が負けるゲームこそが囲碁であると聞いたことがありますが、それはまさにその通りであることを何局も対局を重ねてきた人であれば実感できるところだと思います。

勝っているのにやりすぎて逆転負けしてしまったり、もうダメだと諦めていたところに相手のミスがあって逆転勝ちしたり、そんなことは日常茶飯事ですよね。

トッププロの対局ですら最後の最後のミスが勝敗に直結することは珍しくありません。

そういうわけで囲碁には明確な勝因となる手はほぼ存在しえないわけなのですが、その証拠に一流の打ち手であればあるほど自らの勝利を「運が良かった」と称しますよね。

例えば、近年のNHK囲碁トーナメントでは「今日の一手」という勝者側の解説が最後にありますが、日本囲碁界の第一人者である井山先生は必ずといって良いほど自らの勝因を述べることはなく、反省点を述べています。これこそ囲碁というゲームの本質がミスを排するところにあることを示しています。

そして、そんなミスが起こり得るのは何かしら集中力を欠いている時であることが多いです。

勝ちを意識した時なんかが集中力を欠きやすい代表的なポイントでしょうけど、今回の伊角さんの場合は盤面以上に対局相手を意識しすぎたところで集中力が逸れたという感じでしょうか。

いずれにしても、どんなに強くなっても一瞬の集中力の途切れが大逆転負けに繋がるようなことは珍しくありません。というか、こういう集中力の途切れは勝っている側に起きることが多いような気がするのですが、それもまた興味深いポイントだと思います。

これは勝っている時こそ気を緩めてはいけないという教訓にもなっているのではないかと思います。

ちなみに、集中力を欠いてアテ間違えたというエピソードについてどのように感じましたか?

そんな自分の意思に反して間違えるようなミスはあり得ない。そんな風に感じた人も多いのではないかと思います。というか、僕自身もこのエピソードは教訓ではあってもそうそう起こり得るようなことでは無いと思っていました。

しかし、つい最近ネット対局中に自分の意思に反した手を打ってしまい大逆転負けするという経験をしてしまい、それでこの伊角さんのエピソードを思い出した次第でした。

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参考までに紹介するとこの終局図。幽玄の間の4段戦で、黒番の僕の中押し負けとなります。右辺の白石を仕留めていた種石4子を取られてしまっては地も足りませんし中央の黒の一団も弱くて攻められそうなので投了も止む無しですね。

しかし、149手目でノビた手でタケフ(149手目の右上。上図の赤丸部分)にしておけば何事もないどころか黒は負けようのない展開でした。

なら打っている時に気付いていなかったかといえば、実はこの局面は数手前に想定していた通りの図で、その時にはタケフに打つことを想定していました。しかし、ほぼ白の投了待ちの形勢だったところで深く考えずに手拍子でサラサラ打っていた時についノビてしまって打った瞬間に「あっ!」と気付いたわけです。

ネットなので伊角さんのようにそっとタケフに打ち直すこともできません。(笑)

集中力を欠いていると伊角さんのような間違いが発生することもあるのだという実体験でした。

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単にキャラクターの知名度を借りただけのような書籍ではなく、この3冊で基礎の基礎から相当に実践的なところまでをキッチリ楽しく学べる良書で、真面目に学べば有段者になるまでの知識が詰まった内容になっていると思います。